ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459973hit]
■恋につきもの、パズル、ロボコップ
それから1ヶ月後、突然現れたマスクを着けた集団が学校を
占拠、理事長と居合わせた教師に恐怖のゲームを仕掛ける。
そして理事長が拉致され、さらに3人の男子生徒が行方不明
となる。果たして彼らは犯人か…
一方、一命を取り留めた女子高生の病室に同級生の男子が現
れ、1通の封筒を残して去る。その直後、行方不明だった男
子生徒が異様な姿で発見され、それは街中を巻き込む恐怖の
パズルへと広がって行く。
そのパズルを解き彼らを解放する鍵は、女子生徒の許に残さ
れた封筒に隠されていた。
出演は、2010年3月紹介『きな子』などの夏帆と、先月紹介
『クジラのいた夏』などの野村周平。さらに先月紹介『そこ
のみにて光輝く』などの高橋和也。
また、2013年4月紹介『フィギュアなあなた』などの佐々木
心音、2011年6月紹介『行け!男子高校演劇部』などの八木
さおり、そして大和田獏らが脇を固めている。
山田原作の映画化では、2008年以降『リアル鬼ごっこ』など
が大ヒットを続けているようだが、特に年配の映画評論家の
人たちには評価が芳しくないようだ。
実際に僕も、橋本愛や小出恵介の主演作などを観ているが、
人殺しの手法ばかりを懇切丁寧に見せる割には背景の経緯な
どの描写が乏しく、人間味のない展開には辟易するし、どの
作品も異口同音なのが耐えられない感じもしたものだ。
しかし本作は山田の新境地ともされており、その点の期待は
持った。その作品は一応事件の背景にはそれなりの経緯など
もあって、少し人間味も加味されている。とは言え本質的な
部分は変わらないが、それは本来の読者向けのものだ。
従って僕自身は本作をそれなりに評価するものだが、ただし
物語の展開としてある目的に沿って事件が進められる中で、
1人の登場人物が罰せられる理由が理解できない。これには
困ってしまった。
実際に本作の主人公の行動は、ある種の歪んだ正義感として
描かれているのだが、その中で無辜の人物を被害者にするこ
とは許されるべきではない。それなら何かこの人物にも理由
があってしかるべきだ。
そこで思い返すと、映画の前半でこの人物に関して常識では
考えられないシーンが有り、もしかするとそれが伏線だった
のかとも思える。それにしても、それならもう少しその背景
などは描いて欲しかった。
もっともそれが本当に伏線だったのかは定かでないが。
公開は3月8日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
ほか全国ロードショウとなる。
『ロボコップ』“RoboCop”
1987年にポール・ヴァーホーヴェン監督で映画化され、その
後に2作の続編やテレビシリーズ、アニメシリーズ、アメコ
ミ化もされた物語を第1作から再開するreboot作品。
舞台は近未来のデトロイト。産業の衰退でスラム化し、犯罪
の蔓延る市街では警察官の殉職も相次いでいた。その一方で
アメリカの兵器産業は治安維持用のロボットを開発、海外の
紛争地域での活用を進めていた。
しかし、危険を察知すると独自の判断で実行犯の殺害も行う
ロボットの運用には人道上の問題もあり、アメリカ国内での
運用を禁止する法律が制定されていた。そして今日も正義感
あふれる警官が犯罪組織の手で瀕死の状態となる。
その事態に兵器産業は警官の脳髄を活かしたサイボーグ警官
の実用化を目論む。ところが人の判断が介在するサイボーグ
では咄嗟の判断の速度がロボットに追いつかない。その方策
が課題となるが…
オリジナル版では、最初にサイボーグ化された主人公の記憶
は消されていて、そこから徐々に蘇ってくる記憶(思い出)
が主人公を苦しめるという展開だった。しかし記憶を消され
た理由などが薄弱で、いろいろ指摘されたりもした。
その点を今回の作品では明確にしており、それはSF的に見
ても周到に構築された物語と言える。ただそれをかなり丁寧
に描き込んでいることが、前半の展開では多少間怠く感じる
かな。でもそれは仕方ないと言えるものだ。
そしてそこからの主人公の葛藤は、1992年の『ユニバーサル
[5]続きを読む
03月02日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る