ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459994hit]
■ザ・タワー、愛のあしあと、NY恋人たちの2日間、アート・オブ・ラップ、ギャツビー、コンプライアンス、ごみアート、特別映像(AE,LR,MU)
正直に言ってかなり壮絶な女性の物語が描かれ、それはある
種の現代を象徴しているようにも映るが、それは一方で今年
1月紹介『アンナ・カレーニナ』にも通じる女性の姿でもあ
る。作品はそんな古典文学のような雰囲気も漂わせながら描
かれている。
脚本と監督は、2006年6月紹介『ママン』などのクリストフ
・オノレ。作品はミュージカル仕立てで、60年代以降の様々
な音楽や『シェルブールの雨傘』にオマージュを捧げている
ようなシーンも描きつつ、各時代のファッションも見事に再
現しながら構成されている。
共演には、歌手のミシェル・デルペッシュや映画監督のミロ
ス・フォアマンなど、これもカンヌのクロージングに相応し
い多彩な顔ぶれが登場している。
なお作品は7月5日にDVD&ブルーレイで発売されるもの
で、今回はそのサンプル版で鑑賞したが、東京での特別上映
が6月28日から新宿K's cinemaで決定している。因に上映は
フィルムで行われるようだ。
『ニューヨーク、恋人たちの2日間』
“2 Days in New York”
2008年3月紹介『パリ、恋人たちの2日間』のジュリー・デ
ルピー製作、脚本、監督、主演、編集、音楽による続編。
2006年製作の作品は、イタリア旅行帰りにパリの妻の実家に
寄って2日間を過ごすことになったアメリカ人とフランス人
の夫婦の姿を描いたもので、文化の違いなどがかなり辛辣な
形で描かれていた。
そして本作はその6年後。6年前の夫婦は別離し、フランス
人の女性は1人息子を引き取ってニューヨークで暮らしてい
る。そしてカメラマンの彼女は生活資金を稼ぐための個展の
準備を進めていた。
そんな彼女には人気DJの彼氏がいて、彼の1人娘も含めた
4人は順調な都会生活を送っていた。ところがそこに彼女の
個展を観に彼女の父親と妹、それに妹の恋人で主人公の元彼
の男がフランスからやってくる。
こうして英語とフランス語が入り混じり、文化や人間性のぶ
つかり合うとんでもない2日間が幕を開けるが…。映画の後
半にはちょっと意外なゲストも登場して、前作と同様の見事
に本音を突いたコメディが展開される。
共演は、2006年3月紹介『ロンゲスト・ヤード』や『マダガ
スカル』シリーズ(声優)などのクリス・ロック。他に監督
の実父のアルベール・デルピー、2006年12月紹介『マリー・
アントワネット』に出演のアレクシア・ランドー、アレック
ス・マチュら『パリ』にも出演の顔ぶれが再登場している。
デルピーの監督作品では、2009年3月に『伯爵夫人』と今年
3月に『スカイラブ』という作品も紹介しているが、あまり
に強烈だった前々作と、かなり実験的な前作に比べると、本
作はそれなりに理解できる作品になっている。
ただしデルピーは、秩序が整って清潔感の漂う現代のニュー
ヨークより、危険だった昔のニューヨークの方が好きなのだ
そうで、言われてみればそんな雰囲気も各所に伺える感じの
作品にもなっている。
とは言え、現代のニューヨークを観光的に楽しめる作品にも
なっており、その辺はデルピーの長年住んでいる大都会への
愛情も感じられる作品だ。
『ロード・トゥ・ライオン』“Reincarnated”
『アート・オブ・ラップ』
“Something from Nothing: The Art of Rap”
現代アメリカの音楽シーンを巡る2本のドキュメンタリー。
前者は、2011年10月紹介『ザ☆ビッグバン!!』などの俳優と
しても知られるラッパーのスヌープ・ドッグが、レゲエ・ミ
ュージシャンのスヌープ・ライオンに転生するまでを描く。
それはレゲエの本場ジャマイカへの旅に始まり、親友の死な
ど様々な出来事も描かれる。
ただしジャマイカのレゲエについては、2006年6月紹介の映
画『ワン・ラブ』や2008年6月紹介『MADE IN JAMAICA』、
さらに2007年7月紹介『ルーツ・タイム』などでも知ってい
たところで、特に新たな知見が得られるものでもなく、むし
ろスヌープ本人の内面的な部分に注目されるが、それもさほ
ど深く描かれたものでもない。
[5]続きを読む
05月20日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る