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On the Production
by 井口健二
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■相馬看花、モバイルハウス、オレンジと太陽、キリマンジャロ、ブラック・ブレッド、コラボ・モンスターズ、ブラックパワー、赫い髪
それどころか彼は、福島原発の状況が伝わるとさっさと故郷
の熊本に引っ越してしまう。そして現在は‘ゼロセンター’
という団体を立上げて「新国家の樹立」を宣言し自ら初代内
閣総理大臣を名告っているそうだが…
実際の‘ゼロセンター’でも当初は福島被災者を受け入れた
ものの、途中で投げ出したとか、本人の言い分はいろいろあ
るだろうが、全体的に胡散くささが感じられる人物像が描か
れていた。
本田監督は、2003年12月紹介『ニュータウン物語』でも思想
的な描写は避ける感じだったが、本作でもその面は巧みに避
けている。しかし全体的に雰囲気が伝わってくるのは、これ
も手腕なのかとも思わせるものだった。

『オレンジと太陽』“Orange and Sunshine”
1618年に始まり、1970年まで続けられていたというイギリス
とオーストラリアを繋ぐ隠された歴史を描いた実話に基づく
ジム・ローチ監督作品。
映画の始まりは1986年、イギリスノッティンガムでソーシャ
ルワーカーの職にあった主人公の許に1人の女性が現れる。
オーストラリアから来たというその女性は、子供の頃にイギ
リスから移住したが、祖国での自分の身元が一切判らないと
訴える。
実はその前に主人公は、突然オーストラリアから存在すら忘
れていた弟の手紙が届いたという女性の話を聞いており、そ
の2つを結び付けた主人公は調査を開始する。しかしそれは
イギリス−オーストラリア両国政府も関ったおぞましい歴史
を紐解くことになる。
福祉の名の許に行われた児童移民。その歴史は17世紀に始ま
り、最初はアメリカに向け、その後はニュージーランド。カ
ナダ、ローデシア、そしてオーストラリアに向けて、13万人
もの子供が親にも知らされないまま送られていた。
しかもそれは、オーストラリア向けには「オレンジと太陽」
の国という甘言に彩られていたが、その実態は奴隷に等しい
ものであり、特に宗教系の孤児院では過酷な労働を10数年間
続けさせた挙げ句に、その間の生活費などが負債として科せ
られたという。
この事実を知った主人公は、最初は単独でオーストラリアに
暮らす元孤児たちの身元調査に乗り出し、やがてそれは社会
的な支援も得られるようになって行く。しかしその一方で特
に宗教関係者からの妨害や嫌がらせも激しくなって行く。
監督は、2010年12月紹介『エリックを探して』などのイギリ
スの名匠ケン・ローチ監督の息子で、以前はドキュメンタリ
ーを手掛けていた。そして本作も最初はドキュメンタリーで
描こうとしたが、中心となる人物の人柄に触れ、ドラマ化に
踏み切ったとのことだ。
そしてその映画化にはケン・ローチ監督のスタッフなども加
わり、さらには昨年のオスカーに輝く『英国王のスピーチ』
なども手掛けたオーストラリアの映画会社も加わって英豪合
作映画として完成されている。
主演は、昨年12月紹介『戦火の馬』などのエミリー・ワトス
ン。他には共に『LOTR』に出演のオーストラリア人俳優
のデイヴィッド・ウェナム、ヒューゴ・ウィーヴィングらが
脇を固めている。
因に本作に描かれた事実に関しては、本作の撮影中の2009年
11月と2010年2月にオーストラリアとイギリス両国の首相に
よる公式の謝罪が行われたそうだ。

『キリマンジャロの雪』“Les neiges du Kilimandjaro”
ヴィクトル・ユゴーの長編詩「哀れな人々」に着想を得て、
1997年『マルセイユの恋』などのロベール・ゲディギャン監
督が、妻で『マルセイユ…』や2005年5月紹介『クレールの
刺繍』などの女優アリアンヌ・アスカリッドと共に老境の夫
婦の姿を描いた作品。
夫は長年労働組合の委員長として労働者の生活を守るために
働いてきた。しかし会社側から提示されたリストラ案を受け
入れ、その退職者をくじ引きで選ぶ方式で自らも退職者に選
ばれてしまう。
こうして失業者になった夫は孫と遊んだり、庭に作り掛けだ
った東屋を完成させたりしていたが…。そんな夫妻の結婚記
念日を親戚や元の同僚たちが祝ってくれ、その席で「キリマ

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04月01日(日)
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