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On the Production
by 井口健二
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■自由と壁とヒップホップ、セッションズ、ザ・イースト、ゆるせない逢いたい、グランド・イリュージョン
しかし彼には満足できないことがあった。それは1人前の性
行為をしたことがないこと。性衝動によって勃起はするが、
手を動かせないために自慰をすることもできない。そんな彼
がすがったのは、セックスセラピストと名告る女性だった。
そして彼女は学術的な記録を取りながら彼との性行為を実践
することになるが…
今年1月紹介の日本映画『暗闇から手をのばせ』では、身体
障害者のための風俗を営業する男が描かれていたが、現実に
これは大きな問題と思えるものだ。しかも本作は姦淫を十戒
の1つとするキリスト教世界での話だから、さらに問題は複
雑になる。それらのテーマが実に巧みに組み合わされた作品
だった。
脚本と監督は、自らもポリオ・サバイヴァーで大ヒットTV
シリーズ『アリー My Love』なども手掛けたベン・リューベ
ン。出演は、2011年8月紹介『ウィンターズ・ボーン』でオ
スカー候補になったジョン・ホークスと、1997年『恋愛小説
家』で受賞し、本作でも候補になったヘレン・ハント。
さらに2008年1月紹介『団塊ボーイズ』などのウィリアム・
H・メイシー、2009年5月紹介『ターミネーター4』などの
ムーン・ブラッドグッド、2003年『モナリザ・スマイル』な
どのアニカ・マークスらが脇を固めている。
特にメイシーが演じた教会の牧師は、主人公がセックスセラ
ピストとの関係を告白するシーンで、それが姦淫であること
を認識しながらもその行為に理解を示す演技が素晴らしく、
思わず涙するほど感動してしまった。そしてその感動は映画
の全編に続いて行ったものだ。
僕が子供の頃には小児麻痺と呼ばれていたポリオは、子供が
罹る最も恐ろしい病気として認識していたが、当時すでに予
防ワクチンなどもあって、その甘ったるいシロップを飲まさ
れた記憶もある。しかしその現実はほとんど知らなかったも
ので、本作でその恐ろしさも再認識した。
なお現在の治療がどのように行われているかは知らないが、
映画に登場する「鉄の肺」は、カリフォルニア州で現存稼働
していた唯一の装置だそうだ。
公開は、12月6日から東京は新宿シネマカリテにて、以降は
全国順次で行われる。

『ザ・イースト』“The East”
今年8月紹介『ランナウェイ/逃亡者』にも出ていた1982年
生まれの女優ブリット・マーリングが製作・共同脚本・主演
を務め、上記と同じくFOXサーチライトの創立20周年記念
第2弾として公開される2013年度作品。
マーリングが演じるのは、元FBIのエージェントで企業を
相手にテロ対策を講じるセキュリティ会社にリクルートした
調査員。折しも海洋汚染を引き起こした石油王の屋敷に大量
の原油が流し込まれるテロ事件が起き、環境テロリスト集団
「イースト」から犯行声明が出される。
そして彼女に与えられた任務は、「イースト」の組織に潜入
してテロ集団のメムバーの特定と次の標的企業を探り出すこ
とだった。
こうしてサラという偽名を使いアナーキストやゴミを回収し
て再利用する活動家らに接近して行った主人公は、ある日、
貨物列車への無賃乗車が発覚し警察に逮捕されそうになった
とき、助けられた若者の車に「イースト」を連想させる印を
発見する。
かくして「イースト」に潜入した主人公はメムバーの素性を
探り始めるが、それは思いもかけぬ現実を彼女に突きつけて
来ることになる。そして概要も知らされぬまま従事した作戦
は副作用を蔑ろにして危険な医薬品を売り続ける製薬会社を
標的にしたものだったが…
共演は、2010年7月紹介『インセプション』などのエレン・
ペイジ、2012年4月紹介『バトルシップ』などのアレクサン
ダー・スカルスガルド、1月紹介『マリリン・7日間の恋』
などのジュリア・オーモンド、2009年3月紹介『それでも恋
するバルセロナ』などのパトリシア・クラークソン。
監督は、マーリングが共同脚本を手掛けた2011年“Sound of
My Voice”でも組んだザル・バトマングリ。2人は大学時代
からのパートナーで、前作がサンダンス映画祭で評価を受け

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10月06日(日)
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