ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459865hit]

■あやしい彼女、COP CAR/コップ・カー、無音の叫び声
映画の模造予告編を制作、それが2011年7月紹介『ラスト・
エクソシズム』などのイーライ・ロスに注目され、その予告
編に基づく本編で2014年に監督デビュー。
そして本作が長編第2作だが、さらに本作で評価されて人気
シリーズへの抜擢だそうだ。
因に脚本は“Clown”からの盟友であるクリストファー・D
・フォードとの共同だが、そのフォードは2013年5月紹介の
ロボットテーマ作品『素敵な相棒』の共同脚本も手掛けてお
り、こちらも注目だ。
物語の展開には少年の成長の要素もあり、そこに漂う雰囲気
にはシティ―ヴン・キング原作『スタンド・バイ・ミー』の
趣もあるかな。勿論1987年の映画化ほどの大作ではないが、
目指している感覚には通じるところもありそうだ。
そんなところが人気シリーズへの抜擢の理由かな? それに
してもホラーからアクションへ、そしてアメコミへの三段跳
びは見事なものだが、実は本作の前半にはちょっとした仕掛
けがあって、僕はそれも気に入った。
それは映画ファンには常套の手法を捻ったもので、本来なら
別の展開を予想するところを見事にひっくり返されたもの。
こんな感覚がアメコミ作品に取り入れられたら、それも凄い
ことになる。
2017年の作品にも期待が集まるところだ。
公開は4月9日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
他で、全国順次ロードショウとなる。

『無音の叫び声』
1986年日本農民文学賞から、2003年現代詩人賞、2009年丸山
薫賞など、数多くの受賞に輝く農民詩人・木村廸夫を追った
ドキュメンタリー作品。
1935年生まれの詩人は貧しい小作農家の長男だった。そして
戦後の農地改革で自作農となるが、その耕地は6反足らずと
僅かだったために出稼ぎなどで生計を立てる。しかし我が子
に乞われて出稼ぎをやめ、地元で廃品回収などを始める。
そんな近代日本の最底辺で生き抜いてきた詩人は、60年間で
16冊に及ぶ詩集を世に出し、数々の受賞にも輝く。それらは
一貫して世の中の矛盾を突くものであり、反戦詩人とも呼ば
れるものだ。
そしてその一方で詩人は衰え行く農村を憂い、三里塚闘争の
記録などで有名な小川プロダクションを自宅に招いて村の記
録を残したり、遺骨収集団に参加して太平洋の激戦地だった
ウエーキ島に降り立ったりもする。
そんな詩人の姿を通して、戦後日本の歩みが問い直される。
監督の原村政樹は1957年生まれ、フリー助監督を経て1988年
にドキュメンタリー制作会社の桜映画社に入社。2004年制作
の『海女のリャンさん』でキネマ旬報文化映画ベストテンの
第1位に選ばれるなど、こちらも数々の受賞に輝いている。
そんな原村は多くの農村・農民を描いたドキュメンタリーも
手掛けており、その監督の目が本作では詩人を通じて農村を
描くことにも成功している。それは日本の原風景とも言える
もので、僕はその風景にも魅了される作品だった。
その他にも、どれだけ多くの素晴らしいものを戦後の日本は
失ってしまったことか、そんなことも問い掛けられているよ
うな感じもした。作品の主題は詩人であるけれど、それ以上
のものを本作は描いている。
本作は昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭にて公式上映
が行われたもので、一般公開は1月23日よりフォーラム山形
と3月5日よりフォーラム東根で山形県先行上映の後、東京
はポレポレ東中野にて4月9日から、さらに全国順次上映が
予定されている。

この週は他に
『つむぐもの』
『マジカル・ガール』“Magical Girl”
『But・オンリー・ラヴ』
『劇場版 探偵オペラ ミルキィホームズ
               逆襲のミルキィホームズ』
『エスコバル/楽園の掟』“Escobar: Paradise Lost”
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。

02月14日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る