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On the Production
by 井口健二
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■TATSUMI、うまれる2、ブラック・ハッカー、マエストロ!
が、その背景取材も含めて適切と感じられた。
実のところ前作に関しては、上記の紹介記事を読み返しても
僕自身がネガティヴな態度で作品に接していたことが思い出
されるが。本作に関してはそのような気分は払拭され、心底
から良い作品と言える。
それは多少あざとい演出もあって、その場面では試写会場で
も涙している人もいたようだったが。僕自身はそんな直截的
な部分よりも、登場する男性たちの全てが見せる前向きな態
度に感動を覚えていた。
特に、前作に引き続いてその成長を見守ることになったお子
さんの父親が見せる決意の表情には、僕自身が子供に対して
良い父親だったか否かということの想いも含めて、自分自身
を振り返る想いにも捉われていた。
この一家に関しては、これは不謹慎な言い方に聞こえるとは
思うが、最期まで記録を続けて欲しいものだ。それを僕らに
観せることはできなくとも…
そして登場するもう1人の男性に関しては、子供の誕生・成
長とは対極の出来事が描かれるが、僕自身が登場する人物と
同じ年齢に達していると、何とも身に詰まされるものが描か
れていた。
そこには懺悔や悔恨など様々な思いが去来するが、僕自身に
は妻が健在の内にその思いの一部でも払拭するような努力が
求められているようで、これからの人生に目標が与えられた
ような気分にもなっていた。
監督に関しては、前作の試写は性別も知らずに観ていたが、
今回は女性プロデューサーと結婚したとの情報も得て成程と
納得もした次第。前作では今一歩踏み込めなかった部分に、
本作では踏み込めている感じがした。
ナレーションを樹木希林が担当。それぞれの家族に寄り添う
ような口調も素敵だった。
公開は11月22日から、東京はシネスイッチ銀座ほかで、全国
順次ロードショウとなる。

『ブラック・ハッカー』“Open Windows”
2013年11月紹介『グランドピアノ』などのイライジャ・ウッ
ドがコンピュータネットワークに振り回される男性を演じる
スペイン=アメリカ合作のサスペンス作品。
主人公は女優の追っ駆けサイトを主宰している男性。彼のサ
イトは、レア写真の掲載などでbPの人気を誇っているよう
だ。そんな実績が認められたのか、彼には女優と直接逢える
というチャンスが訪れる。
ところが、女優の新作の記者会見が行われた街で指定された
ホテルに到着した主人公は、思い掛けない事態に巻き込まれ
る。突然彼が持参したPCがハッキングされ、やむなくその
指示に従った主人公は女優の不倫現場を目撃。
しかも不倫相手に事態を察知された主人公はハッカーの指示
でその場を逃れることになるが…。次々襲い掛かる危機を辛
くもかわし続ける主人公は、やがてその裏に隠された恐ろし
い陰謀の存在を知ることになる。
そんな展開の中に、隠しカメラや公共ネットワークへのハッ
キングなどPCを介在する様々なテクノロジーが加味され、
正にスクリーンから一瞬も目を離せないサスペンスドラマが
構築されて行く。
脚本と監督は、2007年“Los cronocrímenes”という作品が
ハリウッドでリメイク進行中というスペインの俊英ナチョ・
ヴィガロンド。因にこの作品は『バタフライ・エフェクト』
のような限定的なタイムトラヴェルを描いているそうだ。
共演は、アメリカでかつてbPポルノスターの名を欲しいま
まにしたというサーシャ・グレイ。その後はスティーヴン・
ソダーバーグにも認められた女優で、本作にポルノシーンは
ないがそれなりの艶技は観せている。
他にヴィガロンド監督や、2006年10月紹介『氷の微笑2』に
出ていたというニール・マスケルらが脇を固めている。
映像的にはそれなりに面白いと感じるし、コンピュータテク
ノロジーの面でもいろいろ考えられている印象は持つ。ただ
それに対する人間関係の方がごちゃごちゃし過ぎの感じで、
これはもっとシンプルで良かったのではないかな。
しかもそれが二転三転のどんでん返しというのは、脚本を書
いている本人は了解できていても、それを観客に理解できる

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10月12日(日)
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