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On the Production
by 井口健二
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■眠れる美女、終わりゆく一日、ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン
で描くというのはなかなか面白い手法だと思う。ただし本作
の場合はそれはあまりにプライベートな内容で、監督の本人
的には思いの丈なのかも知れないが、傍から観るとちょっと
退いてしまうところもあった。
それに対して列車の行き交う映像は、マニアにはかなり堪ら
ないものがあるところで、中でも威風堂々とした蒸気機関車
の登場は、多分事前に知っていた上で撮影されたものと思わ
れるが、その煙だけの映像から本体が現れるまで監督も好き
だなあと思わせるものがあった。
因に線路の配置はグーグルで見ると、駅から左右に分かれて
線路が敷設され、さらにその別れた線路を直進で繋ぐ線路が
設けられている。ただし映像で、弧を描いて二階建て列車が
走行しているのはさらにもう1本の別線のようで、かなり複
雑な配置になっていた。
そんなことを確認しながら観るのも面白い作品だった。
『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』
“The Stone Roses: Made of Stone”
2011年10月に活動を再開したイギリス・マンチェスター出身
のロックバンド「ザ・ストーン・ローゼズ」の姿を、2009年
1月紹介『THIS IS ENGLAND』などのシェイン・メドウズ監
督が追ったドキュメンタリー。
バンドは1987年に結成され、1989年にメジャーデビュー。翌
年にはリヴァプールで2万7000人を集める野外ライヴを敢行
する。しかしマネージャーとの確執などからアルバムを発表
できない時期があったり、さらにメムバーの脱退も相次いで
1996年に解散。それから15年後の出来事が描かれる。
そのバンドを追ったドキュメンタリーだが、メドウズ監督は
元々がバンドのファンだったそうで、その監督の目が現在の
バンドを追いかけ、さらにアーカイヴ映像で過去の日々が描
かれる。ただしその描き方はあくまでファンの目線であり、
それはある種の慈愛に溢れた作品になっている。
このため一般のファンは立ち入れない楽屋の映像では、あく
まで傍観者の目に徹するし、また急遽開かれたライヴの様子
では、間に合わなかったファンの姿に眼が向けられていたり
もしている。
しかしその一方では、ライヴ途中でメムバーの1人が帰って
しまった出来事でその原因などを深く追求しないのは、多少
物足りない感じもしてしまうが、ファンにはこれで充分とい
うところなのだろうか。
なお個人的には、知人に以前からファンの女性がいて、彼女
は多分2011年にはイギリスまで復活を目撃しに行ったと思わ
れるが、バンドには日本にも熱狂的なファンが多いようだ。
そんな日本のファンには、映画のエンドロールに添えられた
メムバーの日本での様子も貴重と思われる。
ここに特別な映像が綴られたのには、ワールドツアーに日本
まで同行した監督の心情が反映されているとも思われ、そん
な日本のファンの熱意がこのドキュメンタリーを締め括って
いるものだ。ファンには必見の作品と言えるだろう。
ファンなら当然観に行くと思うが。ファンでなくても熱気に
溢れたコンサートの模様などは、臨場感も充分に楽しめた作
品だ。
09月03日(火)
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