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On the Production
by 井口健二
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■ダークナイト ライジング、画皮 あやかしの恋、X年後、歌えマチグヮー、マダガスカル3、コンシェンス、セイフ、ペンギン夫婦のつくり方
本作は抜群のドラマ性に溢れた作品だと言える。特に後半の
正体を明かしてからの展開はリアルで素晴らしかった。
出演は、2011年5月紹介『酔拳』などのジョウ・シュンと、
2011年3月紹介『処刑剣』などのヴィッキー・チャオ、さら
に2002年『小さな中国のお針子』などのチェン・クン。他に
2011年12月紹介『関羽』などのスン・リー、『処刑剣』など
のチー・ユー・ウー、ドニー・イェンらが脇を固めている。
妖艶なジョウと、いかにも賢夫人という感じのヴィッキーの
対比バランスが良く、そこに健気で一途なスンが巧みに絡ん
で、正に中国若手女優の競演という作品になっている。さら
にコメディー・リリーフ的な役割も担うドニーもベテランの
味を出していた。
製作・監督は、2011年7月紹介『レジェンド・オブ・フィス
ト』などのゴードン・チャン、アクション監督は2011年3月
紹介『孫文の義士団』などのトン・ワイ。また音楽を、読売
テレビ『デカ☆黒川鈴木』などの藤原いくろうが担当してい
る。
大体この種の話では、退魔師は損な役回りになることが多い
が、本作はそこにもドラマを設けて、それらのほぼ全員が主
役というかなり難しい構成にも挑んでいる。それも成功した
と言える作品だ。
『X年後』
1954年にビキニ環礁で行われたアメリカによる水爆実験をめ
ぐる愛媛県・南海放送製作のドキュメンタリー。
ビキニ環礁での水爆実験に関しては、1954年3月1日実施の
第1回実験で死の灰を浴びた第五福龍丸の被曝が知られるも
のだが、この作品を観て改めて被曝したのはその1隻だけで
はなかったことに気付かされた。
第五福龍丸に関しては、当時子供だった僕の印象は、同船が
規制区域に侵入していたか、たまたま風向きか何かの関係で
死の灰を浴びたものと思わされていた。僕自身は事件当時は
5歳だから、この印象も後日の報道や学習によるものと思う
が、僕らはそう教え込まれていた。しかしその印象の全ては
陰謀だったようだ。
この作品を観た後では当然とも思えるが、当時被曝した船は
第五福龍丸だけではなかったし、死の灰を浴びた漁師もその
乗務員だけではなかった。しかし当時の日本政府は、アメリ
カ政府から送られた200万ドルの保証金だけで、全てに口を
噤んでしまった。
この作品は改めてその事実にスポットライトを当て、明らか
に放射能の影響と思える死亡率やガン発症率の高さを示し、
広島長崎に継ぐ被曝者でありながら何の保障も受けられなか
った漁民たちの姿を描いて行く。
そしてもう1点、28年前にその事実に気付き、以来地道にそ
の調査を続けている高知県の元高校教師の活動を追い、生存
者や遺族もすでに高齢となって、国家的大事であるはずの出
来事が、歴史の闇に消えてしまう恐ろしさも描いている。
なお作品は、今年1月「NNNドキュメント」枠で全国放送
された映像にさらに増補されたもので、その作品が9月15日
から東京は東中野と愛媛でも一般公開される。その後は草の
根的に全国で公開したいとのことで、事件を葬らせないため
の努力が続くようだ。
また試写会で挨拶に立った監督に訊いた話では、作品中の元
高校教師の調査は、書籍化はされているがほとんど知られて
もいないとのこと。一般上映では、そのデータなどをWebに
公開するためのボランティアの募集もしたいそうだ。
『歌えマチグヮー』
沖縄県那覇市にある栄町市場の再興への運動を描いたドキュ
メンタリー。
タイトルの「マチグヮー」というのは琉球方言で「市場」の
ことだそうだ。その舞台となる栄町市場は戦後60年の歴史を
持ち、およそ4000坪のアーケード街の中に120の店が並んで
いる。しかし最近ではシャッターの降りている店舗も増えて
いたようだ。
そしてお決まりの再開発の計画が提案され、歴史ある市場は
消えようとしていた。しかもこの敷地は戦前には沖縄女子師
範及び第一高女のあった場所で、市場の消滅と再開発は、そ
の「ひめゆり」の歴史も消す恐れがあった。
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07月22日(日)
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