ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459775hit]

■ローマ法王になる日まで、ハイヒール こだわりが生んだおとぎ話、怪物はささやく
主演は、2016年3月紹介『テラフォーマーズ』などの菊地凛
子。その脇を2016年『青空エール』などの小島藤子、NHK
ドラマ『精霊の守り人』などの玄理、モデルの谷口蘭らが固
めている。
脚本と監督は韓国出身のイ・インチョルが手掛けている。
また菊地の衣装を企画に賛同したシャネルのパリ本店が提供
している他、劇中に登場するハイヒールはファッションブラ
ンドMIHARA YASUHIROの提供によるものだそうだ。
さらにオープニングのアニメーションはMr.ChildrenのPV
などを手掛ける半崎信朗、音楽をキム・ギドク作品などのノ
・ヒョンウ、造形を『テルマエ・ロマエ』などの百武朋が担
当している。
ショートショートというのは星新一氏のお蔭でSFの一分野
のようになっているものだが、星氏の作品の多くがそうであ
るようにちょっと洒落た落ちのある作品のイメージもあるよ
うに思える。
その点で言うと本作は、お洒落なファッションが数多く登場
するものではあるが、落ちの部分にはSF的には意外性が少
ない。当然本作は遠未来が舞台のSFと認識して書くが、そ
の観点でこの落ちは、SF的には物足りないものだ。
そもそも本作にこのような落ちを付ける必要があったのか、
そんなセオリー?は無視して、もっとこの監督が思いついた
未来を概観するような作品を観たかったような感じもする。
アイデアは良いと思うし、次回作に期待したいものだ。
公開6月24日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷他
で全国ロードショウとなる。なお入場料は前売りの特別鑑賞
券が600円、当日は800円だそうだ。

『怪物はささやく』“A Monster Calls”
イギリス図書館協会から年次で贈られ、児童文学界の権威の
一つとされるカーネギー賞を2012年に受賞したパトリック・
ネス原作の映画化。
因に原作は、同じくカーネギー賞受賞者で2007年に死去した
シヴォーン・ダウドの残したメモに基づきネスが完成させた
ものとされ、映画化ではネス自ら脚色も担当している。
主人公はイギリスの寒村で母親と2人暮らしの少年。その母
親が病に伏し、少年は落ち着かない日々を送っている。父親
は出奔したまま家には滅多に現れず、時々口煩い祖母が顔を
出してくる。
そんな少年は毎夜悪夢を見るようになり、その夢には怪物が
登場して少年に1つずつ3つの物語を聞かせるという。そし
て3つが終ったら4つ目は少年が自分の物語を語る番だとい
う。
こうして語られた3つの物語は、それぞれ驚きの結末を迎え
るものだったが…。
主演は、2015年10月紹介『PAN〜ネバーランド、夢の始ま
り』に主人公の親友役で出ていたというルイス・マクドゥー
ガル。
他に、シガニー・ウィーヴァー、『SWローグ・ワン』など
のフェリシティ・ジョーンズ、2017年2月紹介『キングコン
グ髑髏島の巨神』などのトビー・ケベル。そして怪物の声を
リーアム・ニースンが担当している。
監督は、2008年9月紹介『永遠のこどもたち』や2013年3月
紹介『インポッシブル』のファン・アントニオ・バヨナ。ま
たプロデューサー以下、その他のスタッフのほとんどは長年
のチームのようだ。
とにかく恐ろしくもあり、優しくもありの怪物の造形が素晴
らしい。そしてそれからニースンの声が温かく主人公を包み
込むように物語を聞かせてくれる。それはダークなファンタ
シーではあるが見事な世界が構築された作品だ。
その物語が閉ざされていた少年の心を巧みに解き放ってくれ
る。そんな素敵な物語が展開される。オリジナルのメモは作
者が死を意識しながら綴ったものと思われるが、その中から
残される者への限りない愛情が感じられる作品だ。
ただ映画では、2度ほど登場する写真にちょっと考えられな
いものが写っていて、それがそうだとすると物語の印象が少
し変わってしまう。単に筆が滑ったのか、それともそういう
意図なのか、その辺は検証したくなる部分ではあった。
公開は6月9日より、全国ロードショウとなる。

この週は他に
『イイネ!イイネ!イイネ!』

[5]続きを読む

04月23日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る