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On the Production
by 井口健二
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■女ドラゴン、先生を流産…、ベルフラワー、ムッシュ・ラザール、ビースト・ストーカー、㊙…市場、座敷わらし、愛と誠+Hungover
その一方で本作では、深刻な問題提起を緩和しようとする思
いなのか、多少ホラー的な味付けも施され、1976年のスペイ
ン映画『ザ・チャイルド』のような感じにも捉えることがで
きた。これは監督の見識のようにも感じられた。
出演は、教師役をインディペンデント映画で活躍中の宮田亜
紀。生徒役は全員が映画初出演で小林香織、高良弥夢、竹森
菜々瀬らが演じている。
脚本と監督は、短編作品で各地の映画祭で上映を果たしてい
る内藤瑛亮の長編第1作になるようだ。本作は、昨年のカナ
ザワ映画祭、ドイツ・ニッポンコネクション、そして今年の
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭などでも公式上映さ
れている。

『ベルフラワー』“Bellflower”
2011年のサンダンス映画祭に正式出品され、同年のパリ国際
ファンタスティック映画祭の最優秀作品賞を皮切りに、シッ
チェス・カタロニア、マラガなどの国際ファンタスティック
映画祭でも受賞を果たした作品。
舞台は、ロサンゼルス・ユニヴァーサルスタジオの北西に位
置するノース・ハリウッド。そのベルフラワー通り界隈に暮
らすウッドローとエイデンはウィスコンシン州から引っ越し
てきた親友同士。
そんな2人は、『マッド・マックス2』の敵役ヒューマンガ
スに憧れ、終末が来たら火炎放射器を搭載した車で世界を支
配することを夢見ている。そのため威力の強い火炎放射器を
作ろうと日夜実験に余念がない。
しかしある日、バーで酒を飲んでいた2人はコウロギの早食
いコンテストにウッドローが参加、敢えなく破れたことから
ミリーとコートニーという女性たちと親しくなる。そしてミ
リーの誕生日に花を贈ったウッドローは…
製作・脚本・監督・編集・主演のエヴァン・グローデルは、
実際にウィスコンシン州から映画制作を夢見てカリフォルニ
アに移住し、仲間と共に短編映画をネットに公開して評判と
なり、ミュージックヴィデオなどを経て本作で長編デビュー
を飾っている。
その作品は、若者のかなり無軌道な生態を写したものだが、
それは現代アメリカの若者の実態の反映でもあるのだろう。
それが火炎放射器というのはかなり過激だが、それに対する
共感が上記の受賞の理由のようにも思える。
出演者は主に監督の友人たちのようだが、中でコートニー役
のレベッカ・ブランデルは、テレビシリーズ『クリミナル・
マインド』などにゲスト出演の経歴があるようだ。
また撮影には2KのHDカメラを改造した特製の機材が使用
されているようだが、そのせいか画像の一部が蹴られたり、
一部のシーンでピントが甘くなっているのは気になった。た
だしそれは監督が望んだフィルムライクの画像にはなってい
る感じだったが…。
その他にも火炎放射器や、映画の後半に登場する1972年型ビ
ュイック・スカイラークを改造した《ザ・メデューサ》など
も自作のようで、それらに掛ける意気込みはかなり感じられ
たところだ。

『ぼくたちのムッシュ・ラザール』“Monsieur Lazhar”
カナダのジニー賞で作品賞など6部門を独占し、アメリカ・
アカデミー賞では外国語映画部門にノミネートされたカナダ
・ケベック州の作品。
カナダのフランス語圏ケベック州の小学校を舞台に、クラス
の担任が教室で自殺したことに始まるいろいろが出来事が描
かれる。
物語の始まりは先生の自殺。その姿は最初に教室に入ろうと
した生徒によって発見され、学校側は直ちにカウンセラーの
派遣などの手を打つが、発見した生徒には隠された事情があ
るようだ。
一方、教師不足で後任の決められない校長の前に、アルジェ
リアで教師の経験があると称する男性が現れる。そして校長
はその男性を雇うが、男性の授業のやり方は古臭く、また男
性自身にも何か事情があるようだ。
そんな状況の許で、徐々に事の真相が明らかになって行く。
生徒と教師の問題は先に『先生を流産させる会』を紹介した
ところだが、最近何となく同様のテーマの作品が多いような
気もする。と言っても本作の場合は、アルジェリア問題など

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03月25日(日)
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