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On the Production
by 井口健二
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■コロニア、ハリウッドがひれ伏した銀行マン、死霊館 エンフィールド事件
支えた1人の銀行マンの姿を描いたドキュメンタリー。
オランダ人のフランズ・アフマンは、ロッテルダムに本拠を
置くスレーブブルグ銀行でエンターテインメント事業部を立
ち上げ、同時期に知己を得たプロデューサーのディノ・デ・
ラウレンティスと共に「プリセールス」という新たなビジネ
スモデルを構築する。
やがてデ・ラウレンティスとの契約を円満に満了したアウフ
マンは、そのモデルを使って新興の映画製作プロダクション
の支援を開始する。それは映画の企画書段階で世界中の配給
会社から資金を募るもので、これによりハリウッドに頼らな
い新感覚の映画が誕生するようになって行く。
それはまた独立系の配給会社がハリウッド並の映画の配給権
を獲得することができるようにもなった。なお作中では東宝
東和、GAGAの社名が挙げられていた。勿論東和はそれ以
前からヨーロッパ映画の配給は行っていたが、この後は『ダ
ンス…』などがラインナップに加わることになる。
そして1987年のアカデミー賞授賞式では、彼の関った『プラ
トーン』『眺めのいい部屋』“De Aanslag”が、作品賞、監
督賞、など8つのオスカーに輝くことになる。特にオリヴァ
・ストーンは謝辞の中で「フィリピンのジャングルまで金を
届けてくれた」と、彼に言及したものだ。
そんな痛快で、映画好きなら誰しもが憧れるような男の姿が
描かれる。
登場は、アウフマン本人を始め、ケヴィン・コスナー、製作
者のゴーラン&グローバス、アーノルド・コペルソン、マー
サ・デ・ラウレンティス、アンディ・ヴァイナ。
監督のオリヴァ・ストーン、ポール・ヴァーホーヴェン。さ
らに俳優のミッキー・ロークまで。錚々たる顔ぶれがインタ
ヴューに答えている。
監督は、アウフマンの愛娘のローゼマイン・アウフマンが制
作した。
ローゼマンは以前には監督の経験はないようだが、ガンで余
命を宣告された父親に、回想録を書きたかったと告白され、
その時間も残り少ないことから記録としてカメラを回し始め
たようだ。
そしてそこに多量のアーカイヴ映像やインタヴュー映像を挿
入して本作を仕上げている。それは今までは一部にしか知ら
れなかった近代アメリカ映画の裏面史を描いてもいる。
実際に僕は彼の名前を本作まで知らなかったが、実は作品の
後半に出てくるクレディ・リオネの件は、当時はニュースを
追いかけていた中で調べてもいたものだ。そこに関った人物
ということで少し構えたが、本作で彼の役割が判明し、そこ
はほっとして少し悔しくもなった。
正にアメリカ映画ファンが観るべき作品と言えるものだ。
公開は7月16日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
にてレイトショウとなる。
『死霊館 エンフィールド事件』“The Conjuring 2”
2013年9月紹介『死霊館』“The Conjuring”の続編。前作
同様ヴァチカン公認心霊現象研究家の夫と、霊視能力を持つ
妻のコンビが、今回はイギリスで起きた事件に挑む。
前作の事件は1971年に起きたもの。その後の1975年に起きた
アミティヴィル事件で夫妻の名声は高まり、テレビ出演など
も頻繁になる。しかし妻ロレインには自分の能力が負担とな
り、以後の調査依頼は断るように夫のエドに頼み込む。
ところが1977年、イギリスのテレビ局が心霊現象を撮影した
と報じられる。そして夫妻はテレビ局の要請を受け、ただ現
象の真偽を確認するだけ、という約束で英国エンフィールド
の住宅へと赴くのだが…。
それは心霊現象史上最悪とも言われる事件の始まりだった。
出演は、前作に引き続いてパトリック・ウィルソンとベラ・
ファーミガが夫妻を演じ、その脇を2003年12月紹介『タイム
ライン』などのフランシス・オコナー、2016年4月紹介『ト
ランボ』で娘の幼少期を演じていたマディソン・ウルフらが
固めている。
製作、脚本、監督は前作に続いてのジェームズ・ワン。また
脚本には、前作と同じくチャド&ケイリー・W・ヘイズ兄弟
と、2009年9月紹介『エスター』などのデイヴィッド・レス
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06月19日(日)
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