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On the Production
by 井口健二
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■オン・ザ・ロード、素敵な相棒、風切羽、シェフ、恋のベビーカー大作戦、ジェリーフィッシュ、オーガストウォーズ、ワイルド・スピード6
脚本はクリストファー・D・フォード。2人はニューヨーク
大学の出身で、共同で制作プロダクションを設立してCMな
どを手掛けてきたそうだ。
そんな2人の映画デビュー作となっているものだが、物語は
老人問題や合理主義の問題を取り上げて社会性も有り、そこ
にロボット介護を介在させるアイデアは斬新で面白いと感じ
られた。
しかもロボットの抱える問題点は、これはいわゆるロボット
物の中でも新しい視点と言えるもので、これはなるほどと納
得した。しかしそれに対する解決が安易というか多少呆気な
く、ここはもう少し主人公に悩んで欲しいとも思えた。
もちろんそこまでに葛藤はあるのだが、それが物語の中で充
分に描かれていない。これではSFファン以外の観客には、
脚本家及び監督の真意が伝え切れないのではないかとも感じ
られた。
ロバート・A・ハイラインの『月は無慈悲な夜の女王』など
SFの小説では定番の結末ではあるが、この切なさをもっと
しっかりと描いて欲しかったものだ。

『風切羽』
2010年の長編デビュー作『こもれび』が上海国際映画祭など
に正式招待され、本作では韓国・全州国際映画祭の新人監督
部門で第2位にあたる作品賞を受賞した小澤雅人監督作品。
主人公は、実の母親や姉にも疎まれている少女。過去の虐待
の事実から現在は児童養護施設に措置されているようだ。そ
の身体には虐待の跡も残っている。しかしそれでも家族との
絆の切れない少女は、施設を抜け出し家族に会いに行く。
そして将来に夢を抱く少女はアルバイトをして貯金してもい
たが、訪ねてきた母親とは別居中の父親はそこにも目をつけ
る。そんな少女が街角で1人の少年と出会う。その少年は昔
住んでいたその地区で自分の過去を探していた。
こうして、共に自分の拠り所を求める2人は、何となく行動
を共にするようになるが…。やがてそれは重大な事件へと繋
がって行く。
監督は以前の作品でも、社会に馴染めない不器用な人たちを
テーマにしていたそうだが、本作ではその根源と言えるかも
しれない児童虐待を取り上げ、さらにこれを3部作として描
いて行く計画だそうだ。
出演は、2011年3月紹介『大木家のたのしい旅行』に出てい
たという秋月三佳、2012年『仮面ライダーウィザード』にレ
ギュラー出演した戸塚純貴。他に、川上麻衣子、五大路子、
重松収、石田信之、佐藤太、寺田有希らが脇を固めている。
題名は、鳥の翼の一部で飛翔に不可欠とされるもの。ペット
として飼われている鳥ではその部分を切除して飛べないよう
にすることも行われており、映画ではその切除のシーンも繰
り返し描写される。また映画のチラシには「歪んだ愛と暴力
が、私の羽を切り落とした」と記載されている。
しかし映画の中でその具体的な説明はなかったようで、こと
さら衝撃的なそのシーンが印象に残るが、それも監督の目的
なのだろう。その他にも印象的な演出や構成が散見され、な
かなか巧みに作られた作品に感じた。これなら映画祭の受賞
も頷けるものだ。
そして物語には、児童虐待を受けている少女たち(少年側に
は具体的な描写はないが、容易にそれを想像させる)への同
情ではない優しい眼差しが溢れ、この作品の意図を見事に描
いていると感じられた。
公開は6月22日から。東京は池袋のシネマ・ロサ。その他
全国は、愛知県を中心に青森から小倉まで展開するコロナシ
ネマワールドというチェーンで公開されるようだ。

『シェフ!〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜』
“Comme un chef”
昨年12月に日本公開された作品だが、その折に僕は試写を観
られなかったもので、今度はそのDVD&Blu-rayでのリリース
が決まり、サンプル版を観せてもらった。
物語は、自分の料理に絶対の自信を持ち、そのため客や店の
オーナーと対立して職を失い続けているシェフ。しかし同棲
中の女性が妊娠し、我が子の誕生が近づいてやむ無く別の職
に就くことになる。
ところがその職場で厨房を外から覗いた主人公は、思わずそ

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05月30日(木)
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