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On the Production
by 井口健二
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■三大映画祭週間、やがて哀しき…、ひみつのアッコちゃん、カルロス、声をかくす人、ナナとカオル2、ふがいない僕は…+Time and Again
来の共演となるようだが、復讐に燃える社長と冷徹なボディ
ガードを息の合ったコンビで演じている。
監督は、トー監督の右腕として数多くの作品の助監督や編集
に携わってきたロー・ウィンチョン。また編集は『強奪のト
ライアングル』などのデヴィッド・リチャードスン、音楽は
『エグザイル』のガイ・ゼラファなどトー監督作品のチーム
が担当している。
この状況でこの展開というのは、まあ有りと言えば有りだと
は思うが、正しく邦題にある通りの「哀しき」物語で、その
シビアな展開には、何とも言えない空しさのようなものも感
じてしまった。それが今の時代に合っていると言われれば正
にその通りだろう。
以上で、今年の「ニュー香港ノワール・フェス」で上映され
る3作品は全て紹介したが、今回の3作品はいずれも主人公
が一般人であったり、警察関係者であるなど、いわゆる黒社
會の陰が見え隠れはするが、それ自体を描いたものではなか
った。これが香港の現状を反映したものなのかどうか、その
辺りにも興味を引かれた。
なお東京での上映は8月11日から9月6日まで、新宿武蔵野
館で連日3本が上映される。上映は各回入れ替え制だが、各
作品のポストカード付き前売鑑賞券は、3本纏めるとさらに
割引になるようだ。

『ひみつのアッコちゃん』
1962年に「りぼん」で連載開始された赤塚不二夫原作マンガ
の実写映画化。同原作からは過去に3度のテレビアニメ化が
あり、今回はその主題歌もフィーチャーした作品となってい
る。
主人公は小学生の女の子。しかし彼女は、呪文によって「な
りたいもの」に変身することのできる「魔法のコンパクト」
を鏡の精から託されていた。その魔法のコンパクトを使って
彼女は大人の世界に潜り込み、人々を幸せにするための大冒
険を繰り広げる。
その主人公が本作で潜入するのは化粧品会社。伝統はあるが
最近の業績は芳しくなく、怪しげな連中による乗っ取りも画
策されている会社を舞台に、小学生の知恵を活かした作戦が
展開される。
子供が大人に変身して、潰れかけた会社を子供のアイデアで
立て直すというお話では、トム・ハンクス主演、1988年『ビ
ッグ』なども思い浮かぶが、当然本作の原作はそれより古い
ものだ。
しかも本作では、そこに会社経営に関わる状況や株主対策、
それにさらなる陰謀なども絡んで、一筋縄では行かない作品
に仕上げられている。それが赤塚マンガかと言われると、多
少悩むところもあるが、現代の映画ということでは認められ
る作品になっていた。
出演は、綾瀬はるか、岡田将生。谷原章介、吹石一恵、塚地
武雅、大杉漣。さらにもたいまさこ、鹿賀丈史、香川照之ら
が脇を固めている。また小学生の主人公を、2008年2月紹介
『あの空をおぼえている』などの吉田里琴が演じていた。
小学生が変身した大人を演じる綾瀬のドジ振りが赤塚マンガ
らしいギャグを振りまくが、綾瀬は少し上擦った発声の台詞
回しで、なかなか巧みにこの役を演じていた。またその他の
変身した大人を演じる役者たちも上手くそれに合わせていた
ようだ。
脚本は、今年6月紹介『闇金ウシジマくん』では脚本・監督
も務めていた山口雅俊。監督は、昨年7月紹介『こちら葛飾
区亀有公演前派出所』の川村泰祐が担当した。
作品は、ギャグに頼ったお笑いではなく、社会的な要素も巧
みに取り入れた案外芯の通った内容に仕上がっていた。この
辺は、監督、脚本家の前作にも通じるところで、彼らには、
これからも注目したい。

『カルロス』“Carlos”
1994年に逮捕された伝説のテロリスト・カルロスの、1973年
から20年に及ぶ活動を描いた3部作、全5時間26分の作品。
ドラマの開幕は、1973年6月28日にパリで起きた親パレスチ
ナ・テロ組織「黒い九月」のリーダーの暗殺。それから程な
くしてカルロスはベイルートのPFLPに現れ、自ら欧州での戦
いに参加したいと申し出る。
こうしてパレスチナ開放を含む世界革命に身を投じたカルロ
スは、欧州での日本赤軍の活動を支援するなど、様々なテロ

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07月29日(日)
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