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On the Production
by 井口健二
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■ダ・ヴィンチ・デーモン、ミトン+こねこのミーシャ、御手洗薫の愛と死、小さいおうち、ノー・ヴォイス
のアニメーション作家ロマン・カチャーノフの作品4本が、
カチャーノフの没後20周年を期して劇場公開される。その内
の2本は日本初公開の作品だ。
『こねこのミーシャ』“Как котёнку построили дом”
1963年制作。日本初公開。ある日、野良猫のミーシャの暮ら
していた居心地の良い家が取り壊される。そこに現れたトラ
クターは新しい家が建つと説明するが、ミーシャや小鳥たち
は心配そうだ。そして家の建設が始まる。
『迷子のブヌーチカ』“Потерялась внучка”
1966年制作。日本初公開。お祖父ちゃんがちょっと目を離し
た隙にヌブーチカがいなくなる。心配なお祖父ちゃんは警察
に届けるが、警察は泥棒捜査の真っ最中。そしてヌブーチカ
は街でいろいろな人に出会って大冒険中だった。
『ミトン』“Варежка”
1967年制作。主人公は仔犬を飼いたいが母親に許して貰えな
い少女。そんな少女が雪の日に外で赤いミトンの手袋を仔犬
に見立てて遊んでいると、何とそのミトンが赤い仔犬になっ
てしまう。
『レター』“Письмо”
1970年制作。海軍に勤務する夫からの手紙を待つ妻と息子。
しかしその手紙が何日も届かなくなる。不安で悲しみにくれ
る母親を心配する息子は、ベランダを船に見立てて夜の街に
冒険の旅を始める。
日本でも先に公開されている後の2本は純粋にファンタシー
として素晴らしい。それに比べると前の2本は、新しい住居
の建設だったり、警察の活躍などちょっとプロパガンダの匂
いがする。多分それはソ連時代の反映なのだろう。
とは言え1967年、70年もソ連体制下に変わりはないが、監督
の業績が認められて、それだけ創作の自由も与えられたとい
うことなのかな。より自然にファンタシーが描かれているの
も素晴らしいところだ。
また、今回公開される作品は4本とも人形アニメーションだ
が、『迷子のブヌーチカ』では一部に線画のアニメーション
が使われるなど斬新な試みも行われている。そのテクニック
も面白い作品だった。
公開は、「ロシア文化フェスティバル2014」の一環とし
て、東京では12月21日からヒューマントラストシネマ渋谷、
大阪は1月4日からテアトル梅田にてロードショウされる。
なお上映時間は4本合わせて51分と短いもので、入場料は均
一の1000円、大人が小学生以下の子供同伴の場合には、子供
は1人当り500円になるとのことだ。
『御手洗薫の愛と死』
テレビで評判になった『ナースのお仕事』シリーズなどを手
掛ける大賀文子プロデューサーと両沢和幸監督が、人気女流
小説家と新人小説家が足を踏み入れてしまった特殊な関係を
描いたオリジナル作品。
主人公は著名な小説家。常にベストセラーになる人気作家だ
が、実は最近の自分仕事には満足感が得られていない。それ
が高じたのかパーティの席で長年の秘書で運転手だった男性
を馘にしてしまったようだ。
そんな女流作家の許に1人の若者が訪ねてくる。実は作家は
パーティの帰路に自ら運転していた車で事故を起こし、その
若者の母親を跳ねてしまったのだ。しかし飲酒運転だったこ
ともあり、作家はその事故を隠すように頼んでいた。
ところがその若者は、自らも作家の端くれと称し、ある提案
を女流作家に申し出る。それは彼女の原稿を若者の名前で発
表しろというものだった。つまり彼女に若者のゴーストライ
ターになれという…。
ゴーストライターという言葉には、最近では2011年7月に紹
介したロマン・ポランスキー監督の作品なども思い出すが、
そんな政治的な陰謀は絡まないものの、本作でも色々な人間
の葛藤やそこから見出される展望などが描かれる。
その人間ドラマはかなり巧みに描かれたもので、脚本も手掛
けた監督には長年テレビの人気シリーズを支えた実力が感じ
られた。正直には、最近テレビ出身監督のいい加減な作品に
辟易していた自分には刮目の作品だった。
もっとも監督は、元々が日活撮影所で助監督の出身だそうだ
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12月01日(日)
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