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On the Production
by 井口健二
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■B・レガシー、フタバから遠く…、ビラルの世界、情熱のピアニズム、リヴィッド、恋と映画とウッディ・アレン、UVERworld、中国映画の全貌
そんな今まで自分が言いたかったことの証明がこの作品には
見事に描かれていた。
作品は昨年11月、福島原発事故収束安全宣言が出されたのを
機に纏められたものだが、その時点で避難命令は解除されて
おらず除染作業なども行われていない。さらには町長自身の
被爆測定すら行われてはいなかった。
被災前の双葉町は風光明媚な場所だったようだ。しかしその
故郷に住民たちが戻れるのはいつの日か。もしかしたらその
日は永遠に訪れないのかもしれない。弱者を切り捨てる、こ
れが日本の原子力政策の実態ということだ。
監督は、2009年9月に『谷中暮色』を紹介している舩橋淳。
今回は外連もなくストレートに綴られた作品だった。

『ビラルの世界』“بلال‎/Bilal”
2009年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で「アジア千波万
波奨励賞」及び「コミュニティシネマ賞」をダブル受賞した
作品。
インド西部の大都市コルカタのスラム街で、盲目の両親と共
に暮らす3歳の少年の姿を追ったドキュメンタリー。
監督は、ボランティアをしていた妻の紹介で、当時8ヶ月の
少年に出会う。その時の少年は怪我をして盲目の母親の胸に
ギュッと抱かれていたが、少年は監督に微笑み返し、その手
がそっと母親に触れて監督の存在を知らせたという。
その姿に魅了された監督はその後に何度も少年の家に通い、
家族の了承を得た上で、少年が3歳の時から14ヶ月に亙って
少年とその家族の姿を撮影した。その160時間にも及ぶ映像
素材を1年半以上かけて編集した作品とのことだ。
ここで少年は、3歳児らしいやんちゃな顔を見せる一方で、
両親の目となって健気に手伝いをする姿なども映される。し
かし基本はやんちゃ盛りの少年、狭い家の中を上へ下へと動
き回って一時たりと止まらない。
さらに幼い弟をいじめたり、それで父親に叱られたり、兎に
角、喧騒が彼の周りを取り巻いている感じだ。そしてそんな
一家を見つめる周囲の人々。貧しい中でも深く濃いつながり
が一家を支えている。
監督のソーラヴ・サーランギは、インドの名門映画学校=イ
ンド映画テレビ学院で映画編集を学び、すでにドキュメンタ
リーやフィクションの監督作品とプロデューサーとしても活
躍し、受賞作も多いそうだ。
その作品は、時間をかけてじっくり登場人物たちと向き合う
手法で、繊細な作品に定評があると紹介されている。因に最
新作はNHKなどの製作で、ガンジス川の中洲に暮らす人々
を描いた作品がこの秋にBSで放送予定になっている。
そして本作は、10月に東京はオーディトリウム渋谷で上映、
その後は全国のミニシアター系での公開が予定されている。
多分誰もが元気を与えてもらえる作品。どんなに困難な暮ら
しの中でも、人は生きている…そんな感じの作品だ。
なお原題はアラビア語だが、これはビラルの父親がイスラム
教徒で、その関係で付けられた名前だからのようだ。映画の
巻頭にもこのように表記されていた。

『情熱のピアニズム』“Michel Petrucciani”
1962年フランス生まれ。1999年1月にニューヨークで病死す
るまで36年間を、疾風のごとく駆け抜けた稀代のジャズ・ピ
アニスト、ミシェル・ペトルチアーニの人生を描いたドキュ
メンタリー。
ペトルチアーニは誕生の時、全身の骨が折れた状態で生まれ
てきた。骨形成不全症という遺伝性の病気を持つ彼は、些細
な圧力でも骨が砕けてしまうという得意な体質の持ち主だっ
たのだ。しかし天は彼に2つの贈り物を与える。それは音楽
に対する稀有な才能と、カリスマ的な人格だった。
元々彼の一家は、父親がモダンジャズに傾倒するセミプロの
ミュージシャンで、子供の頃から音楽に浸ていた彼は、3歳
までに主なジャズのメロディを正確に口ずさめたという。そ
して4歳でデューク・エイリントンをテレビで見た彼は、玩
具ではない本物のピアノを両親にねだる。
かくして本物のピアノを手に入れた彼は7歳までに神童であ
ることを証明。一時はクラシックの音楽学校に入学するが、

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08月12日(日)
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