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On the Production
by 井口健二
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■けの汁、別離、きっとここが帰る場所、KOTOKO、シネマ歌舞伎・高野聖、裏切りのサーカス、ファウスト+Oscar,VES
とも伺わせる作品ではある。しかもそれが本国でも大ヒット
して、アカデミー賞の国代表に選ばれているのは素晴らしい
ものだが、その陰で監督が国内でかなりのバッシングを受け
たことも事実のようだ。
主演は、イラクの名匠・故アリ・ハタミ監督の娘でモントリ
オール世界映画祭での受賞経験などもあるレイラ・ハタミ。
他はファルハディ監督の前作などにも出演している常連俳優
たちが共演。また両親の間で揺れる娘役では、監督の実の娘
のサリナ・ファルハディがデビューを飾っている。

『きっとここが帰る場所』“This Must Be the Place”
2008年ベルリン国際映画祭審査員賞を『イル・ディーヴォ』
で受賞したパオロ・ソレンティーノ監督が、その際の審査員
長だったショーン・ペンを主演に迎えて描いた作品。
主人公はアイルランドで暮らす元パンク・ロッカー。彼はあ
る事情から音楽活動を止め、以後は女性消防士の妻に支えら
れてほぼ隠遁生活を続けている。しかし街を出歩くときのフ
ァッションは、今もロッカー時代のままだ。
そんな彼の周囲には、ロッカー時代からの追っかけの少女や
プロデューサーとしての再起を画策するプロモーターなども
いたが、彼自身が重い腰を上げる切っ掛けにはなりそうもな
い。しかしそんな彼に行動を起こさなければならない事情が
訪れる。
それは危篤状態になった父親の想いにも拠るものだったが、
こうしてアメリカの地に舞い戻った主人公の不思議な旅が開
始される。それは彼自身のアイデンティティーを求める旅で
もあった。
監督は、2008年の受賞式後のパーティでペンに受賞作を激賞
され、一緒に仕事をしたいと言われたのだそうだ。しかし本
当に実現するとは思えず、それでも書き上げたシナリオをペ
ンに送り気長に待つつもりでいたら、何と1日も待たずに返
事が届いたのだそうだ。
その作品は、2008年5月紹介のショーン・ペン監督作品『イ
ントゥ・ザ・ワイルド』にも通じる感じのするちょっとシュ
ールなところもあるロード・ムーヴィで、ペンもこれならや
り易かっただろうと思わせるものだ。
しかも最近の流行り風なところもあるから、これなら出資者
も募りやすいという感じのものでもあった。ただしこの流行
りの部分は僕には最近食傷気味ではあったが、本作では全体
の醸し出すシュールな雰囲気が僕にも心地良く感じられる作
品だった。
共演は、オスカー女優で2011年7月紹介『トランス・フォー
マーズ』などのフランシス・マクドーマンド、同年12月紹介
『ペントハウス』などのジャド・ハーシュ、それに新人のイ
ヴ・フーソン。
また元トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーンが音楽を
担当し、自身の役で出演しているのも話題になりそうだ。

『KOTOKO』
2010年3月紹介『鉄男 THE BULLET MAN』などの塚本晋也監
督の最新作で、沖縄県出身のアーティストのcoccoを主演に
迎え、昨年のベネチア国際映画祭で先鋭的な作品を選出する
オリゾンティ部門に出品されて日本映画では初の部門グラン
プリを受賞した作品。
主人公は都会に暮らすシングルマザー。ところがある日、街
で行き交う人が2重に見えるようになり、その一方が自分を
襲ってくる幻覚に捉らわれるようになる。そして騒ぎを引き
起こした結果は、子供を故郷に住む姉に預けさせられること
になる。
しかしその後は彼女のことを一途に思う男性に巡り会うこと
で、2重に見えていた世界も1つに纏まり、生活態度も落ち
着いて行く。そして故郷の沖縄で暮らす子供に会いに行くこ
とも許されるが…
共演は塚本晋也。監督は過去の作品でも一部のシーンに出演
していることはあったが、今回は本格的な主人公の相手役と
して、かなりの登場シーンでアクションなどもたっぷりと演
じてみせている。
なおクレジットでは、coccoは企画・原案・主演・美術・音
楽となっており、一方の塚本は、企画・製作・監督・脚本・
撮影・編集・出演とされている。この原案と脚本の関係がど
のようなものかは不明だが、発端の人が2重に見えるという

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02月27日(月)
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