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On the Production
by 井口健二
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■淵に立つ、世界一キライなあなたに、バニラボーイ トゥモロー・イズ・アナザー・デイ
小説から原作者のジョジョ・モイーズ自身が脚色。監督は、
舞台演出家として著名で本作が映画デビューとなるシーア・
シェアイックが担当した。
映画の結末は僕が最も嫌うテーマのもので、実はこの前にも
同旨のドイツ映画があったが僕は紹介を回避したものだ。し
かし本作では、これはもう仕方がないかな、と思わざるを得
ないものだった。
もちろんドイツの作品でも、肉体の状況は本人以外には理解
のしようがないが、本作ではその点の説得力がドイツの作品
より勝っていたのかもしれない。それに具体的なシーンを描
いていないのも良かったのかもしれない。
さらに本作では、そこに至るまでの描き方が巧みなもので、
特に主人公の女性の健気さが心を打つ。そしてそれに対する
男性の態度も立派で、それは慈愛に満ちた素晴らしい時間が
描かれる。
作り物のお話ということを踏まえた上でも、近年の同種の作
品の中では上位に入る作品だ。
公開は10月より、全国ロードショウとなる。

『バニラボーイ トゥモロー・イズ・アナザー・デイ』
ジャニーズJr.内ユニットSixTONESのジェシー、松村北斗、
田中樹が主演するSF的要素もある青春ドラマ。
主人公は1999年7月生まれの高校生1年生。傍にはそれぞれ
が学力優秀と運動能力抜群の2人の友達がいて、自分自身は
何の能力もないと思っている。ところが、実は彼は「ノスト
ラダムスの大予言」の申し子で、彼の身に降り掛った災難は
数倍化して日本国民に降り掛るのだ。
このため日本政府は密かに彼の身を守ると共に、彼に対する
事象の影響を予測するプログラムも開発していた。こうして
彼には、道で転んでも怪我が生じないようにする特別な体制
が採られていた。そして日々そのような事態が起こらないよ
うに監視もされていたのだが…。
そんな彼の前に1人の女子転校生が現れたことから事態が急
変し始める。
共演は、2014年『空と海のあいだ』などの竹富聖花、2010年
9月紹介『大奥』などの小西成弥、2011年3月紹介『奇跡』
などの前田航基。他に要潤、ブラザートム、西村和彦、船越
英一郎らが脇を固めている。
脚本は、舞台演出家でヴァラエティの構成作家なども務める
保木本真也、監督はテレビ『アンフェア』などの根本和政。
脚本家、監督共に劇場用の映画作品は初めてなのかな?
普通に生活してきた主人公が実は重要人物で…、という作品
は今までに何本観てきているのかな? そんな1本と言える
作品だが、作品の乗りは如何にもテレビのヴァラエティ番組
で、主人公の演技もそれに準じている。
とは言えジャニーズ系の作品なら、それで充分観客は呼べる
という計算なのだろうし、そういうファンを喜ばせるような
仕掛けは随所にちりばめられている。そういう目で観れば、
別段問題にするような作品ではない。
ただ結末の持って行き方は、設定は逆の方が面白かったので
はないのかな。結果的には同じ展開になるにしても、逆の方
が話も判り易かったと思うのだが、今のままだと何か主人公
の格好良さが出てない感じだが、それもファンサーヴィスな
のかな? そこまでの計算は僕には判らなかった。
公開は9月3日より、東京はTOHOシネマズ新宿ほかで、全国
ロードショウとなる。

この週は他に
『Yesterday』“Beatles”
(2016年6月19日付で題名紹介の『シング・ストリート』と
似た1960年代の北欧が舞台の青春ドラマ。ビートルズに憧れ
る少年たちが、夢を目指して悪戦苦闘する。6月の作品ほど
洗練されてはいないが、その分、若い人には共感が大きいか
な。でも未成年の飲酒や喫煙はお国柄なのだろう。)
『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』“Genius”
(F・スコット・フィッツジェラルド、アーネスト・ヘミン
グウェイ、トマス・ウルフらの才能を見出し、彼らを育て上
げた編集者の実話に基づく物語。その業績をコリン・ファー
ス、ジュード・ロウ、ガイ・ピアース、ニコール・キッドマ
ンらの共演で描く。作家との交流の様子が素晴らしい。)

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07月24日(日)
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