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On the Production
by 井口健二
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■フランス映画祭2012、農家の嫁/ちょっとエッチな生活体験/セカンドバージンの女、王様とボク、シャーク・ナイト、ただ君だけ、工事中
“Qu'un seul tienne et les autres suivront”
毎週土曜日は刑務所の面会日。その面会室には様々な人が受
刑者に会いに訪れる。その中から3人の男女の物語が描かれ
る。
その1人目は、女子サッカーのチームに所属する少女。彼女
は練習帰りに出会った若者と親しくなるが、その若者が刑務
所に入ってしまう。しかし未成年の彼女は面会を申請するこ
とができず、やむなく町で出会った男性に助けを求めるが…
2人目は、アルジェリア人の女性。息子がフランスで殺害さ
れ、その原因を探るためにフランスに入国する。しかし刑務
所にいる犯人に被害者の母親が面会する術はない。そこで彼
女が採った行動は…
そして3人目は、最近は何をやっても上手く行かない青年。
彼は偶然出会った男性からある仕事を依頼され刑務所に向か
う。それは彼に一攫千金の金をもたらすものだったが…。
これら3つの物語の交錯のさせ方も見事で、映画を堪能させ
てくれた。
なお脚本と監督は1981年生まれのレア・フェネール。過去に
は4本の短編を発表し、本作が長編デビュー作だが、本作で
ルイ・デリュック賞新人監督賞を受賞している。
(2012年冬公開予定)
『私たちの宣戦布告』“La guerre est déclarée”
主演・監督のヴァレリー・ドンゼッリと共演のジェレミー・
エルカイム。実生活でも以前は夫婦だったという2人の実体
験に基づく作品。
愛し合って結婚した2人の間に誕生した子供。しかしその子
供の成長には何処かおかしいところがあった。そこで医師が
行った精密検査の結果は、ラブロイド腫瘍という難病。そし
てその難病は外科手術も可能だが、その手術の成功率は10%
と説明される。
子供の難病というのは親にとってこれほど辛いものはない。
そんな辛い状況を実際に当事者であった俳優たちが自ら演じ
ている。これはある意味究極の作品と言えるのだ。そしてそ
の状況は確かにそうなのだろうと思わせるものであり、リア
ルだった。(今秋公開予定)
『アーネストとセレスティーヌ』“Ernest et Célestine”
2000年に他界したベルギーの絵本作家ガブリエル・ヴァンサ
ン原作「くまのアーネストおじさん」シリーズからのアニメ
ーション映画化。
くまのアーネストとこねずみのセレスティーヌ。2人の出会
いなどが、詩情とアクションもたっぷりに描かれている。
セレスティーヌは全寮制の歯科学校に暮らすお絵描きの好き
な女の子。寮長は毎夜恐ろしい腹ぺこくまの話をするが、彼
女自身はくまと友達になれると信じている。そんな彼女はあ
る日、義歯にするためのくまの歯を探しにくまの町に出かけ
るが…
一方、アーネストはお腹が空いて堪らない。そこで町に出て
お金や食べ物を恵んで貰おうとするが、なかなかうまく行か
ない。そしてゴミ缶を漁っていたアーネストは、缶に閉じ込
められていたセレスティーヌを発見する。
しかしその出会いは、2人に飛んでもない冒険を招くことに
なってしまう。
原作のシリーズは全20巻+番外編1冊に及ぶものだが、2人
の出会いについてはその最終巻と番外編だけで触れられてい
るようだ。その原作を僕は手にしていないが、その出会いは
セレスティーヌが乳児の時とされているようで、本作とは少
しニュアンスが違う。
従って本作の物語はオリジナルのものなのかも知れないが、
くまのアーネストの優しさとセレスティーヌの可愛らしさは
存分に味わえる作品になっていた。しかも作品には数々の実
験的なシーンも盛り込まれて、これは原作を知らない観客に
も楽しめるものになっている。
監督は、2009年“Panique au village”でオースティン・フ
ァンタスティック・フェストのアニメーション賞など数々の
受賞に輝くステファン・オビエとヴァンサン・パタール、そ
れに2008年“La queue de la souris”でカートゥーン・フ
ォーラム・ヨーロッパのグランプリを受賞したパンジャマン
・ルネールが参加している。
優しさで一杯のアーネストと、ちょっとおしゃまなセレステ
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06月10日(日)
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