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On the Production
by 井口健二
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■中国現代映画特集2016(3Dシネマ 京劇〜覇王別姫〜、河、少年バビロン、心迷宮)
出演は、本作で上海国際映画祭アジア新人賞最優秀女優賞を
獲得したヤンチェン・ラモと同賞男優賞にノミネートされた
ルンゼン・ドルマ。監督は、カメラマン出身のソンタルジャ
(松太加)のデビュー作となっている。

『少年バビロン』“少年巴比伦”
昨年の第28回東京国際映画祭アジアの未来部門にも出品され
た1990年前後の近過去を回想する青春映画。
近代化が進む一方で、過去の因習も根深い工業地帯の大工場
を舞台に、工業高校は出たものの実作業は何もできない若者
と、彼が憧れの目で見つめる工場の医務室に勤める女性の姿
が描かれる。
国家の体制は異なっても若者の思いや悩みは同じなのかなあ
という作品だが、観ている自分も年を経てしまうと、これが
青春と言われても何とも言えない気分で、甘酸っぱいという
感じでもなくなってしまった。
出演はトン・ツージエン(董子健)、リー・モン(李夢)。
監督は、こちらもカメラマン出身で、北京電影学院撮影学科
で講師を務めるシアン・グオチアン(相国強)のデビュー作
となっている。

『心迷宮』“心迷宮”
最初の作品と共に日本には今回初紹介となった作品。
父親の支配から抜け出そうとあがく青年。夫のDVに苦しむ
主婦。老後のための準備を怠らない村長。そんな3人を主人
公に、青年の引き起こした事件を切っ掛けに彼らの生活が混
乱して行く。
という内容説明にちょっと暗めのポスター・ヴィジュアル。
それにこのタイトルではかなり重い心理ドラマを予想した。
しかも映画が始まると、物語の時間軸や視点が次々に切り替
わるという一筋縄ではいかない展開だ。それは覚悟を決めて
映画を観始めた。
ところが観ている内にいろいろな細工が実に見事に嵌り始め
る。しかも全体的には物語の流れが心地良いというか、気分
の良い作品になって行く。特に後半では嫌みのないユーモア
も散りばめられ、見事なエンターテインメントなのだ。
発端には死人も出てそれはそれなりの作品ではあるのだが、
映画全体に流れる温かみのようなものが鑑賞後にも良い気分
を残してくれて、これは気持ちの良い作品だった。
但し、上手く嵌り込む分、本当にそうだったのかという疑念
は湧いてしまうもので、出来ればもう一度観て確認したくも
なる作品だが、その辺は監督の術中に嵌ってしまっているの
かもしれない。この監督はその辺も周到にできそうだ。
出演は、フオ・ウェイミン(霍衛民)、ワン・シャオティエ
ン(王笑天)。監督は中国インディペンデント映画界の雄と
されるシン・ユークン監督の長編初監督作品となっている。

『河』と『少年バビロン』は昨年の東京国際映画祭で上映さ
れた作品だが、残りの2本は今年の映画祭で上映されるのか
な。出来ればどちらも再見したい作品だ。特に『3Dシネマ
京劇〜覇王別姫〜』は、是非ともドルビーATMOSでの上映を
期待したい。これが実現したら、日本の3D状況も変わると
思うのだが。

この週は他に
『ロスト・バケーション』“The Shallows”
(2005年9月紹介『旅するジーンズと16歳の夏』に出演後
『ゴシップガール』でブレイクしたブレイク・ライヴリーが
主演する人食いザメとの対決を描く作品。『ジョーズ』から
40周年? 小品の割にはいろいろ工夫が凝らされているが、
時間経過のサスペンスをもう少し描いて欲しかった。)
『健さん』
(一昨年亡くなった高倉健の業績を追うドキュメンタリー。
中ではマーティン・スコセッシなど海外での評価もいろいろ
語られるが、ポール・シュレイダーが語る実現しなかった企
画の話や、ジョン・ウーの演出の話は興味を惹かれた。)
『ライト/オフ』“Light Out”
(明かりが消えると襲ってくる殺人鬼との対決を描くホラー
映画。殺人鬼の来歴みたいなものがいろいろあって面白い。
ただ、その設定が充分に生かし切れているか否かで、少しあ
やふやな感じがした。再見して確認すべきか?)
『ONE PIECE FILM GOLD』
(原作コミックスが絶大な人気を誇る作品の、原作者自身が

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07月10日(日)
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