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On the Production
by 井口健二
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■第23回東京国際映画祭<コンペティション部門>
に短編や3Dアニメーションの実績もあるとのこと、本作も
落ち着いた演出ぶりに感じた。
なお脚本は、主人公の狩人を演じたラスール・ユーナンが書
いたもので、演出も二人三脚だった可能性はありそうだ。

『ブッダ・マウンテン』“觀音山”(中国映画)
成都の大地震を背景にした2009年が舞台の作品。
成都で奔放な暮らしをしている男2人女1人の若者たちのグ
ループと、元は京劇のスターだったらしい年上の女性の4人
を中心に今の中国の状況が描かれる。
女性はすでに舞台は引退しているが、リハーサルに立ち寄っ
てはいろいろ注文をつけて若い俳優からは煙たがられている
ようだ。そんな女性がアパートの部屋の一部を貸間にし、そ
こに男女3人が引っ越してくるが、口煩さは変わらない。
その3人組は、奔放ではあってもそれなりに真面目な暮らし
振りをしていたのだが、女が引き起こしたあるトラブルから
大金が必要になる。一方、彼らに部屋を貸した女性にも何か
特別な事情がありそうだった。
そんな4人が徐々に心を通わせて行き、やがて一つのことに
協力するようにまでなるのだが…。そんな若者たちの成長し
て行く姿が、未だに復旧の手が届き切っていない成都と、そ
の周辺の山々の大自然の風景などと共に描かれる。
出演は、若手人気スターのチェン・ボーリン、ファン・ビン
ビンと、2007年8月紹介『呉清源』や1998年『レッド・ヴァ
イオリン』などのベテラン女優シルヴィア・チャン。特に、
女優2人の華やかさが魅力的だった。
監督のリー・ユーは1974年生まれ、大学卒業後に中国中央電
視台に入社、制作したドキュメンタリーでは国内外で多数受
賞しているとのことだ。また、長編劇映画の監督もすでに4
本目だそうで、本作も多少青臭いところはあるが、全体は落
ち着いていた感じだ。
なお上映後に行われたQ&Aの情報によると、結末について
シナリオではもっと明確だったがチャンの反対で修正された
とのこと。ただ監督も譲らず、現行の曖昧な表現になってい
るのだそうだ。

『鋼のピアノ』“钢的琴”(中国映画)
妻には金持ちの男の許に逃げられた男性が、ピアノの好きな
娘を自分の許に置きたいという一念から、廃業した製鋼所の
元従業員らの協力を得て、ゼロからピアノ製作に取り組んで
行く姿を描く。
主人公は元国有工場の職工だったらしいが、工場は閉鎖され
彼自身は葬列などで演奏する楽団のアコーデオン弾きで暮ら
している。しかし生活は厳しく、ピアノの好きな娘に楽器を
買ってやることなど夢のまた夢だ。
そんな時、別の男の許に走った妻が突然現れ、離婚と娘の養
育権を要求する。そして娘は、ピアノが弾けるならどちらに
行ってもいいようだ。これに対して主人公は学校からピアノ
を盗み出そうとしたり、必死の金策を試みるがいずれも失敗
してしまう。
さらに考えあぐねた主人公は、図書館で見つけたロシア語の
ピアノ製作の教本を基にゼロから楽器を作ろうと思い付き、
ピアノを盗もうとしたときの仲間などに声を掛ける。やがて
集まった中間たちは、それぞれの特技を活かしてピアノ製作
を始めるのだが…
元々の中国語でピアノは鋼琴、さらにそれを鋼で作るという
のは、多少駄じゃれもあるのかな。ただし、鋼というと日本
語では焼き入れされた鋼鉄の意味だが、中国では鉄製品の全
般を指すそうで、その辺のニュアンスがちょっと違ったよう
だ。
なお、上映後に行われたQ&Aの情報によると、ピアノ製作
は映画の進行の通り実際に行われたとのこと。その製作には
専門家の指導も受けたが、残念ながら完成品の音色はあまり
良くなかったそうで、演奏シーンの音色には細工がされてい
るとのことだった。

 以上でコンペティション部門に出品された全15作品の紹介
を終了。その結果は、
東京サクラグランプリ『僕の心の中の文法』
審査員特別賞『一枚のハガキ』
最優秀監督賞ジル・パケ=ブレネール(サラの鍵)
最優秀女優賞ファン・ビンビン(ブッダ・マウンテン)

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11月01日(月)
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