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On the Production
by 井口健二
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■FASHION STORY、アウトレイジ2、ヴァンパイア、ロラックスおじさん、One Night One Love、最終目的地、ゾンビ革命、ハーバー・クライシス
出演は、三浦友和、加瀬亮、中尾彬、名高達男、光石研、小
日向文世らの前作の生き残り組に加え、神山繁、西田敏行、
塩見三省、高橋克典、松重豊。さらに桐谷健太、新井浩文ら
が登場する。いずれも現在日本映画で主役を務める面々が、
ヤクザ社会のアンサンブル劇を演じるものだ。
前作は、北野監督がヴァイオレンスに帰ってきたということ
でも話題になった作品だが、本作もその点はたっぷりと描か
れている。ただそこに走ったためか、殺人があまりに安易に
行われて、その点は少し気になった。
しかし安易に人が殺されるのは、現代社会にも通じている感
じかな。脚本・編集も兼る北野監督のメッセージは、そんな
ところにもあるのかもしれない。でも本作では、そこにもう
少し人間的なドラマがあっても良いかなという気分はした。
片岡の動きにしても、そこにもう一つ裏があっても良かった
のではないか。そのもう一つ歯車があれば、さらに面白く描
けたのではないか。そんな感じもしたものだ。

『ヴァンパイア』“Vampire”
2009年12月紹介『ニューヨーク、アイラブユー』ではオーラ
ンド・ブルーム、クリスティーナ・リッチ共演の一編を監督
した岩井俊二監督が、カナダで撮影した最新作。
題名の通り吸血鬼を描いた現代を背景にした作品だが、登場
するのは伝説のような不死の存在ではなく、単に吸血の性癖
を持つ男の物語。彼は自殺勧誘サイトで自殺希望者を探し、
そのような人物を巧みに誘っては四肢の血管にチューブを繋
いで、その全血液を抜き取っていた。
そんな男は高校の生物教師で、ヴァンパイアを信奉する集団
のパーティなどにも参加はするが、今ひとつメムバーの行動
には違和感を感じている。そして彼が目を付けた集団自殺グ
ループに参加した日、彼の教え子で日本からの留学生が自殺
を図ったことから彼の人生が動き出す。
出演は、2006年3月紹介『トランスアメリカ』などのケヴィ
ン・ゼガーズ。2002年『クジラの島の少女』で史上最年少の
オスカー主演女優賞ノミネーターになったケイシャ・キャッ
スル=ヒューズ。そして蒼井優。
さらに2009年『ウルヴァリン』のアデレイド・クレメンス、
2003年8月紹介『死ぬまでにしたい10のこと』などのアマ
ンダ・プラマー、2009年2月紹介『ストリートファイター/
レジェンド・オブ・チュンリー』でチュンリーを演じたクリ
スティン・クルックらが脇を固めている。
映画では、前半が自殺テーマのようにも感じられて多少苛つ
いたが、全体のテーマは人間の孤独を描いたもので、そこか
らの展開には前向きなものも感じられた。そしてそんな物語
が、岩井美学とも言われる静かな映像の中で描かれてゆく作
品だ。
因に脚本も兼ねる岩井監督は、当初は自殺者と殺人者という
単純な図式の作品を構想していたそうだが、ちょうど企画を
スタートした頃にその通りの事件が現実に起き、企画のオリ
ジナリティが疑われて頓挫したとのこと。しかしそこに吸血
というテーマを加えて実現したとのことだ。
しかもそれが、現在ブームになっているヴァンパイアものに
一石を投じる作品にもなったことは愉快なところだ。

『ロラックスおじさんの秘密の種』“The Lorax”
2000年にジム・キャリー主演で映画化された『グリンチ』な
どのドクター・スース原作絵本の映画化。
物語の主人公は、スニードヴィルという壁で囲まれた町に住
むテッドという少年。彼の住む町にはカラフルな家などが立
ち並ぶが、どこか変だ。それもそのはず、その街には草木の
代わりにプラスティックの造花が植えられ、空気はボトルで
配達されるのだ。
それでも彼は、今までは何の疑問も感じずに暮らしていた。
ところがある日、テッドは憧れの女性から「本物の木が見た
い」と相談される。そして本物の木を探しに出かけたテッド
は、町の成立に隠された秘密を知ってしまうのだが…。果た
してテッドは本物の木を復活させることができるのか?
監督は、2010年『怪盗グルーの月泥棒』を全米年間第10位の

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08月26日(日)
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