ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460157hit]

■心中天使、洋菓子店コアンドル、英国王のスピーチ、コリン LOVE OF THE DEAD+ベスト10
こんなお話に、主人公の恋人との再会や、伝説のパティシエ
と呼ばれていた評論家の秘められた過去とそこからの再生、
さらに口うるさい常連客のエピソードなどが絡んで、人を幸
せにするケーキを巡る物語が展開される。
実は先に家人に試写を観てもらったが、女性の目から観ると
江口扮する評論家がパティシエ姿で喫煙していたり、厨房で
の衛生管理などが気になったようだ。その辺は僕も気にはな
ったが、全体としてはそれなりに洋菓子の製作手順なども紹
介されて、最近のスウィーツブームにはうまく適合しそうと
言える作品だった。
ただ僕としては最後のシーンで、評論家の車に同乗していた
蒼井扮するパティシエーヌが奥さんに観えたらどうなるか、
少しヒヤヒヤしてしまったが…。まあそんなことは枝葉末節
のものだ。
共演は、江口のりこ、戸田恵子。他に、加賀まりこ、鈴木瑞
穂、佐々木すみ江、嶋田久作らが脇固めている。
脚本(共同)と監督は、10月紹介『白夜行』も手掛けていた
深川栄洋。前作の厳しい内容のドラマに比べると本作は落ち
着いて観ていられたが、この他にも2008年7月紹介『真木栗
の穴』や昨年1月紹介『60歳のラブレター』なども手掛け
る監督は、多作の上にかなり守備範囲の広い人のようだ。

『英国王のスピーチ』“The King's Speech”
1936年12月、兄の英国王エドワード8世が離婚歴のあるシン
プソン夫人との結婚のために退位したことから、急遽その跡
を継ぐことになったジョージ6世を巡る物語。
先代の英国王ジョージ5世の次男として誕生したジョージ王
子(ヨーク公)は、幼い頃に左利きを右利きに直されたり、
X脚の矯正などによる精神的重圧から吃音症となり、人前で
話すことや人前に出ることも嫌がる内向的な性格だった。
そんなヨーク公には、後のエリザベス2世女王となるエリザ
ベス王女やマーガレット王女を授かった妻がいた。その妻の
勧めでヨーク公は、オーストラリア人で民間人の言語聴覚士
ローグの指導を受け、吃音症は徐々に克服されて行く。
ところがそのヨーク公に、上記の経緯から英国王への即位が
求められる。しかも当時の世界情勢は、ドイツにヒトラーが
現れるなど戦雲が立ち込めていた。そしてその戦争を始める
のは議会だが、その国民への説明は国王が行うことが慣例と
なっていた。
すなわち即位したジョージ6世には、国民に向かって演説を
行う義務があったのだ。そんな英国王にやがて訪れるドイツ
との開戦の日。果たして吃音症の王は国民に向けラジオ放送
されるその演説を、首尾良く行うことが出来るのか…
世に言う「王冠を賭けた恋」として美談のように伝えられる
エドワード8世の退位だが、その裏側ではこのようなドラマ
ティックな出来事が進行していた。それは吃音症という障害
(しかも王家の)を扱うということで多少タブーだったのか
も知れない。
しかしここに語られる物語には、国民のために自らの障害を
克服し、その王としての役目を全うしたジョージ6世の素晴
らしい人物像が描かれているものだ。因にジョージ6世は、
戦時中も戦後もロンドンに留まり、国民と苦楽を共にしたこ
とでも知られているそうだ。
そんな英国王の、国民も詳しくは知らなかった秘話が描かれ
ている。
出演は、ジョージ6世にコリン・ファース、その妻にヘレナ
・ボナム=カーター、ローグにジェフリー・ラッシュ。他に
ガイ・ピアース、ティモシー・スポール、ジェニファー・イ
ーリー、デレク・ジャコビ、マイクル・ガンボンらが脇を固
めている。
オーストラリア人のラッシュが初の製作総指揮も手掛け、母
親がオーストラリア人というトム・フーパーが監督。脚本は
1988年のフランシス・フォード・コッポラ監督『タッカー』
などのデイヴィッド・サイドラーが執筆した。

『コリン LOVE OF THE DEAD』“Colin”
製作費は45ポンド(主にロケ先で足りなくなったテープ代)
のみ。他は、フェイスブックなどの告知で集まった人たちの
ボランティアという基本無予算で製作されたゾンビ映画。

[5]続きを読む

01月02日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る