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On the Production
by 井口健二
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■はさみ、瞳は静かに、エリート・スクワッド、夢二、ピザボーイ、マシンガン・プリーチャー、アーサー・クリスマス、しあわせのパン
タマンテ。軍事政権時代には秘密警察の基地も置かれていた
という町で、主人公と同じ子供時代を過ごした監督が、自ら
の体験もベースにその恐怖を描いた作品でもあるようだ。
出演は、主人公の少年役には新人ながら見事な恐怖を表現し
てみせたコンラッド・バレンスエラ、そして祖母役に1936年
ブエノスアイレス生まれのノルマ・アレアンドロ。
因に、軍事政権時代には亡命を余儀なくされ、1986年アカデ
ミー賞外国語映画部門を受賞した『オフィシャル・ストーリ
ー』にも主演した女優は、以後軍事政権を題材にした作品へ
の出演を断っていたが、本作には脚本を読んだだけで出演を
即決したそうだ。「これは語られるべき物語だから」それが
出演の理由とされている。
部外者である我々には多少判り難い物語かも知れない。しか
し徐々に襲って来る恐怖が、正にじわじわと締め付けてくる
ような感じの作品だった。

『エリート・スクワッド』“Tropa de Elito”
『エリート・スクワッド/ブラジル特殊部隊BOPE』
    “Tropa de Elite 2 - O Inimigo Agora É Outro”
2008年のベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したブラジル映
画が日本ではDVDで紹介されることになり、その2年後に
製作された続編と共にサンプルを鑑賞した。
物語の舞台はリオ・デ・ジャネイロ。700にも及ぶスラム街
(ファヴェーラ)があるとされるその町を舞台に、その町に
巣くうギャング団とブラジル軍警察内に創設された特殊部隊
BOPEとの壮絶な戦いが描かれる。
その第1作の背景は1997年。その町をローマ法王が訪れるこ
とになり、宿泊先の司祭館の周囲の安全確保が問題となる。
そこは巨大なスラム街に隣接していたのだ。そして、来訪を
3カ月後に控えてスラム街の掃討作戦が開始される。
その任に当るのはBOPE。そして主人公であり物語の語り
手は、BOPEの指揮官を務める警官。彼には臨月間近の妻
がおり、彼はその作戦が終ったら引退するつもりだった。そ
して彼の許には2人の新人隊員が選抜されてくる。
物語は、その新人隊員たちの選抜と訓練、彼らが引き起こす
様々な問題なども織り込みつつ、スラム街に巣くうギャング
団や麻薬ディーラーとの戦いを、壮絶な銃撃戦などと共に真
正面から描いて行く。
そこにはブラジルという国家が抱える問題や、ギャング団と
腐敗した警察との関係。また富裕層の若者たちの問題などが
鮮やかな筆致で描かれている。
因に、この第1作の巻頭にはアメリカの心理学者スタンレイ
・ミルグラムの引用が掲げられている。その本文はポルトガ
ル語表記で字幕も付けられてないので不明だが、1974年の著
書『服従の心理−アイヒマン実験』からの引用は想像できる
ものだ。
脚本は、2002年11月4日付の「東京国際映画祭」で紹介した
『シティ・オブ・ゴッド』などのブラウリオ・マントヴァー
ニ。前作で描き出したファヴェーラに巣くうギャング団の物
語を、今回はその対極である警察側から描くものだ。
そして第2作では、前作から10年後の現代を背景に、ギャン
グ団の掃討されたファヴェーラに生じたさらなる巨悪との対
決を描く。それは第1作のアクションから一転、ポリティカ
ルフィクションのような様相も呈するが、それも興味を牽か
れる物語になっていた。
特にそのメッセージは、もしかしたら脚本家はこの第2作を
描くために第1作を作ったのかとも思えるほどで、多少青臭
いかも知れないその想いが切実に伝わってくる感じの作品に
なっていた。
因に、第1作は既成の原作からのアダプテーションだが、第
2作はマントヴァーニと両作の監督を務めたジョゼ・パジー
リャのオリジナルによるもの。ストーリーからは第3作も期
待できそうなものだが…
なお、出演者では第1作、第2作で共通の人も多いが、その
老けぶりも見事に描かれていた。また中には『シティ・オブ
・ゴッド』の出演者もいたようだ。
DVDは12月2日に発売される。

『夢二』
鈴木清順監督による「浪漫三部作」とも呼ばれる『ツィゴイ

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11月20日(日)
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