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On the Production
by 井口健二
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■ベラミ、さよならドビュッシー、サイレント・ハウス、カルメン故郷に帰る、アルバート氏の人生、君と歩く世界、チチを撮りに、PARKER
これは小説を超えて映画になっているものだ。
脚本と監督は俳優でもある利重剛。監督としては2002年以来
10年ぶりの作品のようだ。なお共同脚本として、テレビ『新
参者』などを手掛け、ミュージシャンでもある牧野圭祐が参
加している。
主演は、今年5月紹介『スープ〜生まれ変わりの物語〜』や
9月紹介『BUNGO』の一篇にも主演している橋本愛。
そして岬役には、テレビ『のだめカンタービレ』の玉木宏や
2006年12月紹介『神童』で松山ケンイチの演奏の吹き替えを
担当した清塚信也。本格的な演技はデビュー作のはずだが、
なかなかの演技力で良い雰囲気を出していた。
他にミッキー・カーチス、吉沢悠、柳憂怜、熊谷真実、相築
あきこ、戸田恵子、三ツ矢雄二らが脇を固めている。
クライマックスを含めてピアノ演奏が数多く聞ける作品で、
そこでは清塚の演奏も披露される。その中で僕にはリハビリ
曲として登場する「熊蜂の飛行」の、途中から打楽器の入る
アレンジが感動的で気に入った。
原作には続編もあるようだが、それも楽しみたいものだ。
『サイレント・ハウス』“Silent House”
今年11月紹介『レッド・ライト』と『マーサ、あるいはマー
シー・メイ』に続けて出演のエリザベス・オルセンが主演す
るサスペンス作品。
物語は、湖畔の邸宅に父娘がやって来るところから始まる。
その邸宅は廃屋というほどではないが、鼠が配線を齧ったと
かで屋内は手持ちのライトで照らすしかない。そして親子は
その邸宅の売却準備にやって来たようだ。
そこに父親の弟も現れ、地下の様子なども見るが、やがて弟
は立ち去り、親子は一夜をその邸宅で明かすための準備を始
める。ところがそこに階上から何者かのいる気配が伝わって
くる。さらに謎めいたポラロイド写真が散蒔かれる。
オリジナルはウルグアイで製作された作品で、本作はそのハ
リウッドリメイク。南米産のホラーサスペンスも何本か観て
いるが、特にスペイン語圏では需要があるのかな。ただし本
国のスペインで作られている作品ほどには、特に地域性が感
じられるものではない。もちろん本作はリメイクだが…。
共演は、2007年4月紹介『ゾディアック』に出演のアダム・
トレーズと、2009年11月紹介『ジュリー&ジュリア』に出演
のエリック・シェーファー・スティーヴンス。他に、ジュリ
ア・テイラー・ロスとヘイリー・マーフィという2人の若手
女優が出演している。
監督は、2003年の『オープン・ウォーター』が話題を呼んだ
クリス・ケンティスとローラ・ラウのコンビが担当。2人は
製作と脚本、撮影、編集も兼ねているようだ。ただし撮影監
督には、2009年4月紹介『マン・オン・ワイヤー』などを手
掛けたイゴール・マルティノヴィッチが参加している。
撮影はワンテイク風に作られているが、同様のオリジナルも
撮影には4日間かけられているそうで、本作ではさらに明確
に編集点は判る。制作者もそれは意図していないのだろう。
その点は2008年12月紹介『PVC−1[余命85分]』など
と異なるものだ。
しかし本作でも、主人公の動きなどはかなりの長回しで、し
かも照明は手持ちのライトだけという状況。これには長回し
だけでないヴィデオカメラの特性も活かされている。因に、
撮影はCanon EOS 5D Mark IIで行われており、これは2010年
製作のオリジナル“La casa muda”と同じのようだ。
なお本作は、2013年3月2日から東京渋谷のヒューマントラ
ストシネマにて開催される「渋谷ミッドナイト・マッドネス
2013」の1本として上映されるもので、作品は全部で6本、
残りも順次紹介する予定だ。
『カルメン故郷に帰る』
1951年製作、木下恵介監督による日本初の総天然色映画が、
木下監督生誕100周年を期してディジタルリマスターされ、
Blu-ray及びDVDで発売される作品を特別上映会で観させ
て貰った。
物語は、浅間山を臨む信州の山村に、東京に出て行った娘が
帰ってくるというもの。その娘は東京で芸術家をして成功を
収めているというのだが…。
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12月23日(日)
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