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On the Production
by 井口健二
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■箱入り息子の恋、はじまりのみち、殺人の告白、モスダイアリー、オブリビオン(追記)、クソすばらしいこの世界、キス我慢、シャニダール
その物語からの脚本と監督は、2002年の『クレヨンしんちゃ
ん』で第6回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞
などを受賞したアニメーション監督の原恵一。実写作品は初
めてだが、1959年生まれのベテランが見事な作品を作り上げ
ている。
出演は、木下恵介役に2011年10月紹介『永遠の僕たち』など
の加瀬亮、兄役にユースケ・サンタマリア、便利屋役に昨年
11月紹介『みなさん、さようなら』などの濱田岳、そして母
親役に田中裕子。
他に、光石研、濱田マリ、大杉漣、宮浮おい、山下リオ、
斉木しげるらが脇を固めている。
また作品の中には、問題にされた映画『陸軍』のエンディン
グシーンがほぼ完全に収められており、母親役の田中絹代が
スクリーンに映し出される。その息子を見送る母親の姿は、
珠玉とも言える素晴らしい演出で描かれており、本作の原監
督には申し訳ないが、このシーンのためだけでもこの映画を
観る価値があると言えるものだ。

『殺人の告白』“내가 살인범이다”
連続殺人犯が、その公訴時効後に手記を発表するという正に
現代を象徴するかのような韓国映画。
物語の主人公は、その事件を長年追ってきた刑事。一度は犯
人を追い詰めその身体に銃弾も撃ち込んだが、その身柄の確
保には至らなかった。そんな主人公は公訴時効の日をやりき
れない思いで迎えるが。
それから2年後、衝撃的なニュースが主人公に届く。それは
連続殺人事件の犯人と自称する男が告白本を出版するという
ものだった。そしてその告白本には真犯人にしか知りえない
内容が記され、本は瞬く間にベストセラーとなる。
しかし主人公には、その名乗り出た男を真犯人と認めること
に違和感があった。そしてその男との対立を繰り返す主人公
もまた時の人へとなって行く。それはやがてテレビ番組での
対決へとエスカレートして行くが…
これも劇場型の犯罪と言えるのかな。マスコミを巧みに利用
して売名し、それによって自己の目的を達成して行く。そこ
にインターネットのことをあまり描かないのは、却って見識
のようにも感じられる作品だった。
出演は、2010年10月紹介『黒く濁る村』などのチョン・ジェ
ヨンと本作が映画デビューのパク・シフ。パクはテレビで活
躍していたようだが、若いのに堂々とした立ち居振る舞いが
見事に本作に生きていた。
他に、2011年5月に紹介した1980年の作品『風吹く良き日』
に出演のキム・ヨンエ、2008年2月紹介『妻の愛人に会う』
などのチョ・ウンジ、2011年2月紹介『ビー・デビル』など
のオ・ヨン、昨年7月紹介『トガニ 幼き瞳の告発』などの
チャン・グァンらが脇を固めている。
物語は正にフィクションという感じのものだが、それが荒唐
無稽にならないように巧みに描かれている。最近日本映画で
も、大嘘という感じのアクション映画があったが、日本映画
がそのリアルさまでも消してしまっていたのに対して、本作
は実に巧みにそのリアルさを保っている。
それは日本映画のように物量や大掛かりな撮影をしているも
のではないが、映画の面白さが決してそんな無駄に金を掛け
たシーンによるものではないことを、本作は見事に証明して
いる感じの作品だった。

『モスダイアリー』“The Moth Diaries”
古風な女子寄宿寮を舞台にしたゴシックロマン風の物語。
主人公は、父親の自殺を目撃してしまった女学生。その心の
傷は癒えていないものの、何とか2学年に進級した寄宿寮に
戻ってくる。そこには親友と呼べる同級生もいた。
ところがそこに新たにヨーロッパから来た転校生が入ってく
る。そしてそのミステリアスな転校生の出現によって、寮の
雰囲気も徐々に変化して行く。
やがて英語の授業で「女吸血鬼カーミラ」の物語を読んだ主
人公は、転校生の姿にある疑問を感じ始めるが…。それが契
機のように主人公の周囲で不審な事故が頻発し始める。
脚本と監督は、1996年『アンディ・ウォーホルを撃った女』
などのメアリー・ハロン。なお脚本はレイチェル・クライン

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05月10日(金)
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