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On the Production
by 井口健二
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■世界のどこにでもある場所、君を想って海をゆく、MAD探偵、食客2、ギャングスタ、戦火の中へ、HPと死の秘宝、ジャライノール
カレーの海岸には、最盛期1000人を超える難民がイギリスを
目指し屯していたそうだ。その数はフランス警察の厳重な取
り締まりによって減少したが、その取り締まりの厳しさは、
難民に携帯の充電を許しただけで逮捕された市民もいたとい
うほどのもの。
そのような非人道的な取り締まりには欧州評議会からも厳重
抗議が行われたとされるが、それでもその取り締まりは継続
されているとのことだ。本作は、監督がそんな状況に憂慮し
て描いた作品のようだ。
いやはや、ロマンティックな題名からは全く想像も出来ない
厳しい内容の話で、観終ってこれほど衝撃を受けるとは思っ
てもみなかった。
脚本と監督は、1993年『パリ空港の人々』などのフィリップ
・リオレ。出演は、本作でセザール賞新人賞にもノミネート
されたフィラ・エヴェルディと、コーチ役には2009年12月紹
介『すべて彼女のために』などのヴァンサン・ランドンが扮
している。
なおフランスでの公開の後、政府からは本作に対して不快感
が表明され、監督からそれに対して公開質問状を出すという
事態にもなったそうだ。それほど正確に状況が描かれている
ということなのかもしれない。

『MAD探偵〜7人の容疑者』“神探”
一昨年の東京国際映画祭で上映された作品が来春日本公開さ
れることになった。一昨年の映画祭に関しては個人的な事情
もあって、全体的な報告できなかったが、実は本作に関して
紹介文の執筆が行き詰まったことも一因にはあったものだ。
そこで今回はじっくり見直すことにしたのだが、やはり映画
の後半で物語のテーマが違うものになっているように感じら
れ、その点に関して監督の意図が理解できなかった。
物語の中心にいるのは、天才的なプロファイリングを繰り広
げていた香港西九龍警察署の刑事。しかし、天才と何とかは
紙一重の彼には奇っ矯な行動が目立ち始め、ついにはその行
動から退職を余儀なくされる。
一方、窃盗犯を追っていた2人の刑事の1人が行方不明にな
り、やがてその刑事が所持していたはずの拳銃が重大犯罪に
使用される。しかしその事件の捜査は行き詰まり、以前西九
龍署で問題刑事の下に2日間だけいた若い刑事が彼に援助を
求めてくる。
こうして現場に赴いた問題刑事は、窃盗犯を追っていたもう
1人の刑事の内に7人の人格が存在していると言い出し、彼
らが犯行を扇動しているとして、その刑事の尾行を始めるの
だが…。問題刑事には他にもいろいろ謎の行動があった。
画面では、この7人の人格が人物を取り巻くように存在して
いる状況が描かれ、他にも人格の入れ替わりなどが映像で表
現されている。しかしこの人格が一体何なのか、一部にはそ
れが霊魂のように見えるところも話を混乱させるものだ。
ただまあここまでのお話は、いろいろ想像力も膨らますこと
ができてそれなりに面白い。ところが映画の後半は、これが
全く別のアクション映画のようになってしまって、上記の物
語の結論が出されてもいない。
ただしこのアクションもそれなりにトリッキーで、それはそ
れで面白いのだが…。映画の前半で出されたテーマがここで
はほとんど消えてしまう。その辺で監督たちが本当は何を言
いたかったのか、理解ができなくなってしまうのだ。
監督は、今年3月紹介『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』な
どのジョニー・トーと、同作の脚本も務めた右腕とも言える
ワイ・カーファイが共同で担当している。
また脚本はカーファイと、彼らとは2004年9月紹介『ターン
レフト・ターンライト』でも組んでいるアウ・キンイーが担
当。因に本作は、キンイーが1998年のコンテストに応募した
作品だそうだ。
物語の全体は正にミステリアスで、その雰囲気を楽しめれば
良いというところかも知れない、それに映像表現などは見事
なものだったのだが…。僕にはもう少し物語を明確にして欲
しかったという感じが残ったものだ。

『食客2』“식객2”
大人気の漫画シリーズを原作にして2007年の映画化やTVシ

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11月14日(日)
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