ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460110hit]
■第24回東京国際映画祭(2)
る。大連で現地ロケしたと思われる映像の迫力と見事なアク
ションに彩られた作品。すでに日本公開も決定している一級
のエンターテインメント。
『鏡は嘘をつかない』“Laut Bercermin”
海の上に立つ集落に暮らす少女を主人公に、海釣りに出たま
ま帰らない父親を思う少女の心と、集落に調査のため訪れて
少女の家に宿泊することになった青年との交流をファンタス
ティックに描いた作品。題名の一部をなす「鏡」の意味が深
く素敵なもので、その詩情も豊かに感じられた。映画祭では
TOYOTA Earth Grand Prixを授賞した。
『われらの大いなる諦め』“Bizim Büyük Çaresizliğimiz”
アラフォーの男性2人が暮らすアパートに、親友の妹の女子
大生が居候することになって…というシチュエーションコメ
ディ。筆者も一応男性だから、このような状況はどうなんだ
ろうかとは考えてしまうが、映画はそれほどの嫌みもなく素
直に笑える作品になっていた。
『ボリウッド〜究極のラブストーリー』
“Bollywod: The Greatest Love Story Ever Told”
『ザッツ・エンターテインメント』のインド版と言えそうな
作品。各時代の代表と思われる作品から歌と踊りのシーンが
次々に登場する。残念ながら僕が観た記憶のあるのは1本だ
けだったが、華やかな踊りの連続はそれだけで楽しめるし、
最近はヒップホップ調の踊りも踊られていることが解った。
ただ途中に挿入されるニュース映像が、意味は解るけど…。
『孤独な惑星』“Planeta Acheret”
第2次大戦中に狼の群れと一緒に暮らしたという老人を探し
て、シベリヤに向かう撮影隊のフェイクドキュメンタリー。
基になっているのは2009年2月紹介『ミーシャ』で描かれた
ユダヤ少女の話と思われる。ただし本作では調査のためと称
して1人が地元警察署長の娘と結婚式を挙げるなど無茶苦茶
な展開で、何が言いたいのかさっぱり解らなかった。
『TATSUMI』“TATSUMI”
「劇画の父」と言われる日本の漫画家辰巳ヨシヒロの自伝的
な作品から、シンガポールのエリック・クー監督がアニメー
ションで描いた作品。巻頭に「地獄」の映像化が据えられ、
以下に手塚治虫氏との交流や劇画というジャンルを作り上げ
て行く辰巳の姿が丁寧に描かれている。カンヌ「ある視点」
部門にも出品された作品には、辰巳本人も満足のコメントを
寄せているようだ
《日本映画・ある視点》
『春、一番最初に降る雨』
カザフスタンの草原で、シャーマンの老女と暮らす一家を描
いた作品。その老女が亡くなり、両親はその遺体を埋葬地に
運ぶ。その間の出来事と、家に残った兄と幼い妹弟、さらに
バイクに乗った父と娘の旅行者などが交流する。製作者と監
督に日本人の名前はあるが、監督はカザフスタンの人と共同
で、出演者もすべて現地の人とロシア人という作品。
『ももいそらを』
実はこの映画は映画祭期間中ではなく、後日外国特派員協会
で行われた上映会で鑑賞した。しかし映画祭の主体行事とし
ての上映なのでここで紹介する。
世間のいろいろな出来事を少し斜に構えて見ている女子高生
を主人公に、彼女が大金の入った財布を拾ったことから始ま
るちょっとファンタスティックなところもある作品。全編が
モノクロで撮影され、少しトリッキーな要素もあってなかな
か楽しめた。一般公開の可能性もあるので、できたらその時
に改めて紹介したい。
《WRLD CINEMA》
『チキンとプラム』“Poulet aux prunes”
楽器を壊されて絶望し死を決意した音楽家が、最後の8日間
で自らの人生を振り返る。2007年10月紹介『ペルセポリス』
のマルジャン・サラトピが、再び自作のコミックスを映画化
した作品で、今回は実写に挑んでいる。元々自殺テーマは好
きではないが、本作では後半に多少の捻りがあり、それは巧
みな作品だった。
《natural TIFF》
『地球がくれた処方箋』“Tra terra e cielo”
ハーブと共に生きる人たちを取材して、その利用法などを紹
[5]続きを読む
10月31日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る