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On the Production
by 井口健二
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■コズモポリス、野蛮なやつら、ふたたびの加奈子、コドモ警察、食卓の肖像、フリア/よみがえり少女、孤独な天使たち、シュガーマン
くれなかった。
出演は、1月紹介『アンナ・カレーニナ』にも出ていたアー
ロン・テイラー=ジョンスンと、昨年4月紹介『バトルシッ
プ』などのテイラー・キッチュ、そして2011年7月紹介『グ
リーン・ランタン』などのブレイク・ライブリー。
さらにベニチオ・デル・トロ、サルマ・ハエック、ジョン・
トラヴォルタ、エミール・ハーシュらが脇を固めている。
上映時間は2時間9分の作品だが、終始緊張感の連続でそれ
は映画の醍醐味を味あわせてくれる。しかもインターネット
なども駆使した展開もスマートで、正にエンターテインメン
トという感じがした。
南カリフォルニアからメキシコまでの砂漠やリゾート海岸な
ど景色もふんだんに登場し、その明るい雰囲気の中で凶悪な
犯罪や醜悪な人間模様が描かれる。しかしその中にちょっと
救いが描かれているのも、魅力的な作品だった。
『桜、ふたたびの加奈子』
2時間ドラマなどに多く作品を提供しているミステリー作家
の新津きよみが、2000年にハルキ・ホラー文庫から発表した
原作を、2010年『飯と乙女』でモスクワ国際映画祭・最優秀
アジア映画賞を受賞した栗村実監督が映画化した作品。
小学校の入学式の日にふとしたことで我が子を失ってしまっ
た女性が、その死を直視できずに我が子の影を追い求め、知
り合った女性が生んだ子供を我が子の生まれ変わりと信じ込
んでしまう姿を描いて行く。
それは夫にも理解されず、周囲の人々の理解も得られないの
だが、彼女は少しずつその証拠を見出して行く。果たしてそ
の赤ん坊は本当に我が子の生まれ変わりなのか。そしてその
確証を得るため、彼女はある行動に出るが…。
これに私生児を生んだ女子高校生の話や、その生徒を見守る
教師の話などが絡んで、生まれ変わりを信じる女性の数奇な
物語が展開されて行く。
出演は広末涼子、稲垣吾郎。この2人が子供を失った夫婦を
演じ、さらに2009年2月紹介『GOEMON』などの福田麻由子、
ジャニーズJr.の高田翔、吉岡麻由子、江波杏子らが脇を固
めている。
実は試写の前に少し内容を知ってしまって、見るからにお涙
頂戴になりそうな設定には、個人的に多少観るのをためらう
気持ちも生じる作品だった。しかし観終わっての感想で言う
と、あまりベタベタと感傷的に描くことはせず、むしろファ
ンタシーとして的確に捉えられた作品と言えそうだ。
それは最近の日本の小説にありがちな、多少あざといくらい
にテーマを積み重ねて、これでもかという感じで観客に迫っ
てくる物語ではある。しかしそれを映像化に当っては脚本も
手掛けた監督が巧みにいなして、見事に落ち着きを持った作
品に仕上げていた。その感性は評価したい。
また、いつ何が起きるのだという緊張感を孕んだ前半の描き
方や桜の花びらを使ったシーンの巧さ、さらに水面に浮かぶ
落ち葉などで時間経過を描く演出も、定番の手法とは言いな
がらも最近の日本映画ではなかなか味わえない映画らしさを
感じさせた。
因に栗村監督は、日本の大学を出た後に渡米し、ハリウッド
にあるカレッジの映画学科を修了したそうで、そんな感覚が
本作にも反映されているのかもしれない。また俯瞰シーンの
撮影には、ハリウッドからそのためのスタッフを呼んだりし
ているそうだ。
『コドモ警察』
TBS系列の深夜ドラマ枠で2012年4月−6月に放送された
パロディ刑事ドラマの映画版。
横浜を舞台に、世界征服を目論む犯罪組織を追う神奈川県警
大黒警察署特殊捜査課の刑事たちの活躍を描く。と言っても
この刑事たちは、犯罪組織の罠に嵌って吸わされた特殊ガス
により子供の姿とさせられており、その子供の姿と大人の刑
事としての活動とのギャップがパロディと描かれている。
そして今回の事件は、犯罪組織「レッドヴィーナス」を名告
る凶悪事件が相次ぐ一方で、その事件の有様が組織の犯行に
そぐわないと判断した特殊捜査課と本庁との確執。さらに来
日した某国大統領の警護を巡る対立などが描かれ、組織を追
い詰めて行く刑事たちの活躍が描かれる。
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02月20日(水)
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