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On the Production
by 井口健二
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■デュー・デート、Gソシアリスム、デッド・クリフ、名前のない少年…、ヒアアフター、完全なる報復、ジーザスC、ビン・ラディンを探せ
の間にゴダールを指すJLGを入れることが多いそうで、邦題
もそれに倣っているものだ。
それにしても、真ん中の物語はそれなりに政治的な意味も感
じられるが、両側の作品は何なのかな。金貨紛失の経緯から
言うとコミュニスム批判のようにも取れるが、そんな解釈を
してしまってもいいものだろうか。
いずれにしても僕には物語が良く把握できなかったし、全体
としてそれがソシアリスムとどういう関係があるのかも判ら
なかった。ただ映画では、画面オフから多数の音声が重ねら
れていて、その台詞の内容が重要だったのかも知れないが、
それらの全部は追い切れなかった。
なお本作は、今年5月のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門
に招待上映されて、これがゴダール監督の最後の作品になる
かも知れないとも言われたそうだが、その後のインタヴュー
では“Adieu au langage”(言葉よ、さようなら)という作
品を自ら計画中とのことだ。
また、本作は東京地区では12月18日から日比谷のシャンテ・
シネにてロードショウ公開されるが、それに先立つ11月27日
から12月17日まで、同館では「ゴダール映画祭」と称して、
1959年『勝手にしやがれ』、1965年『気違いピエロ』を含む
長編8本と短編2本のゴダール作品が連続上映される。
『デッド・クリフ』“Vertige”
フランス・ゴーモン社の製作によるクロアチアの山岳地帯を
舞台にしたサスペンス作品。休暇を利用してトレッキングに
やってきた5人の男女が、立入禁止の警告を無視して断崖を
登り始めたことから恐怖に巻き込まれて行く。
基本的に、グループの中に同行カップルの女性の元カレがい
るなど見え見えの設定が満載の作品で、観始めはそのいい加
減さにかなりげんなりしていた。しかし、フランスアルプス
やピレネーで撮影されたという山岳地帯の風景の美しさがそ
んな気持ちを洗い流してくれた。
しかもその美しい風景の中で繰り広げられるアクションを、
ほとんどVFX無しの出演者本人による実写で描いて行くか
ら、そのサスペンスもかなりのもの。フリークライミングや
ロープ1本の宙吊りなど、出演者の頑張りも相当なものだ。
さらに映画の中に登場する渓谷に架かるかなり長大な吊橋を
落下させるシーンなどには、こんなことを映画の撮影のため
だけに準備してやったのかな。そうでなければできるはずも
ないが…という気分にもさせられた。
ただまあその実写に比べると、人間が関わるサスペンスの方
はちょっと手緩い感じで、特に物語の設定の通りだとあの武
器の数々はどこで手に入れたのかとか、最初に主人公たちが
乗ってきた車は誰が取りに行くのかなど、気になる点も多い
作品だった。
出演は、2005年の主演作でセザール賞若手俳優賞にノミネー
トされたというファニー・ヴァレット、2007年の同賞にノミ
ネートされたジュリアン・リベロー、演技の傍ら脚本も執筆
するというラファエル・レントレット。
さらに2009年6月紹介『96時間』や、今年4月紹介『アデ
ル』に出演していたというニコラス・ジロー、それに本作が
デビュー作のモード・ワイラー。その中でリベローだけが撮
影前に登山歴10年だったそうだ。
脚本は、2009年3月に「フランス映画祭」の関連で紹介した
『ミュータント』のルイ=ポール・ドゥサンジェと、映画製
作スタッフのジョアンヌ・バーナード。監督は、フランスの
テレビ局で人形劇による風刺番組などを手掛けて本作が長編
デビュー作のアベル・フェリー。
この監督が登山の愛好家だそうで、映画は脚本がその琴線に
触れて作られたもののようだ。
『名前のない少年、脚のない少女』
“Os Famosos e os Duendes da Morte”
昨年のロカルノ国際映画祭コンペティション部門に出品と、
今年のベルリン国際映画祭でも公式上映されたブラジルの新
星エズミール・フィーリョ監督による作品。
ブラジル南部のドイツ移民が多く住む町を舞台に、閉塞した
状況の中でインターネットだけが生き甲斐の少年と、恋人と
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11月21日(日)
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