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On the Production
by 井口健二
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■おとなの事情、標的の島 風かたか
それは沖縄の生の声であり、沖縄の民衆の声を内地に向って
発しているものだ。
恐らく内地の人間はここに描かれていることの10分の1も認
識はしていないだろう。僕自身が『標的の村』を観た時に、
ある程度の想像はしていたものの、それが現実からほど遠い
ものであったことを思い知らされた。
実際に最近、「沖縄の基地反対運動は本土から行った過激派
が何も知らない沖縄の人々を扇動しているもの」というマス
コミの論調を見たが、ここに描かれる現実は彼らも知った上
で、わざと目を瞑っているのだろう。
そこまで日本のマスコミは体制に寄り添うように堕落してし
まった。そんな恐ろしさも感じてしまう。僕自身が何もでき
ていない身では何も言えないが、この歯がゆさには身もだえ
してしまうような気分にさせられた。
沖縄の軍事要塞化は沖縄県民のためではなく、日本国家のた
めでもなく、ただ単にアメリカ合衆国の防衛のためのもの。
その事実を、この作品を日本の全国民が観て認識してもらい
たい。そんな気持ちになる作品だ。
公開は3月25日より、東京はポレポレ東中野他にて、全国順
次ロードショウとなる。
この週は他に
『コスメティックウォーズ』
(大政絢の主演に、奥菜恵、高岡早紀の共演という布陣で、
化粧品の新製品を巡る産業スパイを描いた作品。BS-TBSの製
作で、以前はもっと若手女優を使った学芸会のような作品が
多かったが、この顔触れだとそれなりの作品になってきてい
る。とは言え物語のつくりは軽いかな。それに舞台が実在の
会社ではその会社を悪者に出来るはずもなく、その辺で大体
ストーリーが読めてしまうのは痛し痒しだ。でもまあ、大政
のファンには嬉しい作品ではあるのだろうし、それはそれで
製作者サイドの当初の目的は果たされているのだろう。監督
は2015年『東京PRウーマン』などの鈴木浩介。脚本はベテ
ランの清水有生が担当している。公開は3月11日より、東京
は丸の内TOEI2他で全国ロードショウ。)
『まんが島』
(2011年10月30日付「東京国際映画祭」で紹介『キツツキと
雨』の脚本を沖田監督と共に手掛けた守屋文雄が満を持して
放つ初監督作品。「マンガ家以外立ち入り禁止」と書かれた
札の立つ島を舞台に、トキワ荘を思わせるマンガ家の集団が
サヴァイヴァルを繰り広げる、かなりアヴァンギャルドな映
像もあり、上記の映画祭の報告ではゾンビへの言及に興味を
持ったが、それはどうやら守屋の影響だったようだ。そんな
一種のサブカル的な趣で作られた作品でもある。ただ監督の
思い入れが強烈すぎて、観ていて多少引いてしまうところも
ある。でもまあそれが監督の狙いでもあるのだろうし、横か
らとやかく言うものでもない。公開は3月25日より、東京は
K's cinema他で全国順次ロードショウ。)
『午後8時の訪問者』“La fille inconnue”
(カンヌ国際映画祭に7作品連続コンペティション出品、内
2度のパルムドールに輝くジャン=ピエール&リュック・ダ
ルデンス兄弟監督の最新作。午後8時、時間外の診療所の扉
を少女が叩く。しかし中にいた女医はそれを無視。そしてそ
の少女が遺体で発見され、良心の呵責に女医は彼女の素性を
調べ始めるが…。主演は2016年11月04日「東京国際映画祭」
で紹介『ブルーム・オヴ・イエスタディ』などのアデル・エ
デル。実に巧みに描かれた人間ドラマで、社会情勢の反映か
ら主人公の心理状態まで、描かれるものの全てが綿密に計算
され、ドラマが見事に構築されている。正に映画の醍醐味と
言える作品だ。公開は4月8日より、東京はヒューマントラ
ストシネマ有楽町他で全国ロードショウ。)
『僕とカミンスキーの旅』“Ich und Kaminski”
(2003年『グッバイ、レーニン』で世界的に評価されたヴォ
ルフガング・ベッカー監督が、同作に主演したダニエル・ブ
リュールと再びタッグを組んだ12年ぶりの長編作品。1960年
代ポップカルチャーの一翼を担ったものの、姿を消した伝説
の盲目画家を巡って、画家の伝記を執筆して儲けを企む自称
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01月29日(日)
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