ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459977hit]

■ハル・ハートリー、黒執事、神奈川芸術大学映像科研究室、ゼウスの法廷、マイティ・ソー2、トップ・オブ・ザ・レイク、オッド・トーマス
今年8月紹介『アシュラ』などのさいとうけいいちが共同で
担当している。
僕は原作は見ていないが、元の物語は19世紀のイギリスが舞
台なのだそうだ。しかし日本人の俳優による映画化では無理
があるということで、近未来に変更されたとのこと。そして
ストーリー自体もオリジナルのものが創作されている。
とは言え、物語は現実というより元から魔界を舞台にしてい
るもののようで、それはかなり荒唐無稽でも許容されるもの
だろう。ただテロの手段が毒ガスもしくはそれに類似の手段
というのは、オウムサリン事件のトラウマかもしれないが、
何か別の捻りも欲しくは感じられたところだ。
因に、本作の製作はワーナー映画社の日本法人だが、同社の
日本漫画の映画化では、2012年6月紹介『るろうに剣心』は
続編が2本公開されるほどの評判になっているようで、今後
もこの路線は継続されるのかな。
公開は1月18日から、東京は新宿ピカデリー他で全国ロード
ショウとなる。
なお本作の試写の前に、来年2月28日公開『ホビット/竜に
奪われた王国』の日本版予告編の初号試写が行われた。昨年
12月紹介作品の続編だが、いよいよ後の『LOTR』に繋が
る登場人物も次々登場するようで、近日行われる本編の完成
披露試写が楽しみになったものだ。

『神奈川芸術大学映像科研究室』
大阪芸術大学で大森一樹監督に師事した後に東京藝術大学大
学院に進み、そこでは黒沢清監督に学んだという坂下雄一郎
監督による大学院修了制作作品。
主人公は芸術大学映像科に勤務する助手。彼の本来の仕事は
学生からの提出書類の受付や教授会議のセッティングなど、
学校業務の円滑な運営だ。しかしその仕事は、保身しか考え
ない教授陣と問題児ばかりの学生の板挟みになっている。
そしてついに事件が起きる。それは卒業制作を進める学生が
起こした機材破損事件。実は、制作期日に間に合わない学生
が無断で保管庫から機材を持ち出そうとして発見され、慌て
た学生が機材を落として破損したのだが…。
事なかれ主義の教授陣はその事件をただの事故として隠蔽を
図り、そのため主人公には大学庶務課への嘘の報告書の提出
が指示される。しかしそれは次々に最悪の事態を引き起こす
ことになってしまう。
監督は、大阪芸術大学時代に実際に助手の立場だったことも
あるようで、本編のエピソードの中には実話に基づく部分も
多々あるようだ。しかし物語は楽屋落ちに終始するものでは
なく、現実社会にありそうな出来事が描かれている。
それは、例えば権威に囚われる上司と我が儘な部下の板挟み
になっている中間管理職の悲哀といった感じでもあり、そん
な物語が芸術大学映像科という一風変わった舞台の中で巧み
に表現されていた。
出演は、多摩美術大学映像演劇科出身で、2011年『ニュータ
ウンの青春』や、今年8月紹介『Miss ZOMBIE』にも出てい
たという飯田芳、2012年の主演デビュー作『彩〜aja〜』で
モナコ国際映画祭最優秀新人賞受賞の安藤千春。
また大阪芸術大学出身で、今月紹介『大人ドロップ』などの
前野朋哉。さらにテレビ『鬼平犯科帳』などの宮川不二夫、
今年9月紹介『ルームメイト』に出ていたという高須和彦ら
が脇を固めている。
他にも日芸、多摩美、京都造形など各大学の映像学科出身と
なる中村有、嶺豪一、中本章太といった若手俳優が学生役で
出演している。
なお本作は、2012年12月紹介『チチを撮りに』などと同じく
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にエントリーされ、その支援
の許で一般公開されるSKIPシティDシネマプロジェクトの第
4弾となるものだ。
公開は1月25日から、東京では新宿武蔵野館で2週間限定の
レイトショウとなる。
因に「神奈川芸術大学」というのは架空だが、撮影協力には
横浜芸術大学という名称が挙がっていた。特に神奈川・横浜
らしい風景が出てくるものではないが、その辺が監督の拘り
かもしれない。そんな拘りも重要だと思える作品だった。

『ゼウスの法廷』

[5]続きを読む

12月15日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る