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On the Production
by 井口健二
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■寫眞館/陽なたのアオシグレ、ゼロ・グラビティ、大英博物館 ポンペイ展、オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ、楽隊のうさぎ
2010年1月紹介『しあわせの隠れ場所』でオスカー受賞のブ
ロックと、2005年12月紹介『シリアナ』で受賞のクルーニー
が、VFX満載の3D宇宙アクションを繰り広げる。
なお画面上に登場する出演者は2人だけだが、エンディング
ロールの表記によるとミッション指令の声は、今年9月紹介
『ファントム開戦前夜』などのエド・ハリスが当てていたよ
うだ。
1969年にマーティン・ケイディンの原作を映画化した『宇宙
からの脱出』“Marooned”では、最後は地球から救援船が向
かうことになっていたが、今回の状況ではそれは無理。しか
し今や宇宙空間には各国の宇宙船が漂っている。そんな状況
の変化が新たな物語を生み出している。
しかも本作は3D。宇宙望遠鏡やスペースシャトル、国際宇
宙ステーションなどの造形が3Dで観られるのも素晴らしい
が、そこに衛星の破片が襲い掛かる。最近の3D映画が奥行
ばかりで不満を感じていた人には、正に自分に向かって飛ん
でくる破片の脅威を堪能できる作品だ。
さらに映画の上映時間は91分しかなくて、その間に90分の周
回時間の破片が2回襲ってくるから、経過時間はほぼ実時間
に近いと思われるが、その間にも次から次へと難題が襲い掛
かり、その緊迫感は半端ではない。
その上、クルーニーの人情味溢れる演技など、元々短い上映
時間がさらに短く感じられる作品になっている。これはキュ
アロンの脚本の上手さと、演出の巧さの賜物だろう。
公開は12月13日から3D/2DとI-Max 3Dでも上映される。
I-Maxは正規ではないが、3Dの迫力はぜひ堪能してもらい
たい作品だ。

『大英博物館 ポンペイ展』
          “Pompei from the British Museum”
ロンドンの大英博物館で開催された特別展「Life and Death
in Pompeii and Herculaneum」の会場を、今年6月18日に博
物館を1日閉館にして撮影・製作されたHD作品。イギリス
とアイルランドの映画館には生中継されて、チケットは完売
だったという作品が、再編集されて日本公開される。
紹介されるのは、西暦79年にベスビアス火山の噴火によって
埋没し、後年発掘されたポンペイと、その近隣の海沿いの町
エルコラーノから出土された品々。それらを鑑賞しながら、
大英博物館館長ニール・マクレガーを始めとする各方面の専
門家たちの解説で、当時のローマ人の生活が浮き彫りにされ
て行く。
その中では、イタリア料理のシェフが登場して当時の食文化
や、公衆かまどでパンが焼かれていた歴史を語ったり、また
ガーデニング番組の司会者がモザイク画から当時の植物につ
いて語るなど、考古学だけでない多方面からのアプローチが
なされる。またこの上映のために制作されたインサート映像
や音楽、詩などが作品を彩って行く。
それは特別なプライベート内覧会に招待されて、専門家たち
の解説付きで博物館を見学するという、極めて贅沢な雰囲気
を味わえるもので、通常の博物館の紹介映像などとは一線を
画した作品に仕上げられている。そこにはBBCなどのイギ
リスのテレビ界が長年培ってきたドキュメンタリーの手法が
見事に活かされている感じもした。
しかもモザイク画、フレスコ画から、炭化して残された家具
や食品など多岐にわたる品々が、最新の研究成果も含めて紹
介されるのだから、これは様々な興味を持って観ることがで
きるものだ。特に下水道の調査で発掘された品に関しては、
ユーモアのある解説もあって楽しめた。
それにしても、モザイク画に描かれた人物にいちいち台詞が
吹き出しのように付いていて、そこから当時の人々の生活ぶ
りが見えてくるのは、当時のモザイク画の技法がそうであっ
たようだが、何か意図的になされたようにも見えて不思議な
感じもしたものだ。
因に、ポンペイは3分の2が発掘され、一方のエルコラーノ
は4分の1程度のようだが、現在どちらの発掘も中断されて
いるそうだ。これは長年発掘されたポンペイでの保存の状況
が極めて悪くなっているためとのことで、今後は新たな方法

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10月13日(日)
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