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On the Production
by 井口健二
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■僕が結婚を決めたワケ、引き裂かれた女、再会の食卓+製作ニュース
に心を引かれている彼女の態度はつれなかった。それで余計
に恋慕の情を高めたプレイボーイは彼女に猛然とアタックを
開始するが…
こうして物語が開幕し、様々な経緯の後、やがて起きる事件
の裁判で、女性は被告の情状酌量ための証人として、被害者
の名誉に関わる証言をしなければならなくなる。それが本作
の題名の所以にもなっているものだ。
このヒロイン役に2004年2月紹介『スイミング・プール』な
どのリュディヴィーヌ・サニエ、作家役には2009年4月など
で紹介『トランスポーター』シリーズのフランソワ・ベルレ
アンがガラリと違う演技を見せてくれる。またプレーボーイ
役には、2007年2月紹介、シャブロル監督『石の微笑』にも
主演していたブノア・マジメルが扮している。
ヌーヴェルヴァーグの後、シャブロルは商業監督としても成
功するが、その当時はフランスのヒッチコックとも呼ばれて
いた。そんなシャブロル監督作品の中でも特にミステリーの
風合の強い本作は、監督のベスト20にも選出される評価とな
っているそうだ。
しかも余分の描写を廃し、観客を目撃者の立場で作品に参加
させる描き方は、ヒッチコック作品の一面に通じるもので、
ブロンド髪のヒロインやプレイボーイの若者など、ヒッチコ
ックへのオマージュとも感じられる作品だった。

『再会の食卓』“團圓”
2008年1月紹介『トゥヤーの結婚』でベルリン国際映画祭金
熊賞に輝いたワン・チェンアン監督が、1949年の中華人民共
和国成立により中台に分断された家族の再会を描き、2010年
の同映画祭で銀熊賞(脚本賞)を受賞した作品。
中華人民共和国の成立に伴って台湾に脱出した国民党軍の兵
士たち。当初は直ぐにも反攻が始まると考えていた彼らは、
本土に家族を置き去りにしていた。そして国交が断絶したま
まの40年が過ぎ、音信不通だった兵士が家族の許に帰ってく
る。その兵士だった夫は台湾で再婚し、子供の成長を一緒に
見守った再婚の妻はもう亡くなっていた。
一方、当時身重だった妻は人民軍兵士に救われたが、元国民
党軍兵士の家族を迎えた生活には言い知れぬ苦難があったよ
うだ。そして連れ添った人民軍兵士との間にも子供が誕生し
ている。その元人民軍兵士の男性は健在で、台湾からやって
きた元国民党軍兵士を精一杯の歓待で迎えるが…。元国民党
軍兵士の来訪の目的は明らかだった。
国家の政変に揺れ、世界的な戦争に明け暮れた20世紀は、世
界の各地で多くの国民に悲劇をもたらした。そんな悲劇の一
つが描かれている。
僕自身の父が、第2次大戦後の数年間をシベリアに抑留され
ていた人で、その出征時に母のお腹にいた第一子(僕の兄)
とは帰国時に初対面だった。その関係には、もちろん年齢的
な違いはあるが、この映画の長男と男性との間のようなもの
があったのかも知れない。そんなことも考えながらこの映画
を鑑賞していた。
因に長子の誕生で父の生家に身を寄せていた母には、音信不
通の父を諦めて再婚する話もあったと聞いている。そうなっ
ていたら僕はこの映画の長女のような立場だったのかな、そ
れもまた微妙なものだ。
いずれにしても戦争のもたらす悲劇というのは、単に戦場で
の生死に限られるのではなく、この作品に描かれたような悲
劇は様々な形で世界中で存在しているのだろう。そんな様々
な悲劇を描いて行くことも映画の使命のように感じられた。
出演は、2009年『2012』にも出ていた中国出身の国際派
女優リサ・ルー、青島生まれ台湾育ちの元人気歌手で中台の
交流にも尽力しているというリン・フォン、それに上海の人
気俳優というシュー・ツァイゲン。さらに若手女優のモニカ
・モーが共演している。
なお映画には、変りゆく上海の景観も描かれているが、そん
なことを気楽に楽しめるのは幸せなことだ。
        *         *
 今年最初の製作ニュースは、前回昨年度のベスト10に選ん
だ『第9地区』のニール・ブロムカンプ監督の次回作として
“Elysium”という題名が発表され、その作品に、前作にも

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01月09日(日)
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