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On the Production
by 井口健二
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■フォースの覚醒記者会見、これが私の人生設計、白鯨との闘い、オートマタ、ゾンビスクール!、ジェンダー・マリアージュ
ハーマン・メルヴィルが『白鯨』を執筆するために取材した
実話に基づくとされる3Dドラマ作品。
時は1850年、ナサニエル・ホーソーンの『緋文学』が話題を
呼んでいるアメリカ文学界で1人の作家が次作の構想を巡ら
してた。彼の名はハーマン・メルヴィル。捕鯨船に乗り組ん
だこともあるという作家は、捕鯨船員に伝わる伝説を物語に
しようとしていた。
ところが彼が訪ねた伝説の起源を知るとされる老船員は中々
重い口を開こうとしない。しかし作家の熱意に触れた老船員
は長年連れ添った妻にも話せなかった航海の話を始めるが。
それは巨大な白い鯨との遭遇を軸に、人間性の極限にも関る
重大な物語だった。
出演は『マイティ・ソー』などのクリス・ヘムズワースと、
2012年8月紹介『リンカーン/秘密の書』などのベンジャミ
ン・ウォーカー、2014年5月紹介『トランセンデンス』など
のキリアン・マーフィ。他にベン・ウィショー、ブレンダン
・グリースンらが脇を固めている。
監督はオスカー受賞者のロン・ハワード、ストーリーと脚本
は2002年4月紹介『光の旅人』などのチャールズ・レヴィッ
トが担当した。
物語はメルヴィルの時代には口にすることも憚られるような
出来事を描いたもので、その辺は現代の映画だから描くこと
ができるということなのかもしれない。でもそれをちゃんと
描いたというところも評価すべきだろう。
それに加えて本作の物語とメルヴィルの『白鯨』との繋げ方
も巧みなところで、成程これならと納得できるものだった。
この辺の巧みなドラマ作りにも感心する作品だった。
公開は2016年1月16日より、東京は新宿ピカデリーほかにて
2D/3Dロードショウとなる。
『オートマタ』“Automata”
試写会場でアントニオ・バンデラス初の本格SF作品と紹介
された作品。
時は2044年、太陽風の異変によって地表は砂漠化し、人類は
ロボットの助けなしには生きて行けない状況となっている。
そんな状況下で開発されたロボットには、1:生命体に危害
を加えてはいけない。2:自らを修理改造してはいけない。
という制御機能が組み込まれた。
そして主人公は、そんなロボットの開発会社から派遣される
調査員。彼はロボット嫌いの刑事に破壊されたロボットを調
査する内、そのロボットが何者かの手で改造され、制御機能
2が無効にされていた事実を突き止める。
そこでさらなる調査に乗り出した主人公だったが、謎の組織
に襲撃されてカーチェイスの末に砂漠で車が横転。気を失っ
た主人公が目覚めたとき、彼はロボットの一団と共に砂漠を
何処へともなく進んでいるところだった。
共演はデンマーク出身のビアギッテ・ヨート・スレンセン。
さらに1988年『ワーキング・ガール』でオスカー候補のメラ
ニー・グリフィス、共に2015年9月紹介『サバイバー』に出
演のディラン・マクダーモットとロバート・フォースターら
が脇を固めている。
脚本と監督は、2008年『シャッター・ラビリンス』で長編デ
ビューのガベ・イバニェスが担当した。
宣伝はロボット物で売るのだろうが、SFファンとして観え
る物語は人類とA.I.の関係を描いたものだ。それは物語の最
後に流れる音楽がそれを示しているもので、そこで流れるの
は“Daisy Bell”。
これは1961年にベル研究所のコンピュータが初めて歌った曲
であり、『2001年宇宙の旅』で機能停止されるHAL 9000が最
後に歌う歌なのだ。つまりこれは本作の物語が人類とA.I.の
関係を描いたものであることを示している。
そこで翻って本作を考えると、主人公とロボットの一団の砂
漠の旅は『2001年』で木星に向かう旅であり、目的地の直前
での戦いはボーマンとHAL 9000の戦いにも重なってくる。そ
してその結末は…。そんな意味も感じられる作品だ。
さらに本作は、長年ロボットSFの決まりだった「アシモフ
の3原則」を覆した作品でもあり、これはA.I.時代の新たな
ロボット像を描いた作品と言えるものにもなっている。SF
ファンは見逃してはいけない作品だ。
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12月13日(日)
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