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On the Production
by 井口健二
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■第26回東京国際映画祭《アジアの未来部門》《ワールド・フォーカス部門》
または2本目が対象とされるもので、映画祭では8本が上映
された内の5本を鑑賞することができた。またこの部門では
独自の審査が行われ、作品賞には上記の『今日から明日へ』
が選ばれている。
 なお審査では、スペシャル・メンションとして日本映画の
『祖谷物語−おくのひと−』が選ばれたが、この作品はスケ
ジュールの都合で観逃してしまった。その他にもマーティン
・シーン出演の『祈りの雨』も気になった作品で、これらの
作品には改めて紹介の機会があればと思っている。
        *         *
《ワールド・フォーカス部門》
『27℃−世界一のパン』“世界第一麥方”
2010年にパリで開催された世界パンコンテストで、第1位の
座に輝いた台湾のパン職人の姿を描いた実話に基づく作品。
台湾南部の貧農の家に生まれた主人公は12歳で父親が他界。
8人の子供を育てる母親に楽をさせるため、中学卒業後パン
職人の道に進む。これに富豪の令嬢との淡い恋などを絡めて
物語は作られている。またパンの研究家や日本人ライヴァル
なども登場して、互いに交流しながらのパン探求の道が描か
れる。物語はストレートな青春ドラマで、実に台湾映画らし
い作品。ただ、物語ではアンパンがキーとして登場するが、
銀座木村屋には言及されなかった。

『高雄ダンサー』“打狗舞”
2010年11月2日付「東京国際映画祭」で紹介の『タイガー・
ファクトリー』により当時の《アジアの風部門》スペシャル
メンションを獲得した早稲田大学安藤絋平研究室の製作で、
今回は台湾人と韓国人の共同監督による作品。台湾南部高雄
を舞台に、難破船の宝物に憧れる幼馴染3人組の人生が描か
れる。その内の2人は都会に出て成功して婚約、1人は地元
の闇社会に転落する。そして結婚式で再会する3人だが…。
正にステレオタイプのお話で作品が何も訴え掛けてこない。
2010年の作品も同じ感覚だったが、何か「こんな程度でいい
だろう」的な映画を甘く見ている感じがした。

『失魂』“失魂”
都会で働いていた若者が突然失神し、山里に住む老父の許に
帰ってくる。しかし回復した息子は以前とは別人のような凶
暴な性格だった。そんな息子を老父は蘭を育てる山奥の小屋
に閉じ込めるが…。物語は超常的な感じだがその実体は暈さ
れたまま。しかしかなり非日常的な物語が展開されて行く。
2010年11月2日付「東京国際映画祭」で紹介した『4枚目の
似顔絵』のチョン・モンホン監督の新作で、老父役には往年
のカンフー俳優ジミー・ウォンが扮している。モンホン監督
は前の紹介作もかなり捻りが効いていたが、本作もなかなか
のものだった。
なお以上の3作は、《台湾電影ルネッサンス2013》と称して
上映された。

『ホドロフスキーのDUNE』“Jodorowsky's Dune”
今回の映画祭で一番気になっていた作品。実は本作を観るた
めにコンペの1本を諦めた。1984年に映画化された『デュー
ン砂の惑星』は、それ以前にメキシコの映画監督が企画し、
撮影開始の直前まで行っていたものだった。その幻に終った
作品を、監督本人や準備に参加した人たちへのインタヴュー
で再現する。この計画のことは以前から知っていたし、そこ
に結集した蒼々たる顔ぶれについても知っていたが、その夢
のような計画に対する当時の思いが見事に再現されている。
それは正に夢のような作品だった。なお本作は来年夏の日本
公開が決定しているので、その時に改めて紹介したい。

『So Young』“致我們終將逝去的青春”
中国4大女優の1人とされるヴィッキー・チャオが、出身校
である北京電影学院の大学院に再入学し、演出を学んでその
修了制作として発表した初監督作品。1990年代を背景に都会
の大学に進学した少女の学園生活とその10年後が描かれる。
原作は中国で大ヒットしたネット小説だそうだが、最近の日
本映画でもよくあるパターンで、エピソードは積み上げられ
るが筋の通ったストーリー性がない。これはネットやケータ

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10月27日(日)
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