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On the Production
by 井口健二
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■桃まつり−なみだ−、スカイラブ、グッバイ・ファーストラブ、ベルヴィル・トーキョー、モンスター、闇の帝王DON、命ある限り、YES/NO
“参のなみだ”
『貧血』
2010年1月の『桃まつり』の中で『FALLING』という作品を
紹介した加藤麻矢監督の新作。実は本作は2010年の時に少し
物足りないと書いた作品の続編になっている。出演は前作と
同じく春山怜那と山田ゆり。
物語は、童貞の血しか受け付けない女吸血鬼を描いたもの。
登場する2人の女吸血鬼の内、1人は誰の血でも良いが、も
う1人は…そこに初心なカップルが現れ、その男子を巡って
ドタバタが始まる。
設定にはおやおやと思い上映後に監督に聞いたら、1974年の
『処女の生き血』は好きな作品とのこと。これはかなりのマ
ニアだ。シリーズ第3話も期待したいが、この監督には別の
作品も観たくなった。
『葬式の朝』
東京芸術大学大学院映像研究科映画専攻修了という糠塚まり
や監督の作品。出演は、共に映画は初めての丸井美登子と朝
倉ふゆな。丸井は監督と中学時代からの同級生で素人だが、
朝倉は『アニー』の主演も取っているそうだ。
主人公は祖父の葬儀で実家に帰ってきた女性。家に帰っても
お帰りとは言ってもらえず、かと言って客としても扱っては
もらえない。そして空腹の彼女だが、やれ着替えなど指図さ
れ、出てきた食べ物も従姉妹に取られてしまう。
そして空腹のままの深夜、線香を替えにきた彼女はふと柩の
蓋を開けてしまう。僕自身3年ほど前に父を亡くして、主人
公の思いはかなり伝わってきた気がした。何が良いというこ
ともないが巧みな作品と言える。
『東京ハロウィンナイト』
カリフォルニア芸術大学大学院で映画製作を学んだ岡田まり
監督の作品。出演は、昨年の福岡インディペンデント映画祭
の受賞作『あの素晴らしい愛をもう一度』に主演のきむらゆ
きと『百獣戦隊ガオレンジャー』でブルー役の柴木丈瑠。
田舎の田圃に立つ女カカシが、太陽にお願いして一夜だけ動
ける人間にしてもらい、ハロウィンで浮かれる都会にやって
来る。そこでお見合いパーティに参加した彼女は、ゾンビ男
に恋心を抱くが…
開幕が舞台面の設定で、先に『アンナ・カレーニナ』を観た
後でそれは微笑ましかった。脳みそが食べたいゾンビと、脳
みそのないカカシという組み合わせにも、女性監督らしい優
しさが感じられた。
全作品を観せてもらったが、全体を通じて完成度はかなり高
いものになっている。それが小さく纏まってしまっては面白
くないが、今回もヴァラエティに富んだ作品に出会えたのは
嬉しかった。
公開は、5月11日から24日まで東京渋谷ユーロスペースにて
レイトロードショウされる。

「フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ」
昨年イギリスのガーディアン紙や、フランスのカイエ・デュ
・シネマ誌も特集を組んだという現代フランスの女性監督に
よる作品3本が特集上映される。

『スカイラブ』“Le Skylab”
女優で、2009年3月に『伯爵夫人』も紹介しているジュリー
・デルピー監督の新作。前作はかなり強烈だったが、今回も
不思議な作品を観せてくれる。
物語の背景は、宇宙ステーション(スカイラブ)の落下が問
題になっている1979年夏。主人公の少女は、祖母の誕生日を
祝うためにブルターニュの田舎を訪れている。そこには大勢
の親戚も集まってくるが…
監督本人が「オーソドックスなストーリー展開には興味がな
い」と語っているもので、取り立てて何が起きるでもない物
語の中で、人間の様々な側面が描かれる。そこには女性なら
ではの視点もあって、いろいろと興味を惹かれた。
出演はデルピーの他に、2011年1月紹介『ゲンスブールと女
たち』のエリック・エルモスニーノ、2009年1月紹介『ベル
サイユの子』などのオール・アティカ、『愛、アムール』の
エマニュエル・リヴァらが共演している。

『グッバイ・ファーストラブ』“Un amour de jeunesse”
2009年の『あの夏の子供たち』でカンヌ国際映画祭「ある視
点部門」審査員特別賞を受賞しているミア・ハンセン=ラヴ
監督の新作。
初めは15歳だった少女を主人公に、17歳の少年と恋に落ちた

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03月10日(日)
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