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On the Production
by 井口健二
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■虐殺器官、パッセンジャー
7月紹介『プロメテウス』などのジョン・スペイツ。彼は、
2012年10月紹介『ダーケストアワー・消滅』や、2016年12月
紹介『ドクター・ストレンジ』の共同脚本にも参加している
SF映画の専門家だ。
さらに共演者には、2009年1月紹介『フロスト×ニクソン』
などのマイクル・シーンや、『マトリックス』3部作などの
ローレンス・フィッシュバーンらが登場してドラマに様々な
味付けもしている。
そして映画は、アカデミー賞で美術部門にノミネートされた
プロダクションデザインとセットデコレーションに彩られて
いるものだ。
恒星間飛行で生じる時間経過を絡めたラヴストーリーとして
は、小説ではアーサー・C・クラークの短編「遙かなる地球
の歌」が思い浮かぶが、映画でこのテーマを描いたのは初め
てかもしれない。
そんなSF映画では珍しいラヴストーリーが、ジェニファー
・ローレンスとクリス・プラットによって演じられて行く。
それはSFでしか味わうことのできない特別なもの。これこ
そが本作の醍醐味とも言える。
という作品だが、実はSFファン的にはかなり問題を抱えて
いる。
それは例えば人工重力の問題で、映画の中では突然そのシス
テムがダウンするという描写があり、そこではジェニファー
・ローレンスが地上では起きないトラブルに巻き込まれるの
だが…。実はこの描写がありえない。
元々水の振る舞いがこの様にはならない点はさておき、シス
テムダウンするような重力装置があるのなら、宇宙船が回転
している理由がないのだ。でもまあ映像的にはそれを見せた
かったのだろう。それでこの点は目を瞑ることにしたい。
しかしさらに大きな問題は、宇宙空間に出た主人公の流した
涙が頬を伝う点だ。これは1977年公開『カプリコン・1』で
も指摘されていたもので、それを気付かなかったとは言って
欲しくない。
しかしこの点はある種の確信犯かな? 判っているけど敢え
てやっているのなら、それはSF映画への愛情として、これ
も目を瞑ることにしよう。
公開は3月24日より、3Dでの全国ロードショウとなる。

この週は他に
『マイ ビューティフル ガーデン』
             “This Beautiful Fantastic”
(テレビの『ダウントン・アビー』でブレイクしたジェシカ
・ブラウン・フィンドレイの主演で、CM出身のサイモン・
アバウドが監督したヒューマンドラマ。生後間もなく公園に
捨てられ、自然に対してトラウマ的恐怖心を持ち、何にでも
秩序を求めるちょっと風変わりな性格に育った女性が、引っ
越した家の隣人や周囲の人たちの影響で徐々に変わって行く
姿が描かれる。共演にトム・ウィルキンスン、アンドリュー
・スコット、ジェレミー・アーヴィング。小さな庭付きの戸
建てに住む自分としては、彼女の家の庭の様子が興味深く楽
しめたし、何よりそれを囲む人々の温かい心地良さが素晴ら
しい作品だった。公開は4月、東京はシネスイッチ銀座他で
全国順次ロードショウ。)
『トリプルX:再起動』“xXx: Return of Xander Cage”
(2002年9月紹介『トリプルX』の続き。実はシリーズでは
2005年に“XXX: State of the Union”という作品が作られ
たが日本では劇場公開もされなかった。その作品も踏まえて
本作は作られているが、物語には直接的な関係はない。とは
言うものの、組織のリーダーが新たなスポーツの天才をリク
ルートしているところから始まるのは、思想的にはその流れ
からの派生かな。ここでのゲスト出演者も見ものだ。その現
場が襲われるところから物語が始まる。後はアクションに継
ぐアクションで、世界の敵との戦いが描かれるものだ。ただ
第1作で主人公は全くの一匹狼だったが、今回チームプレイ
なのは少し気になった。でも人気ヒーローのカムバックは嬉
しいものだ。公開は2月24日より全国ロードショウ。)
『暗黒女子』
(2016年6月紹介『MARS』などの耶雲哉治監督で、イヤ
ミスと呼ばれる後味の悪さが売り物の原作小説の映画化。お

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02月05日(日)
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