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On the Production
by 井口健二
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■「フランス映画祭2011」アーサー3、Chantrapas、消えたシモン・ヴェルネール、マムート、匿名レンアイ相談所、短編集+解説
この感覚は普通ではない。そんなところが間怠っこくもある
が面白くもある。そんな感覚が何本か観ている内にこちらも
馴らされたのかな、ある種の心地よさにも感じるようになっ
てきた。
物語は、主人公がグルジアの田舎町に住む少年だった頃から
始まる。少年は友達の男女と共に貨物列車に只乗りして壊れ
た教会に行き聖画を盗み出すなど悪戯を繰り返している。そ
んな少年が映画を撮り始め、その作品は海外から評価される
ようになる。
そして海外から監督として招請されるが、彼の母国からは、
一旦出国した文化人は帰ってこないのが通例だった。それで
も役人の計いで出国は許されるのだが、外国に来ても彼の行
動は常に監視されていた。
そんな状況の中で外国での映画製作は開始されるが、彼の製
作意図とプロダクション側の考えが合っていないことが判り
始める。それでも何度かの衝突の末に映画は完成披露を迎え
るが…
出演者は、監督の他の作品と同様ほぼノンスターのキャステ
ィングだが、今回は中に2007年9月紹介『夜顔』のビュル・
オジェや、1986年大島渚監督の『マックス・モナムール』に
出演のピエール・エテらが脇を固めていたようだ。
なお本作は、6月23日〜26日に開催される「フランス映画祭
2011」で上映された後、来年岩波ホールで一般公開の予定に
なっている。

『消えたシモン・ヴェルネール』
              “Simon Werner a disparu”
1992年の高校を背景にしたミステリアスな作品。なお本作の
日本での一般公開の予定はないようだ。
学園を舞台に、同じクラスの生徒が次々に行方不明になって
行くという異常事態を、それぞれの生徒の視点から描く。そ
れは映画の現時点から数日前を起点に、複数の生徒のその間
の行動などが描かれるもので、その中には行方不明になった
生徒も含まれている。
ということで物語の全体は謎解きにもなっているものだが、
その解かれる謎自体は何と言うかこちらの期待とはちょっと
ずれていて、その辺で多少呆気に取られる感じはした。でも
まあそこに至るまでの若者たちの生態というか、そんなもの
が面白い作品とは言える。
1人の視点が終わるごとに時間が巻き戻される手法自体は、
以前の作品にもあるし目新しくはないが、本作ではそれぞれ
の視点となるキャラクターの心情などが微妙な点も面白くは
あったものだ。
因に、映画祭の紹介記事では、本作は2003年ガス・ヴァン・
サント監督の『エレファント』に比較されていたが、極めて
衝撃的だった実際の事件を題材にしたアメリカ映画に比べる
のは、多少酷というものだろう。
第一に本作の物語は、アメリカの事件が起こる以前の1992年
が背景とされているものだ。それはまだ携帯電話もなくパソ
コンやインターネットも普及していない時代の話。そんな多
分今よりのんびりした時代が背景で、そこには多少のノスタ
ルジーも感じられた。
そんな背景の中での、出演した若い俳優たちの伸び伸びした
演技も楽しみたい作品だ。
出演は、ジェール・ベリシエ、アナ・ジラルド、オドレイ・
バスティアン、イヴァン・タッサン。なおジラルドは名優の
娘だそうだ。また脚本と監督は、短編映画やテレビを手掛け
るファブリス・ゴベールによる長編デビュー作。
出演者も監督も新人が中心で、将来のフランス映画を背負っ
て立つ人材が結集しているようだ。それらを確認するため、
できればプレス資料には監督や俳優たちの紹介がもう少し詳
細に欲しかった。
なお本作では、サウンドトラックを1981年に結成されたアメ
リカのパンクバンド=ソニック・ユースが担当したことでも
話題になっているようだ。

『マムート』“Mammuth”
フランス映画界の名優ジェラール・ドパルデューの主演で、
定年退職した男の年金問題を扱った作品。なお本作の日本で
の一般公開の予定はないようだ。
主人公は16歳の時から地道に働き続け、遂に定年の日を迎え
た男性。同僚たちにはささやかな送別会をしてもらい、ささ

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06月18日(土)
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