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On the Production
by 井口健二
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■ハーメルン、天国はほんとうにある/神は死んだのか/サン・オブ・ゴッド、刺さった男/スガラムルディの魔女
候補にもなったランダル・ウォレスが脚色監督を務めた本作
も、全米で9000万ドルのヒットを記録した。
出演は、2010年5月紹介『ラスト・ソング』などのグレッグ
・キニア、同年1月紹介『シャーロック・ホームズ』などの
ケリー・ライリー、そして息子役を新人のコナール・コラム
が演じている。
事前には宗教的な意味合いはかなり強いと思われる作品で、
試写の前には多少構える気分もあった。しかし作品自体は特
異な息子に親がどう対処するかという、ある種の普遍的な物
語でもあって、その気持ちで観ることができた。
それにキリスト教的な天国というのが、一体どんなものかと
いうのも観られ、宗教と無関係な僕にもさほど神経を尖らす
こともなく鑑賞できる作品だった。宗教家にどうかは判らな
いが、これはエンターテインメントだ。
それに対して2本目はかなり宗教的な意味合いの強い作品。
これはアメリカの大学などで現実に起きている事象にインス
パイアされた物語とのことだが。多少観ていて辟易する場面
もある作品だった。
実際にこの出来事は明らかなパワーハラスメントで、このよ
うなことが現実に起きていることも信じ難いものだ。ただし
映画の中で行われるディベートはかなり軟弱で、僕はもっと
真剣な宗教論争を期待したので少し残念だった。
そして3本目は、これは王道の作品。実はアメリカで全10回
で放送されたテレビシリーズの後半5回分をダイジェストに
したものだが、信者ではない僕でも知っている救世主の話が
次々に登場する。
公開は、最初の2本が12月13日から、東京はヒューマントラ
ストシネマ渋谷、大阪はシネリーブル梅田他。2本立てでは
ないが同じシネコンの別々のスクリーンを使っての同時上映
という仕掛けで全国順次ロードショウとなる。
3本目は、来年1月10日から、新宿ピカデリー、丸の内ピカ
デリー他で全国公開の予定だ。

『刺さった男』“La chispa de la vida”
『スガラムルディの魔女』“Las brujas de Zugarramurdi”
2005年7月紹介『800発の銃弾』などのスペインの鬼才ア
レックス・デ・ラ・イグレシア監督による2012年と2013年の
作品が纏めて公開されることになった。
イグレシア監督は、1993年の長編デビュー作が近未来を背景
にしたものであったり、ホラー作品も何本か手掛けていて、
どちらかと言うとジャンル系の映画監督と呼べるようだ。
そんな監督の1本目は、過って工事現場から突き出した鉄筋
の上に転落し、頭部を貫かれて身動きができなくなった男の
話。男は以前にはヒットCMコピーも手掛けた宣伝マンで、
そんな男の緊急事態にいろんな連中が近づいてくる。
主演は、『シュレック』シリーズのスペイン語吹き替え版で
ドンキーを担当しているというコメディアンのホセ・モタ。
妻役をサルマ・ハエックが演じているのも注目される。
絵柄には2001年11月紹介『ノー・マンズ・ランド』(2002年
オスカー受賞作)に似たところもあって、ジャンル系とは少
し違うかな。ただし反戦テーマのオスカー作品に対して本作
ではマスコミにその矛先が向けられている。
それに対して2本目は、ジャンル色が諸に出ている魔女物の
怪作。物語の始まりは、マドリッドの繁華街で実行されたド
派手な強盗劇。その犯人の1人は離婚した妻の許にいる幼い
息子との面会日で、何と子連れで強盗を行っていた。
そんな一味はいろいろ手違いの末、父子ともう1人が奪った
大量の指輪と共に逃亡し、さらにタクシーをハイジャックし
て国境を目指すことになるが…。その行程には伝説の魔女の
村があった。
出演は、スペインではかなり多くの作品に出ているウーゴ・
シルヴァとマリオ・カサス。この2人が間抜けな強盗を演じ
る。そして、2007年2月紹介『ボルベール』などカル
メン・マウラ、本作後に監督と結婚したカロリーナ・バング
らが魔女役を演じている。
なお本作の一般公開の前に、東京では10月上旬に開催された
ラテン・ビート映画祭に合わせて監督夫妻が来日し、歓迎の
パーティに招待された。

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10月19日(日)
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