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On the Production
by 井口健二
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■ザ・ガンマン、鉄の子、アイリス・アプフェル、ディーパンの闘い、新劇場版 頭文字D
因に試写前の挨拶によると、本作は監督の実体験に基づいて
いるのだそうだ。
思春期の子供たちが巻き起こす大人の想像を超えた行動を描
く作品ということでは、2012年3月紹介『先生を流産させる
会』などもあるが、本作はさらに現実的に子供たちの身辺に
起きる出来事として考えさせられるものになっている。
ただし本作では物語がその点に絞り込まれておらず、結末も
両親の生活態度など子供たちの行動とは異なる次元の話で進
んでしまうもので、その点が少し歯痒くも感じてしまった。
監督の実体験に基づくのであれば、もっといろいろな思いも
込められたと思えるし、その辺で少し物足りない感じもして
しまう作品だった。
しかも母親が夜の商売というのは…。川口という土地柄の反
映なのかも知れないが、内容的にはPTA的な方向も考えて
もよかったのではないかな。そんなことも考えてしまった。
老婆心ながら。
公開は2月13日より、東京は角川シネマ新宿、また埼玉県は
MOVIX川口ほかで全国順次上映となる。
『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』“Iris”
1921年生まれ、94歳にしてニューヨークのファッションアイ
コンと呼ばれる女性の姿を追ったドキュメンタリー作品。
アイリスはニューヨーク州クィーンズでロシア系ユダヤ人夫
妻の1人娘として生れた。一家はガラスと鏡のビジネスで成
功していたようで、母親はファッションブティックも営んで
いたという。
そんな環境で育った彼女は、ニューヨーク大学で美術史を学
んだ後に美術学校にも通い、卒業後はインエリアデザイナー
の助手なども務める。そして結婚した夫と共に織物工場を立
ち上げ、伝統的なデザインに基づく様々な意匠を考案。
さらにその研究のために世界中を旅して各国々の衣装やイン
テリアなどを収集して行く。こうして独特のファッションセ
ンスを磨いたアイリスは、メトロポリタン美術館で特集を組
まれるほどの名声を築いたのだ。
そんなアイリスの行動や生活、さらに意見などが見事に集約
されたドキュメンタリーになっている。
監督は、1969年『ローリング・ストーンズ・イン・ギミー・
シェルター』などのアルバート・メイズルス。2015年3月に
他界した監督の最後の作品となったようだ。
高齢化の進む近年では、いろいろな境遇にいる高齢者の姿を
追ったドキュメンタリーは何本も観ている気がするが、自分
自身がそちら側に近い年齢になっていると、痛々しいという
か、何となく観ていて辛い気分にもなってしまう。
その点で言うと本作に登場する94歳の女性は、正しくそんな
高齢者に勇気を与えてくれる存在と言えそうだ。しかも本作
では、その女性に対し見事にファッションアイコンとしての
リスペクトを持って捉え切っている。
観ていて元気が貰えるような作品だった。
公開は3月5日より、東京は角川シネマ有楽町ほかでロード
ショウとなる。
『ディーパンの闘い』“Dheepan”
戦乱の母国を逃れてヨーロッパで暮らす難民の姿を描き、昨
年のカンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いたドラマ作品。
主人公はスリランカで反政府系の戦闘員だったが、政府軍に
追い込まれ、とっさに女性とその女性が連れてきた女の子を
家族に仕立ててヨーロッパへと脱出する。そして辿り着いた
フランスでは、郊外のアパート団地で管理人の職を得て生活
の基盤を得る。
ところが彼の担当する棟の集会スペースは不良のたまり場と
化しており、その団地の向いの棟にはギャング団らしき連中
が出入りしていた。そんな中でも連れてきた少女を学校に通
わせ、女性にも向いの棟に住む老人の介護の職が来て貧しい
ながらも生活も安定して行くが…。
そんな彼の生活に新たな試練が襲い掛かってくる。
出演は、実際にスリランカの反政府軍「解放の虎」に入隊し
ていたというアントニーターサン・ジェスターサン、南イン
ドの劇団に所属していたカレアスワリ、スリニバサン、それ
に撮影時9歳のカラウタヤニ・ヴィナシタンビ。
脚本と監督は、2012年12月紹介『君と歩く世界』などのジャ
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12月20日(日)
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