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On the Production
by 井口健二
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■宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち 第二章「発進篇」、君はひとりじゃない
でコンペティション部門以外の作品紹介を割愛した。でもそ
の時にも気になった作品の1本で、その作品の日本公開が決
まったので改めて試写を観に行った。
内容は拒食症の少女とその父親を巡るもの。検察官でもある
父親と娘との関係はあまり芳しくない。その原因は妻であり
母親の不慮の死にあるようだ。そんな2人の関係が、1人の
女性の働きでスピリチュアルな世界に迷い込んでしまう。
その女性は娘のセラピストだったが、死者との交信ができる
と称して父親にも近づいてくるのだ。そして降霊の儀式のよ
うなものが始まるが…。
脚本と監督は、今、最も輝いているポーランド人監督とされ
るマウゴジャタ・シュモフスカ。2013年の“W imie...”と
いう作品でも多くの受賞歴のある女性監督だ。
出演は、父親役に1994年『トリコロール 白の愛』などのヤ
ヌシュ・ガヨス、娘役に新人のユスティナ・スワラ、そして
セラピスト役に2009年『カティンの森』などのマヤ・オスタ
シェフスカ。
実は結末が微妙で、映画祭で観た時には評価を出しかねた。
しかし今回観直すことで納得ができた。それは愛情に溢れた
父親と娘の物語であり、スピリチュアルなテーマとしても巧
みに描かれているものだ。
この種の作品では、降霊師を本物と取るか否かが作品の評価
として微妙になるものだが、その点でもこの作品は様々なエ
ピソードを織り込むことで巧みに描いている。そして物語で
は、特に女性監督の目が見事なドラマを生み出している。
この作品が、2015年のベルリン国際映画祭で監督賞となる銀
熊賞を受賞したのも納得のできるものだった。
公開は7月22日より、東京はYEBISU GARDEN CINEMA、シネマ
ート新宿他で、全国順次ロードショウとなる。

この週は他に
『兄に愛されすぎて困ってます』
(前回題名紹介『トリガール!』に続けて土屋太鳳主演によ
る若年向けドラマ。前回の土屋は大学の新入生だったが、本
作では高校の1年生かな。前作と同様学バスでの通学風景か
ら始まり、その横を自転車に乗った若者が追い抜いて行く。
ただし今回の若者は彼女の兄で、その兄との微妙な関係が描
かれて行く。ただこのテーマは多少難しいところがあるもの
だが、原作は人気漫画だそうで、何となく若者の願望充足の
ような感じでそれなりの解決策は示している。共演はEXILの
片寄涼太、千葉雄大。他に大野いと、YOUらが脇を固めて
いる。監督は『チア☆ダン』などの河合勇人。なお土屋は前
作に続いて自転車で疾走するシーンがあり、それもデジャヴ
だった。公開は6月30日より、全国ロードショウとなる。)
『甘き人生』“Fai bei sogni”
(2013年9月紹介『眠れる美女』などのマルコ・ベロッキオ
監督による2016年の作品。1969年のトリノ、それに1990年代
のローマとサラエヴォを背景として青年の心の迷いが描かれ
る。1990年代のサラエヴォは紛争の渦中であり、若者はそこ
で運命的な出会いをする。出演は2017年1月紹介『おとなの
事情』などのヴァレリオ・マスタンドレアと、2016年9月紹
介『シークレット・オブ・モンスター』などのベレニス・ベ
ジョ。それに2005年7月紹介『真夜中のピアニスト』などの
フランス人女優エマニュエル・ドゥヴォス。2つの時代と悲
惨な戦争。様々な要素が母親の死という究極の出来事を軸に
見事に語られて行く。公開は7月15日より、東京は渋谷ユー
ロスペース他で全国順次ロードショウ。)
『ハロー・グッバイ』
(高校のクラスで徒党を組む中の1人と、クラスメートとは
距離を置いている優等生。そんな2人が認知症の老婆が口ず
さむメロディを介して話をするようになる。しかし2人には
それぞれ他の友達には話せない秘密があった。そんな青春の
中であるかもしれない物語が展開される。出演は2017年2月
5日題名紹介『ブルーハーツが聴こえる』などの萩原みのり
と、2016年8月14日題名紹介『疾風ロンド』などの久保田沙
友。それにもたいまさこ。他に木野花、渡辺眞起子、演奏家
の渡辺シュンスケらが脇を固めている。脚本はアニメ版『ち

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05月28日(日)
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