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On the Production
by 井口健二
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■サイド・バイ・S、ひまわりと子犬の…、悪人に平穏なし、次郎は鮨の…、さなぎ、エンド・オブ・ザ・W、ジャッジ・D、いのちがいちばん…
結末は…まあかなり甘いものだが、一応は実話に基いている
もののようだ。ただその中にかなり厳しい現実も明確に示さ
れていて、それは観ているものにも突き付けられる。その現
実は、子犬の映像の可愛らしさだけに惹かれて観に行った観
客には、かなりショックになるものかもしれない。
そんな現実もしっかり伝える作品になっていた。
出演は、堺雅人、中谷美紀、でんでん、お笑いコンビ「オー
ドリー」の若林正恭、吉行和子。他に夏八木勲、草村礼子、
左時枝、檀れい、子役の近藤里沙、藤本哉汰、そして小林稔
侍らが脇を固めている。
脚本と監督は、山田洋次監督1993年『学校』に参加以降、山
田組の助監督を務め、脚本も手掛けて2006年9月紹介『武士
の一分』などで日本アカデミー賞脚本賞も受賞している平松
恵美子。監督はデビュー作のようだ。なお脚本は、2007年に
「奇跡の母子犬」という動画を配信して話題になった宮崎県
の動物保護活動家・山下由美の原作に基いている。
もちろん本作でも救われるのはひまわりの母子犬だけで、そ
の生き長らえる20日の間にも次々に処分は行われている訳だ
が、プレス資料によると、平成21年度と22年度の統計で犬の
収容数に対する返還・譲渡率は少し伸びているそうで、本作
に登場する人たちの活動は少しずつ報われているようだ。

『悪人に平穏なし』“No habrá paz para los malvados”
2012年のゴヤ賞(スペイン・アカデミー賞)で作品、監督、
主演男優など主要6部門の受賞に輝いた現代スペインが舞台
のフィルム・ノアール作品。
主人公は荒んだ雰囲気の男性。その男性は深夜のマドリード
を彷徨した末にとある閉店後のバーに入り込む。そして警官
バッジを振りかざして酒を要求した挙句に、ふとしたことか
ら発砲し、店主と従業員を射殺してしまう。
ところが証拠隠滅のため、防犯カメラの映像をチェックした
男性は彼の犯行に目撃者のいたことを知る。そしてその目撃
者の跡を追い始めた男性は、その陰に潜む巨大な陰謀を追う
ことになってしまうが…。
一方、警察は周囲の映像から犯人がその男性であることを疑
い始めていた。
脚本と監督は、1999年ロマン・ポランスキー監督、ジョニー
・デップ主演で映画化された『ナインスゲート』の脚本にも
起用されたエンリケ・ウルピス。また本作で主演賞を受賞し
たホセ・コロナドは、1987年から多くの映画に出演するベテ
ラン脇役のようだ。
本作の物語は、2004年にマドリードで発生し、191人の死者
を出した同時多発テロ事件からインスパイアされたものとの
こと。ただし監督の言によると、その事件の真相は未だ当局
からは明らかにしていないのだそうで、本作はそんな事件の
謎も追求する作品になっているようだ。
それで映画を観ていると、主人公の男性の立場が今一つ明確
でない感じで、偶然に事件に遭遇するというのは何とも釈然
としない。むしろ確信的に事件に入り込んでいっているよう
にも見えるが、その辺は脚本も執筆した監督自身がぼやかし
ているようにも取れる。それも微妙な作品だ。
とは言え、深夜のマドリードの風景からクライマックスの壮
絶な銃撃戦とその結末。さらに最後に映される映像が示す真
の意味など、その描くものの深さは尋常ではない作品のよう
にも感じられる。これはスペインの観客が観たら僕ら以上に
いろいろなことを考えてしまう作品なのだろう。
少なくともテロ事件は起きたのだから。

『次郎は鮨の夢を見る』“Jiro Dreams of Sushi”
ミシュランガイド東京にて6年連続三つ星を獲得し、87歳で
現役、「世界最高齢の三ツ星シェフ」としてギネスにも登録
されている東京数寄屋橋の鮨店「すきやばし次郎」の店主・
小野二郎の姿を追ったドキュメンタリー。
店主は1925年の静岡県生まれ、7歳の時に地元の料理店で奉
公を始め、その後に東京に出て26歳で鮨職人となり、40歳で
独立して「すきやばし次郎」を開店。江戸前鮨の伝統に新風
を吹き込んだ独創性で、1994年にはヘラルド・トリビューン

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12月16日(日)
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