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On the Production
by 井口健二
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■ナンネル、ネスト、ミツバチの羽音と地球の回転、ホームカミング、多田便利軒、サビ男サビ女、毎日かあさん、かぞくはじめました
レイダー』とその続編にも出ていたノア・タイラー、2000年
『U−571』などのエリック・パタディーノらが脇を固め
ている。
また、2004年3月紹介『コールド・マウンテン』などの脇役
のジェームズ・ギャンモンが重要な役柄で出演しているが、
本作が遺作になったそうだ。
宣伝からスーパーナチュラルと銘打たれている作品で、アカ
デミー監督賞も受賞しているコスナーには役不足かとも感じ
させるが、『ウォーターワールド』や『ポストマン』にも主
演したコスナーは、本当にこのような作品が好きなのだと思
わせる。
ただまあ、作品のテーマには先住民というようなニュアンス
も含まれるから、『ダンス・ウィズ・ウルブス』のコスナー
にはその辺での興味は引かれたのかも知れない。とは言って
も、本作がサスペンスホラーであることに変わりはないのだ
が。
ペルデホの演出は、特に目新しいところはあまり感じなかっ
たが、父親と子供たちの関係を丁寧に描いてそれなりに自然
な感じの作品に仕上げられている。その自然さの中に超常現
象が忍び寄ってくる感覚で、それはリアルに感じられた。

『ミツバチの羽音と地球の回転』
2003年『ヒバクシャ−世界の終わりに』、2006年『六ヶ所村
ラプソディー』という作品を発表している鎌仲ひとみ監督に
よる原発=核問題を扱ったドキュメンタリーの新作。
山口県熊毛郡上関町祝島。瀬戸内海でも有数の漁場とされる
周防灘と伊予灘の境界に位置し、万葉集にも登場する歴史の
ある漁業と有機農業を主産業とする地域。しかしその対岸の
田浦に上関原発の建設が発表された。
それに対して島民たちは、温排水による漁場への影響と風評
被害による農産物への影響を心配して原発建設への反対運動
を展開するが…。建設を推進する町議会への傍聴も拒否され
たまま、建設計画は着実に進行して行く。
チェルノブイリやスリーマイル島の災害以降、原発について
は数多くの問題点が指摘され、世界の多くの国々で脱原発の
動きや、原発拒否とは行かないまでもその見直しが進められ
ている中で、日本だけは未だに原発推進の一本槍で政策が進
められている。
それはアメリカ主導の原発が、その技術移転などで米GE社
に多大な利益をもたらし、その見返りが議員らに還流される
以外の理由は全く考えられないのだが、日本の政治家や役人
は甘い汁を吸うだけで、それが国家にもたらす不利益などは
一顧だにしないのが現実だ。
さらにそれは、本作でも指摘されている電力事業の自由化を
妨げ、諸外国ではすでに実用化されているグリーン電力の開
発を妨げる効果も生み出している。それによって日本では原
発以外の電力の開発は不可能にされ、それが原発推進の旗印
にもなっている。
そんな日本のエネルギー政策の矛盾を見事に描き切った作品
と言える。そこには祝島の漁業に対する影響の問題から、グ
リーン電力を実践する北欧での取り組みなども丁寧に取材さ
れ、わざと耳を塞がない限り誰にでも理解できるように描か
れたものだ。
なお、本作は上記の2作に続く3作目という位置付けになっ
ているが、実は前作を観ていない僕にも何の支障もなく理解
することができたもので、その意味では本作だけでも出来る
だけ多くの人に観てもらいたいと思うところだ。
それにしても役人の横暴は今も昔も全く変っておらず、民衆
の声を届かせるのはなまじの努力ではできないことも、本作
を観ていてつくづく感じさせられた。因に題名は、「小さな
ミツバチの羽音でも地球の回転に影響を与えている」という
想いで付けられているそうだ。

『ホームカミング』
テレビのヴァラエティ番組などでお馴染み高田純次の映画初
主演によるサバーバン・コメディ。
主人公は大手商社を部長で退職した男性。彼は郊外の住宅地
に2世帯住宅を建てて住んでいるが、数10年前に開発された
「ニュータウン」も、今では子供の独立した親たち=高齢者
ばかりの黄昏の町だ。
そして主人公の息子も、都心にマンションを持つ女性と婚約

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12月19日(日)
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