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On the Production
by 井口健二
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■グランドピアノ、赤々煉恋、光にふれる、ファルージャ、おじいちゃんの里帰り
小中監督との再会になった有森也実。また大杉漣、秋本奈緒
美らが脇を固めている。
厳密な意味でこの作品はファンタシーではない。むしろリア
ルと呼べる作品だろう。
実際にクレジットには協力者として教育関係者の名前も登場
し、その人たちのアドヴァイスの許で作品は作られているよ
うだ。そして作品の製作には不登校支援センターや社会適応
支援協会などの団体も名を連ねている。
以前から書いているように、僕は自殺をテーマにした作品は
嫌悪している。だからこの作品もそれがテーマと判った瞬間
は身構えてしまった。でもこの作品はそれを虚しいものとし
て描き切ったことでは評価しなければならない。
ただその虚しさや空疎感はもっと鋭く描くべきだし、それを
ファンタシーに仕立てたことにはやはり納得できない部分は
残った。でもまあこうして啓蒙することも防止に繋がるとし
て関係者も協力しているのだろう。
CGIのデザインとモーション監督を『時空要塞マクロス』
などの板野一郎が担当。
また、作品を彩る音楽をロックバンドPay money To my Pain
のベーシストT$UYO$HIが担当し、主題歌は昨年アルバム制作
中に急性心不全で急逝したPTPのヴォーカルKが、最後に
録音した「Rain」で歌声を響かせている。
原作者の朱川は、直木賞受賞後にテレビシリーズ『ウルトラ
マンメビウス』の脚本を3本書き、その内の2本を小中が監
督。その際に朱川の小説を読んだ監督が本作に興味を持ち映
画化を検討したものだそうだ。
テーマ的には難しい作品だが、こういう作品が公開されるこ
とが意味を持つのだろう。その公開は12月21日から、東京は
角川シネマ新宿でロードショウとなる。
『光にふれる』“逆光飛翔”
台湾の盲目のピアニスト黄裕翔(ホアン・ユイシアン)が自
ら主演する自伝的要素も含む青春ドラマ。
主人公は、生まれつき盲目だが両親の愛情いっぱいに育った
青年。幼い頃から音楽の天分を発揮し、各地のコンクールを
総なめにしたきたが、その中で謂れのない反感を買ってるこ
とも知っている。
そんな彼が大学の音楽科に進学し、健常者の中で1人暮らし
を始めることになる。そして最初は母親が付ききりで世話を
するが…。彼と寮で同室となった若者はちょっと変わった奴
で、彼とバンドを組もう言い出す。
そして友と共にメムバーの勧誘を始めた主人公は、彼が理想
とする心が優しくて声のきれいな女性の存在を知る。彼女は
アルバイトをしながらダンサーの道を目指していたが、家庭
の事情で挫折し掛かっていた。
共演は、張榕容(サンドリーナ・ピンナ)。他に2010年11月
紹介『モンガに散る』などのプロデューサーとしても知られ
るリー・リエ、台北とニューヨークを拠点に世界的に活動す
るダンサーのファンイー・シュウらが脇を固めている。
監督は、国立台湾芸術大学大学院で修士号取得のチャン・ロ
ンジー。その卒業制作として発表された本作の元となる短編
「ジ・エンド・オブ・ザ・トンネル」が映画祭で最優秀短編
賞受賞など高く評価され、長編監督デビューとなった。
また撮影監督には、ミシェル・ゴンドリー監督と仕事をした
こともあるというフランス人のディラン・ドイルが参加。以
前にコマーシャルの仕事を共にしたという監督と息の合った
コンビを見せている。
なお本作のプレゼンターには、2008年1月紹介『マイ・ブル
ーベリー・ナイツ』などの香港の映画監督ウォン・カーワイ
の名前が挙がっている。
先日の東京国際映画祭《ワールド・フォーカス部門》で紹介
した『27℃−世界一のパン』もそうだったが、映画祭で話し
た友人の意見では、最近の台湾の青春映画には、悪い子があ
まり出てこないのだそうだ。
その友人は、映画の面白さに欠ける印象のようだったが、確
かに何もかもうまくいってしまうのはお話として不自然だ。
でもそういう作品が好まれるのは、変にガチャガチャした映
画ばかりなのよりは、良い感じだ。
因に本作も昨年の東京国際映画祭《アジアの風部門》で上映
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11月10日(日)
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