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On the Production
by 井口健二
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■ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅、きょうのキラ君、ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男
なのか、脚本の巧みさなのか、観ていていろいろと考えると
ころがあった。
物語は、いじめにあうどころか同級生からはほぼ無視され、
それが自分と割り切っているような女子が主人公。ところが
クラスメイトにいじめに遭いそうになっているところを同級
のイケメン男子に救われ、その後を追いかけ始める。そして
彼も振り向いてくれて…。
というのは如何にもこの手のお話にはありそうな展開なのだ
が、校舎の屋上で追いついた彼女が捨て台詞のように放った
言葉から物語は予想外の展開になって行く。それはポスター
にも記された「365日」という言葉の意味に絡めて、極めて
巧みに構築されていたものだ。
ここからは完璧なネタバレになってしまうかもしれないが、
映画の中で3回使われる「365日」という言葉が、彼女が発
する1回目と2回目では微妙に意味が異なり、3回目に彼が
発する時には最初の意味になる。これが2時間足らずで展開
される映画ならではの趣になっている。
しかもこの意味の違いが、特に彼女が発する2回では当初は
観客には違って聞こえるのだが、実は彼女自身は同じ意味で
使っていたことが映画の進行と共に判ってくる。その展開の
巧みさには、これは侮れない作品だと思えてきた。これは映
画ならではの醍醐味だ。
通常物語の展開の中で、登場人物は知っているが観客には知
らされていないというやり方は、観客には馬鹿にされたとい
う印象が残るし、難しいものと考えるが。本作においてはそ
れが切なさになり、正しく「胸キュン」になるのは、見事と
しか言いようのない作品だった。
さらに結末に向かっての彼の心境の変化に関しては、成る程
これなら納得できると思わせるものになっており、この辺は
原作の通りなのだろうが、ご都合主義ではないあり得る話と
して観ることができた。
出演は、ティーンズモデル出身で2014〜15年『獣電戦隊キョ
ウリュウウジャー』の飯豊まりえと、今年5月15日題名紹介
『全員、片想い』などの中川大志。因に映画は中川のかっこ
良さを描く作品でもあるようだ。
他に、今年8月21日題名紹介『アズミ・ハルコは行方不明』
などの葉山奨之と、2013年12月紹介『ゲームセンターCX』
などの平祐奈。さらに岡田浩暉、三浦理恵子、安田顕らが脇
を固めている。
脚本は、2015年4月紹介『サムライ・ロック』などの中川千
英子に、テレビ版『近キョリ恋愛』を手掛けた松田裕子が協
力。監督は、2012年7月紹介『ひみつのアッコちゃん』など
の川村泰祐が担当した。
まあ、大の大人の男性が映画館に観に行くには多少気恥しい
作品ではあるが、作品としては優秀なものだと推奨できる。
公開は2月25日より、全国ロードショウとなる。

『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』
               “Free State of Jones”
主演のテキサス州出身マシュー・マコノヒーも知らなかった
というアメリカ合衆国の歴史の影に隠れた英雄の物語。
物語の舞台はアメリカ南部のミシシッピー州。時代は19世紀
の後半。南北戦争の末期から北軍の勝利と、その後の10年間
ほどの時代が描かれる。
主人公のナイトは南軍の歩兵として闘いに参加していた。し
かし貧農は幼い少年まで召集される現実の不平等さに想いを
打ち砕かれて脱走。自らの農場に戻った彼を待ち受けていた
のは、脱走兵は見つかれば死刑という現実だった。
そんな時、彼の息子が高熱を出し、医者を呼べない彼の許に
駆けつけたのは、近くの農場で奴隷として暮らす黒人女性の
治療師だった。そして自警団に発見された彼は、女性の手引
きで沼地の奥で暮らす逃亡奴隷の集団に導かれる。
やがて彼らの許には脱走兵や逃亡奴隷が集まりだし、沼地の
奥では手狭になった彼らは、遂に圧倒的な兵力を持つ南軍に
反旗を翻す。それは北軍の支援も得られないままの地の利や
様々な条件を利用した知略に満ちた作戦だった。
製作・脚本・監督は2012年7月紹介『ハンガーゲーム』など
のゲイリー・ロス。ロスは10年の歳月を掛けて本作の映画化

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11月27日(日)
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