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On the Production
by 井口健二
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■スキャナー、すれ違いのダイアリーズ、追憶の森、SUNSET STRIP
画に出演し、2003年の『地球で最後のふたり』では浅野忠信
と共演したこともあるチューマーン・ブンヤサック。
監督は、2003年に大学時代の映画仲間たちと作った『フェー
ンチャンぼくの恋人』が大ヒットを記録し、タイの映画を変
えたとも言われるニティワット・タラトーン。タイ映画の今
を代表する監督の最新作だ。
水辺の建物と、異なる時間に生きる男女、そしてその2人を
繫ぐ日記帳。この流れには2006年7月にハリウッドリメイク
を紹介した『イルマーレ』を想起したが、本作は見事にファ
ンタシーではなく、ストレートなドラマが展開される。
しかしそれが時間の流れを巧みに交錯させて、これもある種
のファンタシーと言いたくなる作品に構築されていた。しか
もそこに思いもよらぬ事物が侵入してくる。その展開の見事
さは、久し振りに映画の醍醐味と言いたくなる作品だ。
それに背景となる大自然の素晴らしさ。さらに子供たちのい
たいけな姿。水上に建つ建物には2004年8月紹介『春夏秋冬
そして春』なども思い出すが、本作もまたそこでの素晴らし
いドラマが展開されていた。
公開は5月。東京はシネスイッチ銀座他で、全国順次ロード
ショウとなる。
『追憶の森』“The Sea of Trees”
2010年9月紹介『リミット』などのクリス・スパーリングの
脚本を、2011年10月紹介『永遠の僕たち』などのガス・ヴァ
ン・サント監督が、2014年11月紹介『インターステラー』な
どのマシュー・マコノヒーと、渡辺謙を主演に迎えて映画化
した人間ドラマ。
マコノヒーが演じるのは、手荷物も持たず日本にやってきた
アメリカ人の男性。何かを思い詰めたようなその男性は、そ
のまま富士山麓へと向かい青木ヶ原樹海に足を踏み入れる。
そう彼は自殺するためにこの場所にやってきたのだ。
そして自殺を思い止めさせようとする看板や、立ち入り禁止
の標識も無視して樹海の奥に歩を進めて行く。そこには樹か
らぶら下がったままの遺体や白骨化した遺体も散在し、正に
彼が求める「完全な死に場所」だった。
ところが彼が持参の薬を服用しようとした時、木々の間に日
本人の男性を発見する。そして道に迷ったというその男性に
何とか帰り道を教えようとする主人公だったが、樹海の奥深
くからは容易にその道を探すことができなかった。
こうして主人公は男性と共に樹海を彷徨うことになり、そこ
に様々な試練が襲い掛かる。さらにその間に、彼が死を思い
詰めるまでの経緯が描かれて行く。それは哀しくも美しい夫
婦愛の物語だった。
共演は、2012年9月紹介『ドリームハウス』などのナオミ・
ワッツ。物語は事実上この3人だけで進められて行く。
物語はクリス・スパーリングのオリジナルのものだが、題材
からは2005年4月紹介『樹の海』を思い出さずにはいられな
い。本作の原題も正にその通りのものだ。もちろん展開など
は異なるが、結論はある意味同じともとれる。
でもこの題材はこの結末でなければ困る訳で、この結末に至
るまでの物語の進め方が見どころと言える作品なのかもしれ
ない。その点で言えば本作の進め方は極めて納得できるもの
であった。
それにしても青木ヶ原樹海が全世界的にこれほど知れ渡って
いるとは…。因に当地での映画撮影は現在は禁止されている
はずで、そのため本作の撮影はアメリカのマサチューセッツ
で行われたようだ。
公開は4月29日より、東京はTOHOシネマズ新宿ほかで、全国
ロードショウとなる。
『SUNSET STRIPロックンロールの生誕地』“Sunset Strip”
僕の世代には、往年のテレビシリーズ『サンセット77』が
懐かしいロサンゼルスの一角を描いたドキュメンタリー。
STRIPは「脱衣が売りのショウではなくて、細い道のこと」
というのは本作の中でも解説されているから、アメリカ人に
もそんな誤解はあるのだろう。とは言うものの本作の中でも
ストリップショウの映像はふんだんに出てくるから、その誤
解も仕方ないのかもしれない。
そんなハリウッドとビバリーヒルズの間に位置する2qほど
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02月28日(日)
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