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On the Production
by 井口健二
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■メアリー&マックス、ツーリスト、愛しきソナ、木漏れ日の家で、キッズ・オールライト、ジャッカス3D、ナナとカオル+ニュース
イタリア・ヴェニス警察に指示を出す。
一方、ヴェニス行きの国際特急に乗り込んだ女性は、手紙の
指示に従って車内で男を物色し、1人の男に声を掛ける。そ
して食事を共にする2人だったが…。警察が追う男は精巧な
整形手術を施したとされており、その男の顔も声も全く不明
だった。
果して彼女が接触した男はその容疑者なのか…? 一方、容
疑者の男は、彼が資金を持ち逃げしたロシアマフィアのボス
からも追われていた。こうして、水の都ヴェニスを舞台に旅
行者と警察とマフィア、三つ巴の闘争が始まる。
1999年の『17歳のカルテ』でオスカー助演賞に輝き、2008年
12月紹介『チェンジリング』で主演賞ノミネートなどシリア
スな演技でも評価されるジョリーだが、その一方で2001年の
『トゥーム・レイダー』や2008年の『ウォンテッド』などの
アクションも見逃せない。
そんなジョリーが今回選んだのは、ちょうどその中間という
感じかな。複雑だが判り易い物語に風光明媚な観光地、そし
て優雅な衣裳などが程よくミックスされた作品だ。
因に映画の製作は、最初ジョリーにオファーがあり、ヨーロ
ッパが舞台の作品なら現地人の監督をということで、彼女が
2007年『善き人のためのソナタ』でオスカー外国語映画賞受
賞のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督を
指名。
さらにプロデューサーにグレアム・キングを引き入れて、彼
の盟友のジョニー・デップを共演に招いたという経緯のよう
だ。他にも、ポール・ベタニー、ティモシー・ダルトン、ス
ティーヴン・バーコフ、ルーカス・シーウェルという顔触れ
が脇を固めている。
なお脚色には、監督の他に1995年『ユージュアル・サスペク
ツ』のクリストファー・マッカリーと2002年『ゴスフォード
・パーク』のジュリアン・フェロウズが参加。
さらに、撮影は1996年『イングリッシュ・ペイシェント』の
ジョン・シール、衣裳は2002年『シカゴ』のコリーン・アト
ウッド…と、2006年『ディパーテッド』のキングを含めオス
カー受賞者のスタッフが揃えられている。
なおエンディングのクレジットで、監督や主演俳優らにそれ
ぞれBoat Driverが付けられていたのには、さすがヴェニス
ロケと感心した。

『愛しきソナ』“굿바이 평양”
2006年7月に『ディア・ピョンヤン』という作品を紹介して
いる在日コリア人の女性監督ヤン・ヨンヒによるドキュメン
タリー作品。
両親は韓国済州島の出身だが、第2次大戦前の大阪に渡って
成功を納め、特に父親は戦後の朝鮮半島の南北分裂では北を
支持して朝鮮総聯の幹部となった人物。そんな父親は3人の
息子を1970年代に北朝鮮に送り出していた。
しかし当時幼かった監督は両親と共に日本に残り、東京の朝
鮮大学校を卒業。その後は教師、劇団女優などを経てNHK
などで放送されたドキュメンタリーの制作を開始。さらに、
1997年に渡米して約6年間の滞在後、日本に帰国して2005年
に前作を発表した。
その前作では、父親の立場を配慮しているためか、かなり微
妙な表現になっている部分が在り、その点については監督自
身にも不満が在りそうだということを前作の紹介のときにも
書いていた。その不満が、ある意味解消されているとも言え
そうな作品だ。
因に、韓国サイトにると前作の英語題名は“Dear Pyongyang
2006”、本作は“Goodbye,Pyongyang 2006”とされており、
2作が表裏の関係に在ることを明示しているようだ。そして
本作では、監督の姪に当たるソナという幼い女子を中心に作
品が構成される。
その幼子が、1995年から2005年まで約10年間の取材期間の中
で、最初は全く屈託ないが、最後は金日成を称える詩を暗唱
するまでになって行く。そこには20年間全く変わらないとい
う海外使節団を迎える子供たちの演劇が重ね合わされる。
さらに本作では、ソナを囲む家族の姿も紹介されるが、その
生活ぶりは大阪に住む母親からの仕送りによってかなり裕福
な感じもする。しかし電気・ガス・水道は時間制源での供給

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02月06日(日)
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