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On the Production
by 井口健二
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■闇金ウシジマ、これは映画、ハイザイ、フクシマからの風、ディクテーター、メリダとおそろしの森、コロンビアーナ、フランス映画祭短編集
は単なるプロテストだけではない芸術的な要素も含まれてい
る。その芸術的なものが「イラン国家を脅かす」かどうか、
政府はそれまでも禁止するのか、そんな理不尽さも見事に描
かれている。
なお監督は2011年10月の控訴審でも破れ、現在は自宅軟禁中
だが近々収監の恐れもあるようだ。収監されたら懲役6年、
当然その間は本作のような作品も撮れない訳で、監督の今後
にも不安が募るものだ。

『ハイザイ〜神さまの言うとおり〜』
今年3月開催された沖縄国際映画祭の長編プログラムLaugh
部門に出品された作品。
物語の舞台は、沖縄県北谷町にある観光スポット・デポアイ
ランド。アメリカ西海岸を模したらしいカラフルなショッピ
ングモールの中にある占いショップを起点に、3組の男女の
物語が交錯する。
その1組目は、占いショップで万引きをしようとしたアラサ
ー女性と、親分から占い師を拉致してこいと命じられた若い
組員。女性は万引きを隠すために店主だと嘘を吐き、組員に
拉致されてしまう。そして女性は言葉巧みに組員を懐柔しよ
うとするが…
2組目は、東京からやってきた代理店勤務の男とその彼女。
占いショップが閉店でモールをぶらつく男の頭に小石がぶつ
けられる。それを昔つきあった沖縄女性のサインと思った男
は、気もそぞろになるが…
3組目は高校生の女子2人。その1人がこっくりさんで余命
10年と出てしまい、気分直しにモールに出掛けてきたが、彼
女には10の数字がつきまとう。そして周囲で事件も起き始め
るが…。こんな3組の物語が、相互に微妙に交錯しながら展
開されて行く。
タイトルは、沖縄方言の「ハイサイ」(=挨拶の言葉)と、
「天の配剤」のダブルミーニングのようだが、副題を考える
と後者の意味合いの方が強いようだ。そんなちょっとミラク
ルも入った物語が展開される。
出演は、2011年6月紹介『極道めし』などの落合モトキと、
2010年6月紹介『ちょんまげぷりん』などのともさかりえ。
2010年3月紹介『瞬』に出演の深水元基と、2011年『シャッ
フル』などの吹田早哉佳。
それに沖縄のダンスボーカルユニット「ラッキーカラーズ」
のAlisaとMIINA。他に漫才コンビ笑い飯の西田幸治、本作の
音楽も担当するスネオヘアーらが脇を固めている。
映画の中では、落合とともさかの物語が雨天の乗用車の中と
いうほとんど動きの取れない状況での会話劇で、心理描写や
伏線などもあって巧みに作られている。その他の物語も面白
いが、映画の中心はこの部分と言えそうだ。
脚本は、株式会社電通で「かっぱ寿司宇宙人シリーズ」など
を手掛ける泉尾昌宏、監督はその泉尾と、沖縄でTVCMを数多
く手掛ける福永周平が担当した。

『フクシマからの風/第一章 喪失あるいは蛍』
東京電力福島第1原子力発電所による被災者の姿を追ったド
キュメンタリー。
映画は住民集会での発言の模様から始まる。そこでは、避難
したくても家畜を置いて行けない酪農家の窮状や、避難勧告
に対する自治体の対応の遅れに対する非難、不信感などが色
濃く描き出される。そしてお決まりの土下座。
そこからカメラは昨年春夏の時点での福島原発の周囲に暮ら
す人々の姿を追って行く。そこには野草や薬草を移植し育て
ながら研究している老人や、被災後に妻を亡くしてドブロク
作りが唯一の楽しみという老人。
さらに1970年代から自給自足の村造りをすすめ、毎年夏祭り
をしてきたという壮年男性。そして3年前に夫を亡くし、以
前に暮らしていた被災地の山間の家に戻って来て、蛍の棲む
里を復活したいと考える女性などが登場して、それぞれの今
を証言する。
そして、樹上に生み付けられたモリアオガエルの卵や青々と
した木々の美しさなど、自然が人間に与えてくれた素晴らし
い景色が映像としてもスクリーンに定着されている。しかし
そこには原子力災害の影が忍び寄っている。
取材先のいくつかが、後日の再取材では人影が見られないの
は住民の強制避難によるためなのか、その辺は本作ではまだ

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06月24日(日)
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