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On the Production
by 井口健二
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■ビー・デビル、魔法少女を忘れない、抱きたいカンケイ、生き残るための3つの取引+バンコク遠征記(前編)
画では記憶から消えてしまうという設定が最初は隠されてい
て、途中でそれを知った主人公たちが記憶を留める努力をす
る展開になっている。
従って、主人公たちが知らない設定を観客が知っている必要
はないのだが、本作の場合、その設定が明らかにされない曖
昧さが物語全体に不自然さを蔓延させ、その他にも不自然な
設定が、特に映画の前半では観ていて居心地の悪さを感じて
しまった。
物語の全体は、言ってしまえばアルツハイマーの逆ヴァージ
ョンであって、それ自体は面白い着想だと思えるが、それを
わざわざ隠す必要があったか否か。本作では観客には最初か
ら提示してしまった方がすっきりと話を展開できたのではな
いかとも思えた。
それはその設定が明らかにされた後の主人公たちの頑張る姿
や、その後の結末の付け方などにそれなりの良さを感じたも
ので、もっとその辺にしっかり時間を掛けて描いて欲しかっ
た感じもしたものだ。その点が物足りなくも感じられた。
『抱きたいカンケイ』“No Strings Attached”
1984年『ゴーストバスターズ』などのアイヴァン・ライトマ
ン監督による最新作。最近では息子のジェイスンが監督した
『マイレージ、マイライフ』など製作者としても忙しいライ
トマンが、2006年『Gガール』以来の監督に復帰した。
主人公は、幼い頃から恋愛恐怖症の女医と、別れた元カノが
あろうことか自分のバツ2の父親と結婚することになって、
こちらも恋愛不審に陥ったテレビ局のAD。元々は知り合い
同士の2人が再会し、感情抜きの純粋なセックスフレンドに
なることを決めるが…
今年1月紹介『婚前特急』の主人公も、ある種こんな感覚な
のかな。複数の男を渡り歩く日本映画よりは、1対1の本作
の方が多少は現実的なような感じはするが、でもこんな関係
が普通に成立する世の中になってしまったということなのだ
ろう。
でもまあそれが上手く行かなくなってしまうのも現実的な訳
で、その辺こそが現代の男女関係を見事に描き出した作品と
いうことなのかもしれない。そして本作では、コメディの要
素も加味しながらリアルな物語が描かれている。
脚本は、オフ・ブロードウェイ劇の脚本を手掛けたこともあ
るというエリザベス・メリーウェザー。因に本作の脚本は、
評価は高いが製作されない人気脚本を紹介する「ブラックリ
スト」のベスト10に入っていたそうだ。
主人公の女医役はナタリー・ポートマン。先月紹介した『ブ
ラック・スワン』とは正反対の役柄という感じだが、ポート
マンは本作では製作総指揮も務めており、精神的にも相当に
追い詰められたはずの前作からは思い切り開放された感じか
も知れない。
相手役は、2010年1月紹介『バレンタインデー』などのアシ
ュトン・カッチャー。番組製作会社なども経営する彼には、
テレビ局のADという役柄はかなり填り役のようにも感じら
れた。
他には、2010年10月紹介『ソウ・ザ・ファイナル』などに出
演のケイリー・エルウィズ、1988年『ワンダとダイヤと優し
い奴ら』でオスカー受賞のケヴィン・クラインらが脇を固め
ている。
なおライトマン監督の次回作には、2012年12月の全米公開予
定で“Ghostbusters III”の撮影準備が進んでいるようだ。
『生き残るための3つの取引』“부당거래”
2006年8月紹介『ユア・マイ・サンシャイン』などのファン
・ジョンミン主演、2005年8月紹介『ARAHAN』のリュ・スン
ワン監督、リュ・スンボム共演で、韓国警察及び検察の裏側
を描いた作品。
叩き上げの刑事と検察庁幹部を義父に持つエリート検事。事
件を通じて情報の遣り取りをする以外には接点のなかったは
ずの2人の人生が交錯し、韓国警察と検察の内部を揺るがす
事件に発展して行く。
そこには世間が注目する連続女児殺人事件を巡る「真」犯人
のでっち上げや、不動産取引を巡っての検事の後ろ楯になっ
ている不動産業界の大御所と、刑事が関係する新興の建設業
者との確執など、様々な要素が絡み合って行く。
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02月20日(日)
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