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On the Production
by 井口健二
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■ハロルドとリリアン、スプリット、リトル京太の冒険
えば「誘拐された3人vs誘拐した23人格」というお話が始
まる。
一方、その男は女性の精神科医に掛っており、その女医は多
重人格の研究をしているようだ。しかもその研究では、人格
ごとにアレルギーなども異なる場合があるというのだが…。
その女医は男の態度に不審なものを感じ始める。折しもテレ
ビでは3人の女子高生の行方不明が報じられていた。
最初は単純な拉致物のように始まり、徐々にその内容が変化
して行く。それは多重人格物ということになるが。そこから
一筋縄で行かないのがシャマランの真骨頂だ。実際に物語は
喋っちゃいけない結末で、とんでもない展開を迎えることに
なるのだ。
と言ってもそれがどれだけの観客に理解されるか、かなり心
配。そんなレヴェルの仕掛けの施された作品になっている。
主演は、2013年9月紹介『フィルス』などのジェームズ・マ
カヴォイ。共演にトニー賞にも輝いたブロードウェイ女優で
シャマラン監督の2008年作『ハプニング』にも出演のベティ
・バックリー。
さらにアメリカ芸能誌で「次世代スター」にも選ばれたアニ
ヤ・テイラー=ジョイ、2016年『スウィート17モンスター』
などのヘイリー・ルー・リチャードスン、テレビ出演歴の長
いジェシカ・スーラらが女子高生役を演じている。
そしてもう1人、最期にとんでもないスペシャルゲストが登
場する。それは物語を根底からひっくり返すもので、その結
末は喋っちゃいけないものだが、果たして日本の観客でこれ
が即座に判る人がどれだけいることか。
勿論その伏線は先に敷かれているし、この結末でそれが納得
できるものにもなっているのだが…。いやはやこれで続きが
作られることになるのかな?
公開は5月12日より、全国ロードショウとなる。

『リトル京太の冒険』
東日本大震災を背景とした児童映画の範疇に入ると思われる
作品。
物語の主人公は群馬県桐生市に暮らす12歳の少年・京太。あ
の日の記憶から逃れられない彼はいつも蛍光色の防災頭巾を
被っている。そんな京太は、男性の外国人英語教師と片言の
英語で会話をするのが好きだった。
その先生は震災後に一旦は母国に帰ったが、1年後に再び学
校に来てくれたのだ。そんな先生の許に新たに女性の外国人
がやって来る。そこでその女性にも町を気に入って貰いたい
と活動を開始する京太だったが…。
出演は、京太役にテレビ『まれ』などの土屋楓、その母親役
に2010年3月紹介『瞬』などの清水美沙。他に、スコットラ
ンド出身のアンドリュー・ドゥ、テレビ『花子とアン』など
の木村心結らが脇を固めている。
脚本と監督は、日本大学藝術学部とNYコロムビア大学大学
院卒業という大川五月。すでに短編映画で映画祭の受賞歴な
ども持つ女性監督の長編デビュー作となる。
2017年2月5日に題名紹介したオムニバス『ブルーハーツが
聴こえる』でも李相日監督が被災した子供の問題を扱ってい
たが、首相談話も行われなくなったこの時期に映画人が相次
いでこのテーマを取り上げたことは嬉しく思う。
特に福島問題があるから、原発推進の首相は口を噤みたいの
だろうが、放射能汚染の問題はまだまだ終った訳ではなく、
特に子供の心には大きな傷跡が残ったままだ。その問題を真
摯に描いてくれたことに感謝をしたい。
この点に関しては日本映画人の心意気を感じたものだ。
ただし、一般の人の中で震災の記憶が薄れつつあることは事
実であって、その点を踏まえると本作では僕には少し残念に
思えるところがあった。それは外国人男性教師に関して、そ
の去就の事情が明確になっていない。
それは、恐らく母国政府からの勧告で一時帰国せざるを得な
かった先生が1年後に戻ってきてくれた。そのことが主人公
にとって大きな心の支えだったと思うのだが。その点を本作
ではもっと明瞭に描いて欲しかった。
ここで実は、本作には先に2012年『京太の放課後』と2014年
『京太のおつかい』という2本の短編が製作されていたよう
なのだが、上記の点はもしかしたらその短編で描かれていた

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03月12日(日)
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